和田竜が豊臣秀吉の小田原北条氏攻めにまつわる支城攻略の話を2003年に映画用脚本(城戸賞受賞)にした。それをノベライズしたものが2008年直木賞にノミネートされ、2009年本屋大賞二位に輝く。

これは本来脚本として書かれたものだから、小説で読むより映画で見るべきだろう。ただ映画化するためにはどうしても特撮シーンが必要なため、二の足が踏まれた。

でも本がこれほどまで人気になったのでは仕方がない。東宝とアスミック・エースが制作面でタッグを組み、プログラムピクチャーを作らせたら右に出る人無しの犬童監督も今回ばかりは一人では何ともできず、特撮界から樋口真嗣を共同監督に招いて、ついに2012年に完成させた。

北条方に属する武州攻めを一任されたのは石田三成である。豊臣方の武将長束正家は忍城城主成田長親に対して屈辱的な降伏条件を突きつける。成田長親は領民からでくのぼうを略して「のぼう様」と愛されるひょうきん者。石田三成はここぞとばかり黒田官兵衛に変わらぬ智将ぶりを秀吉に見せたくて、忍城に対して備前高松城を真似た大規模な水攻めを行った。ところが長親が「のぼう様」とは人を欺く仮の姿であり、人心掌握に長けた智将だった。城内を一つにまとめ、光成に徹底抗戦を試みる。

なかなか面白い映画だった。主役の野村萬斎は腕っ節は弱いが諸葛孔明のような知恵だけで武将を意のままに動かす。彼が本業の狂言で培った力も各所で活かされていた。何より彼の「腰」だ。どんな姿勢でも腰が入った鍛えられたものだ。あれが百戦錬磨の武将を相手にしても迫力で負けない秘訣と見た。

 

 

監督:犬童一心、樋口真嗣

原作・脚本 和田竜

出演者:

野村萬斎
榮倉奈々
成宮寛貴
山口智充
上地雄輔
山田孝之
平岳大
市村正親
佐藤浩市

 

のぼうの城 2012 アスミック・エース

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