中学に入った頃から、父が隣の部屋で寝る前に8トラックで掛けていた。
8トラックとは2トラックのステレオテープが4つある構造のテープのことで、オープンリールテープよりはるかに持ち運びに便利だが、コンパクトカセットよりはずっと大きい。

 

この通称8トラは1960年代にカーオーディオ用として一般に普及した。オープンリールを車の中に持ち込むのはいくらトラック野郎だってテープが絡んじゃって嫌だったろう。コンパクトカセットは当時の性能が低く会議録音専用だった。
父は自家用車で気に入ったので自宅用にアンプ内蔵デッキを持ち込み小型スピーカーをつなぎ、若い頃によく踊ったのか知らないがよくマンボやルンバを流していた。
8トラックはエンドレス再生ができるので、起きるときまで大音響で鳴り続けていたこともあった。
おかげさまでかつて一世を風靡した南米音楽には今でも懐かしみを感じている。
こうやって今日のレアグルーヴの走りが私にすり込まれていったのである。

やがて1970年代に入ると、コンパクトカセットの方が高性能になり、オーディオ用としてカーステレオ、自宅用ともに流通したので8トラ・ブームは下火になった。
しかしその後も8トラは路線バスの停留所説明テープとして80年代まで長く使われ続けた。

8トラック

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