増村保造のスパイもの。
市川雷蔵の現代劇の中でも1,2を争う作品。
草薙中佐は、陸軍大学ではなく一般大学を卒業した語学堪能な人材を選抜してスパイに育成しようと決意する。
中野の元通信所跡に集められた精鋭は、最初は軍を離れ親兄弟と縁を切る仕事に反発を感じる。
しかしスパイ教育を受ける間に、草薙の反帝国主義運動に掛ける情熱にほだされていく。
彼らは一年間の厳しい勉強の後、卒業試験として英国領事館から暗号コード表を盗み出す指令を与えられる。
無事任務は成功するが、なぜか程なく、英国は盗まれたことに気づく。
陸軍省参謀本部は中野学校が失敗したと指摘する。
市川雷蔵は眠狂四郎とはちがった意味で喜怒哀楽を表さない大人しい役である。
しかし、いるだけで絵になる人だ。
逆にヒロインの小川真由美には、ぐっと来るものがあった。
戦争反対でありながら外国に利用されてスパイとして消される女の哀しさを見事に表現している。
加東大介も良い味を出している。
陸軍で主流になれなかった人の中には、アジアの曙みたいな人が大勢いたのだろう。
監督 増村保造
脚本 星川清司
企画 関幸輔
撮影 小林節雄
美術 下河原友雄
音楽 山内正
出演
市川雷蔵 (三好次郎)
小川真由美 (布引雪子)
待田京介 (前田大尉)
E・H・エリック (ダビドソン)
加東大介 (草薙中佐)
村瀬幸子 (母)
早川雄三 (大佐)
仁木多鶴子
陸軍中野学校 1966 大映