1967年に世界公開された。
英国人のH.C.マクニールが1937年に書き、その後ジェラール・フェアリーが1950年代まで原作を引き継いだ英国ハードボイルド小説「探偵ブルドッグ・ドラモンド」シリーズを基に、ジミー・サングスターが作った原案(ヘンリー・レイモンドの小説とは無関係だそうだ)をデイヴィッド・オスボーン、リズ・チャールズ・ウィリアムスが共同脚色し、ラルフ・トーマスが監督した007風英国アクション映画。原題の意味は「男性よりも危険」。

主題歌は当時英国で「ダンス天国」、日本で「孤独の太陽」が大人気だった米国バンドのウォーカー・ブラザーズが歌っている。
主演は「ラスト・コンサート」に出演していた英国人リチャード・ジョンソン。お色気暗殺部隊にマルチリンガルのドイツ人女優エルケ・ソマー、クロアチア出身のイタリア女優シルヴァ・コシナ。他に悪役ナイジェル・グリーン、スザンナ・リーらが共演。製作はベティ・E・ボックス。

あらすじ

美しき刺客エックマンは石油会社社長ケラーが自家用飛行機で移動している最中に暗殺し、飛行機は空中爆発させる。自分は空中ダイビングで地中海に降り、ボートでペネロピに拾ってもらい、フェニシアン石油のスパイであるウィンガードもついでに暗殺する。
どうやらこの事件はフェニシアン石油とケラー石油との合併問題が絡んでいるようだ。フェニシアン石油の重役会に謎の女性エックマンが乗り込み、合併問題を解決した謝礼を要求する。そして重役会で反対したブリッジノースまでがエックマンのハニートラップに掛かって暗殺されてしまう。

この事件を知ったロイド保険調査員ヒュー・ドラモンドは調査にのりだす。彼は重役ウェストンがエックマンと一緒のところを目撃する。その後、ウェストンは爆弾で暗殺されてしまう。
重役サー・ジョンからドラモンドは、アクマタ国の石油利権をフェニシアン石油のために奪うためにエックマンがアクマタ国の若き王を暗殺するという話を聞く。そこでドラモンドは、甥ロバートが学友でもあるアクマタ国王に地中海に招待されたのを機会に、王に謁見した。
その後、謎の紳士ピーターセンから古城に招待を受ける。そこにはエックマンやペネロピの他グレイスらからなる女性暗殺部隊が訓練していた。そしていよいよこの彼女らを操る人物ピーターセンに対面した。意外にもピーターセンは爆発で死んだ重役ウェストンその人だった。彼は世界中に組織を持つ暗殺部隊のボスで、私服を肥やすために今日も何処かで重要人物を暗殺していた。

ピーターソンはドラモンドを閉じ込め、彼の見ている前でアクマタ国王を爆殺しようとした。だがドラモンドはピーターセンをチェスで出し抜き逆に抹殺し、甥ロバートの助けで古城からの脱出に成功する。
ドラモンドは港に潜んでいたエックマンとペネロピを捕まえる。彼女らはグレイスを利用してアクマタ国王の暗殺を図っていた。グレイスの体に爆弾が隠されていると直観したドラモンドがグレイスを素っ裸にして身体中を調べている間にエックマンとペネロピは逃げ出すが、正午が来るとともにエックマンとペネロピの乗ったボートの方が大爆発する。爆弾はエックマンによってウィッグの中に隠されていたが、ペネロピはそれを知らず素敵だからという理由だけで自分のウィッグをグレイスの物とすり替えていたのだ。

雑感

007映画シリーズの亜流の一つだ。昔の007映画を楽しめる人には時間潰しになる。
本家と比べて最も足りないことは、最新鋭装備や珍妙な秘密兵器が全く出てこないこと。美術(小道具)の予算が無かったのだろう。次に足りないのは、ラスト・アクションの緊迫感だ。原作者が悪いのではない。オリジナル原案、脚本があまりにヌルすぎる。ディーン・マーティンのマット・ヘルム・シリーズよりダサいかも知れない。ただしカンフーではなく、柔道を取り入れている辺りは、日本リスペクトだ。

お色気ムンムンの女性暗殺部隊が目立ちまくりで、何と主演リチャード・ジョンソンの頭いや影の薄いことか。これでも「007は殺しの番号」(1962)のときのジェームズ・ボンド候補の一人だったし、イタリア・日本合作映画「ラスト・コンサート」にもコンサート・ピアニストとして主演していた。

シルヴァ・コシナは「007/ロシアより愛を込めて」(1963)のボンド・ガール「タチアナ」役のオーディションでダニエラ・ビアンキに敗れたことがある。だから今回は念願の英国スパイ映画のヒロイン役だったが、エルケ・ソマーの助手扱いに甘んじている。

やさしい悪魔」という主題歌はウォーカー・ブラザーズの1966年に先行発売された曲だが、原題が映画の題名と同じなので曲の邦題も「キッスは殺しのサイン」だと思われがちだ。

スタッフ

監督 ラルフ・トーマス
製作 ベティ・E・ボックス
原作 H.C.マクニール、ジェラール・フェアリー
オリジナル原案 ジミー・サングスター
脚色 デイヴィッド・オズボーン 、 リズ・チャールズ・ウィリアムス
撮影 アーネスト・スチュワード
音楽 マルコム・ロックヤー
主題歌 ウォーカー・ブラザーズ「やさしい悪魔」

キャスト

保険調査員ヒュー・ドラモンド リチャード・ジョンソン 「ラスト・コンサート」
アーマ・エックマン  エルケ・ソマー
ペネロピ シルヴァ・コシナ
フィニシアン石油重役ウェストン  ナイジェル・グリーン
ピーターセンの私兵グレイス スザンナ・リー
甥ロバート・ドラモンド  スティーヴ・カールソン
甥のGFブレンダ  ヴァージニア・ノース
反対派重役ブリッジノース  レオナール・ロシテ
重役サー・ジョン ローレンス・ナイスミス
サー・ジョンの秘書アシェンダン嬢 ジャスティン・ロード
和服の美女ミツコ ナガズミ・ヤスコ
フェドラ王 ジア・モヒーディン

キッスは殺しのサイン Deadlier than the Male 1966 英サントル・フィルム製作 ユニバーサル配給

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