1930年代初頭を代表するギャング映画。当時37歳だった舞台俳優E・G・ロビンソンの映画での出世作でもあり、ここで彼は友情を重んじたことから破滅してしまうギャングを熱演している。監督は名匠マーヴィン・ルロイで共演はイケメン俳優のダグラス・フェアバンクス・Jr
 

 

 

 

あらすじ

 
小さな町の強盗だったリコとジョーのコンビはシカゴへ行き一旗あげようと決心する。ジョーたちはヴェットリの一家に加わる。当時のギャングは警察の厳しい摘発を恐れていた。しかしジョーは強盗中に警視総監マクルーアを射殺してしまう。それを見たジョーはギャングから遠ざかり、ダンサーとして生きていく。ジョーはヴェットリの一家を乗っ取り、アーニーの縄張りを奪い、シカゴの暗黒街のボス、ビッグボーイからシカゴのノースサイドを任されるまでに出世する。
しかし警察のファハティ捜査官はマクルーア射殺事件を追っていて、ジョーに行きつく。リコはジョーに釘を刺しにいくが、同棲しているオルガは警察に告白してしまう。リコの一家は壊滅させられ、リコも最後はドヤを転々として逃げ回っていたが、ファハティに発券され最後はマシンガンで蜂の巣にされる。
 

 

 

雑感

 
禁酒法や大恐慌という社会問題があったせいで、後に「哀愁」や「心の旅路」を撮る監督マービン・ルロイフィルム・ノワール(ギャング映画)を撮っている。
さらにE.G.ロビンソンという小柄で無愛想な役者を主役に据えるのは非常に勇気が要ったことだと思う。おそらく演技力と風貌がモデルだったアル・カポネに似ていることで選ばれたのだろう。
ところがこれが大当りしてフィルム・ノワールが映画の一ジャンルを占めるようになる。暗黒街映画はサイレント時代からすでにあったが、男女の恋愛関係を主題にすることが多く、アル・カポネをモデルにした実録風映画としては初めてである。しかもリコとジョーとの関係にホモセクシュアリティを感じさせる。

同年三月にはギャング映画「民衆の敵」をジェームズ・キャグニー主演で公開する。こうしてワーナーブラザーズのプロデューサー、ダリル・F・ザナックは「名犬リン・チン・チン」からギャング映画に移行して一時代を画す。(ザナックは1933年に独立して20世紀映画とフォックス映画を合併させ20世紀フォックスを作る。「暗黒街の顔役」は1932年の公開でUA映画)

映画冒頭に「All they that take the sword shall perish with the sword. 剣を取りし者、剣に滅びる」というテロップが入るが、これは勧善懲悪を強調した言葉で、倫理にうるさいヘイズ・コードを意識している。
リコの最期の台詞「Mercy of Mother, Is This The End of Rico? 情けねえ、これでリコも終わりか」はアメリカ映画名台詞ベスト100に選ばれている。

 

 

スタッフ・キャスト

 
監督 マーヴィン・ルロイ
原作 W・R・バーネット
脚本・台詞 フランシス・エドワーズ・ファラゴー
脚色 ロバート・N・リー
撮影 トニー・ゴーディオ
製作  ダリル・F・ザナック (ノークレジット)

 
配役
リコ   エドワード・G・ロビンソン
ジョー  ダグラス・フェアバンクス・ジュニア
オルガ   グレンダ・ファレル
ビッグボーイ   シドニー・ブラックマー
フラハティー刑事  トーマス・ジャクソン
ピート・モンタナ  ラルフ・インス
ヴェットリ   スタンリー・フィールズ

 

犯罪王リコ Little Caesar 1931 ファースト・ナショナル映画製作 ワーナーブラザーズ配給

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