東大紛争のため東大入試が中止となり目標を失った日比谷高校3年生「庄司薫クン」の一日を描いて芥川賞を受賞した青春小説を映画化。
森本レオの奥さん森和代(当時、雑誌「装苑」のモデルだった)の映画デビュー作でもある。
薫くんは前日に飼い犬が急死したことに驚き転んで足の爪を剥がしてしまう。1969年2月9日はGF由美とテニスをする約束だったのを思い出し、彼女の家に電話をかけるが、薫くんの勘の鈍さのために電話をがちゃんと斬られる。
それでもテニスのキャンセルを伝え忘れたし、大学へ行かないと言う決心を伝えたくて、不自由な足を庇いながらもう片方の足で自転車を漕いでテニス場まで行くと、由美は友人とテニスをしていて、薫くんは恥ずかしくて何も言わずに去る。
薫くんは次兄と気が合う。次兄の紹介で学んだ思想史ノートが楽しくて、それをまとめた法学部の丸山教授を紹介してもらい、自分の知性を試したくて法学部に進路を決めた。大学受験がダメになった今、大学へ行かず、自分の知性を試すために社会に出ようと思ったのだ。
家に帰るとまた足が痛むので医者へ行く。診療室の扉を開くと、次兄と付き合っていた女医さんがいた。昔は彼女で妄想を掻き立てたものだった。彼女に手当をされている間も妄想が膨らんだ。医院から帰宅しながら自己分析を始める。自分自身は降りかかる問題から逃げて逃げて逃げまくる性格と考えている。
帰途、開成かどこかの教育ママに会って嫌味をいっぱい言われる。家に帰ると悪友の小林がドカドカ入ってきた。彼は出された菓子をむしゃむしゃ食べながら、深刻そうに文学をやめると言う。言うだけ言ったらスッキリした表情で帰って行った。
小林が帰った後、薫くんは家にいるとイライラするので、不自由な足を引きずって銀座に出た。小さな女の子が走ってきて、ケガした足を踏んづけた。流石に痛い。その子は「赤ずきん」の絵本を買いに来たと言う。本屋まで付いて行って、その子が読めそうな本を紹介してあげた。女の子は別れを告げ、道路に飛び出した。その時、車がやって来た。思わず言葉に出たのが「気をつけて」。
そのとき天命があった。可愛い子が楽しく過ごせる、海のような男になろう。そして由美の自宅に決意のほどを宣言に向かった。
当時は原作も映画もヒットした。
少し遅れて我々の時代には柴田翔先生の「さらばわれらが日々」が馬鹿売れで、軟弱でブルジョアの庄司薫なんて見向きもされなかった。
でも我々には庄司薫ぐらいがお似合いなのである。個人的には「人間失格」>「ライ麦畑でつかまえて」>「赤頭巾ちゃん気をつけて」であるが、この「赤頭巾ちゃん」は救いがあるだけ何度も読みたくなる。
薫くんが幼女の手を繋いで連れ回して、今だったら事案発生だ。(映画「シベールの日曜日」でもそうだった)
昔は何ごとも大らかだったが、やはり男は狼だったのだ。
自分が性犯罪者になるかも知れないという妄想は男なら誰にでもある。
しかし、そんな彼も由美にそう簡単に手を付けないだろう。
薫くんは意気地無しなのである。
マニッシュな森和代の演技は棒だった。しかしそのひどさがまったく気にならない。
岡田裕介の演技も酷いが、返ってウジウジした感じが出ている。当時の平均的ノンポリ青年の生の声で演じているからだ。

 

 

監督 森谷司郎
製作 金子正且 、 貝山知弘
原作 庄司薫
脚本 森谷司郎 、 井手俊郎
撮影 中井朝一
音楽 いずみたく
主題歌 佐良直美「赤頭巾ちゃん気をつけて」

挿入歌はピンキラやいしだあゆみと言った歌謡曲中心だが、主題歌はいずみたくらしい佐良直美が歌う和風ソフトロックだ。

 

 

出演
岡田裕介 (薫くん)
森和代 (由美)
中尾彬 (薫の次兄)
風見章子 (薫の母)
森秋子 (セクシー女医)
富川徹夫 (薫の親友小林)
山岸映子 (ヨッちゃん)
四方正美 (紀久子)
結城美栄子 (地下鉄の女)
宝生あやこ (本多夫人)
山岡久乃 (黒い帽子の夫人)
南風洋子 (スピッツを抱いた夫人 )
文野朋子 (由美の母)
ピンキーとキラーズ (本人)
いしだあゆみ (録画)

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赤頭巾ちゃん気をつけて 1970 東宝 現東映会長岡田裕介の初主演映画

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