マドレーヌ・セントジョーンズがデパート女性店員の群像を描いた小説を、ブルース・ベレスフォードが脚本化して自ら監督したハート・ウォーミング映画
主演はアングリー・ライス、レイチェル・テイラー、ジュリア・オーモンド、ライアン・コア
共演はシェーン・ヤコブソン

あらすじ

リサは、1959年のクリスマス・シーズンを前にシドニーのグッズ百貨店にアルバイト店員として短期雇用される。初め失敗続きだったリサは、次第に仕事に慣れてきて機転を利かせるようになる。
彼女は、同僚で30歳の独身美女フェイ、子供が欲しい既婚者パティー、そして百貨店専属デザイナーでスロベニア移民としてリサに欧州の友人を紹介してくれる親切なマグダと友人になる。
パティは、ピンクの挑発的なネグリジェを社員割引で買って、夫の気を引こうとする。効果は覿面だったが夫は彼女を満足させられなかったと思い込み、年末に失踪する。
マグダは、大晦日の自宅パーティーにリサとフェイを呼ぶ。そしてリサをハンガリー移民であるルディと引き合わせる。リサもハンガリー移民の子供であるマイケルと出会う。二人とも、卒業試験(オーストラリアは12月卒業時に統一試験を行い、点数に応じて進学する大学が決まる)を受けたという共通点があり、気が合う。リサは、奨学金をもらって名門シドニー大学に入学したいと思っていた。
リサが欲しいワンピースが夏のセール(日本で言う正月セール)で半額の75ギニーに値下げされた。もし売れ残ったら50ギニーまで値下げされることになっている。リサは、誰かに買われていないかと、毎日見に来る・・・。

 

雑感

全て丸く収まるハート・ウォーミングなオーストラリア映画。たまにはこんなベタな作品を見ても良いのではないか。
一人の向学心旺盛な女の子が、デパートに短期で雇われることから色々な店員に良い影響を与えるお話だ。

ただし、フェイは理想の男性と出会い、パティは夫と復縁し、リサは希望の大学に合格するという幸運が三つも重なるなんて、いくら何でも出来過ぎだ。
最後にリサが狙っていたワンピースが値下げ前に誰かに買われてしまう。誰に買われたか?そのオチが気に入らなかった。リサの父親が買っていて、リサが家に帰るとサプライズになると考えていたのだが・・・。

この映画の持つ、もう一つのメッセージは、移民問題だと思う。この映画でも東欧から亡命した有産階級の人々が重要な鍵を握っている。彼らが地元のオーストラリア人と交わり良い意味で感化していく。

でも白豪主義で有名な国だから、アジア系移民の人種差別問題は根深い。
とくに失業率アップによる移民排斥運動の激化が何時起きるかわからず心配だ。
そう言う不安を、東欧移民に置き換えてファンタジー的に描いたんじゃないか。

 

いつもとんでもない美人を発見するのがオーストラリア映画だが、この映画に美人は特に出てこない。主人公の三人は魅力的だが、すごい美人ではない。

その代わり、すっかり老け役で良いオバサンになったジュリア・オーモンドが出ていた。彼女は、26年前「トゥルーナイト」でショーン・コネリーの妻でありながらリチャード・ギアに乗り換える役を演じていたのだが、もうヒロイン役は無理だろう。

スタッフ

監督 ブルース・ベレスフォード
製作 スー・ミリケン、アランナー・ジッツァーマン
脚色 ブルース・ベレスフォード、スー・ミリケン
原作 マドレーヌ・セント・ジョーンズ “Women in Black”より
音楽 クリストファー・ゴードン
撮影 ピーター・ジェームズ 

キャスト

ジュリア・オーモンド  マグダ(ファッション・デザイナー、スロベニア人)
アングリー・ライス  リサ(レズリー)・マイルズ
レイチェル・テイラー  フェイ (美人の店員)
ライアン・コア   ルディ(亡命ハンガリー人) 
スージー・ポーター   母マイルス夫人
シェーン・ヤコブソン  父マイルズ氏  
ノニ・ハズルハースト  カートライト夫人(フロア責任者)
ニコラス・ハモンド  ライダー氏(マグダの夫、ボスニア人)
アリソン・マクギア  パッティー (店員、人妻)
ヴィンセント・ペレス   ステファン(パッティーの夫)

 

ネタばれ

パティの夫は帰ってきた。出て行った理由を聞いてパティは呆れるが、安心して子作りに励み、やがて妊娠する。フロア責任者のカートライト夫人は、その事実を見抜く。
リサの父はしがない新聞社の植字工だったが、ある日リサの合格を知らされ、みんなから祝福される。ほめられている内に、初めは女が大学に行くなんてと思っていたが、考え直す。
フェイトの距離を縮めていたルディは、新居に連れて行き、プロポーズする。
夏のバーゲンセールが終わったので、リサがワンピースを見に行くと、もはやなくなっていた。がっかりするリサに商売に感情は不要と言いながら、奥からケースに入ったワンピースを持ってくる。これをリサに社員割引の35ギニーで譲ってあげる。
リサはそれを着て、マグダ宅で大学入学を祝うパーティーに呼ばれる。マグダは高級服を売る、自分の店を持ちたいと思っていたが、良い店を借りることが出来たそうだ。
マグダは、リサに将来何になりたいかと尋ねると、リサは女優にも、詩人にも、作家にもなりたいけど、多分その全部をやってみたいと言う。招待客は、リサに無限の未来を感じるのだった。

 

 

 

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