2019年2月に長寿を全うされたスタンリー・ドーネンが製作・監督したコケティッシュ・コメディ(不倫艶笑喜劇)作品。
もとはロンドンのウェスト・エンド地区で大成功した演劇(原作ヒュー・ウィリアム、マーガレット・ヴァイナー夫妻)である。
主演はケイリー・グラント、デボラ・カーの「めぐり逢い」コンビにロバート・ミッチャムジーン・シモンズ。共演は執事役モーレイ・ワトソン。

イギリスでは普通に評判が良かったが、アメリカ上映時には全く評判にはならなかった。テレビドラマが視聴率一桁台だったりDVDが全く売れなかったら、日本で爆死という。これと少し似ているがアメリカでこの映画は、Box office bomb と呼ばれた。当時はアメリカの観客層の方が保守的だったのだ。
逆に当時から批評家受けした作品で、ケーブルテレビが始まって以来、何度も放送されている。

 

 

あらすじ

ビクター・ライオール伯爵は英国の落魄貴族、若々しい妻ヒラリーは当時の恋人ハッティの紹介で親しくなり、結婚し二人の子をもうけた。
彼らは城を公開して生活の足しにしている。子供たちが夏休みで旅行に出かけたある日、観光客がプライベートルームを見学通路と間違えて紛れ込む。
その男はアメリカの石油王チャールズといい、その余裕のある立ち振る舞いに、ヒラリーは一目でメロメロになる。
そしてロンドンの美容院に行くと言って、チャールズと夜を共にする。
ビクターはチャールズを見た途端にライバルだと直観していた。しかしここでヒラリーを押さえつけるとますます燃え上がってしまう。
そこでしばらく様子を見ることにする。
しかし夫婦共通の友人ハッティがロンドンからわざわざ田舎まで緊迫した情勢を伝えに来た。このままではヒラリーは行ってしまう。
そこでビクターは一計を案じて、チャールズにヒラリーがロンドンで遊んでいるから、連れて帰ってくれとお願いする。
チャールズはビクターが何か考えていることに気付いたが、ひとまずその話に乗る。
四人による晩餐も終わり、男女別れて寝る時間に、ビクターはチャールズに昔ながらの銃による決闘をすることを、その後離婚について話し合う約束で申し込む。
チャールズも酒の勢いでつい乗ってしまう。夜中に銃声が鳴り響いた。ビクターが肩を撃たれた。驚いたヒラリーとハッティが飛んでくる。
ヒラリーはビクターの看護をしながら、家族の歴史について思い起こす。思えば夫婦と子供たちには積み重ねてきた思い出があったではないか。
気付くとヒラリーはチャールズに別れを告げた。
しかし、チャールズは何故弾を外したつもりだったのに、当たったのか考え始めた。そこで、決闘現場にいた第三の男である執事に思い至る・・・。

 

 

雑感

 

ケイリー・グラントは相変わらず脱力系でやる気のなさそうな演技なのだが、笑いのツボを心得ている。
初めは出演を断ったそうでレックス・ハリソンが後任に選ばれたが、奥さんに不幸があって、仕方なくケイリーが引き受けた。
ロバート・ミッチャムの役も初めはフランク・シナトラらに声が掛かったそうだが、結局ロバート・ミッチャムが引き受けた。
彼も寝ぼけ眼でいることは多いが、決闘シーンで眼鏡を掛けるとは思わなかった。
執事のモーレイ・ワトソンだけが元の舞台から引き続き演じている。

唯一の米国人ロバート・ミッチャムが成功の原因だったと、ケイリーは聞かれて答えている。
個人的には、いつも堅苦しい役が多いジーン・シモンズの三枚目が面白かった。
何でもできるデボラ・カーは、これぐらいの役は得意中の得意である。
女優のデザイナーは豪華でデボラ・カーはハーディ・エイミス、ジーン・シモンズはクリスチャン・ディオールを着ているから、洋装史ファンも必見。
ケイリー・グラントとジーン・シモンズが時間つぶしに言葉遊びする場面は、単語ががいっぱい出てくるので(イギリス)英語を学んでいる者も必聴だろう。

原題だが「隣の芝は青い」という意味だ。相当する日本の言葉は、日本の故事成語ことわざ辞典に「隣の花は紅い」が挙がっている。でも花ではなく、日本で中流階級の一戸建ての庭に1960年当時見られるようになった芝をイメージして「芝生は緑」と邦題を付けたのだろう。
ただし、邦題担当者はケイリー・グラントの英語の台詞を聞いても「となりの芝生」というタイトルに気が付かなかった。 台詞を直訳すればそうなるのだが、翻訳の仕方を知らなかったのだろう。当時はまだあまり使われていなかったようだ。1976年このタイトルは、橋田壽賀子原作NHK銀河テレビ小説枠の大ヒット・ドラマ(主演山本陽子と定村貞子の嫁姑戦争)に使われた。

 

 

 

スタッフ・キャスト

監督・製作 スタンリー・ドーネン
原作・脚本 ヒュー・ウィリアムズ 、 マーガレット・ヴァイナー
撮影 クリストファー・チャリス
音楽 ノエル・カワード
美術 ポール・シェリフ

配役
ビクター・ライオール伯爵 ケーリー・グラント
ヒラリー(伯爵夫人) デボラ・カー
米富豪チャールズ・ドラクロ ロバート・ミッチャム
ヒラリーの友人ハッティ ジーン・シモンズ
執事セラーズ モーレイ・ワトソン

芝生は緑 The Grass is Greener 1960 ユニヴァーサル配給 英国艶笑喜劇

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