原題は「満州からの大統領候補」。映画の内容から「洗脳された人」の意味になった。朝鮮戦争で中共軍に洗脳された米軍兵士が大統領候補を暗殺しようとするサスペンス映画。監督は「終身犯」のジョン・フランケンハイマー、出演は派手なアクションシーンを演じたフランク・シナトラ、40代で亡くなったローレンス・ハーヴェイジャネット・リー、アンジェラ・ラズベリーなど。原作はリチャード・コンドンのサスペンス小説であり、ジョージ・アクセルロッドが製作・共同脚色した。

 
キューバ危機の最中に公開された、東西冷戦を背景にした作品。実はナンセンスなことだが、リバイバル時に一度『失われた時を求めて』に改題されている。また『クライシス・オブ・アメリカ』のタイトルで現代の湾岸戦争に舞台を変えてリメイクされた。
 
IMDBは2019年8月現在8.0。
 

あらすじ

 
朝鮮戦争でマルコ大尉の部隊は案内役の韓国軍兵士チュンジン(ヘンリー・シルバ)に騙され、中共軍に引き渡される。そこで科学者により、全員が集団洗脳され、とくに影響を受けやすいレイモンドが実験で二人の同僚を殺す。そこでソリティアをしてダイヤのクイーンが出てくると、彼にはトリガーが働き暗殺者に仕立てられてしまう。
戦後、レイモンドは架空の戦いで戦功を挙げたとして勲章をもらったが、母やタカ派の義父との折り合いが悪く退役後はハト派の新聞社に勤める。しかし中共幹部から命令が下り、社長を暗殺して自分が社長となり、チュンジンが家政夫としてレイモンド家に入り込む。
国防省に残ったマルコは毎夜共産軍に囲まれる悪夢を見るようになっていた。彼は休暇を取り、NYのレイモンドを訪ねるが、そこにいたのはチュンジンだった。思わずカンフーファイトになり、警察沙汰となる。マルコは、列車内で知り合った女性ロージーに身元を引き受けてもらう。彼女はマルコに会った直後に婚約破棄をしていた。
マルコは陸軍情報局にこの旨を報告した。情報局はレイモンドを徹底的にマークしろとマルコに命ずる。
マルコが待ち合わせの場所に行くと、レイモンドはソリティアをしていてダイヤのクイーンが出ると、急に立ち上がり夢遊病者のようになり池に飛び込んだ。
一方レイモンドの義父は副大統領候補として大統領選挙を戦っている。母親は息子を取り込みたくて、以前破談にして息子を怒らせた相手との縁談を進める。彼らは再会した途端に結婚するが、それは嫁の父が強硬な反対派だったからだ。レイモンドは再びダイヤのクイーンを見て、嫁と嫁の父を暗殺してしまう。
からくりが分かったマルコはロージーとレイモンドに全てを話す。全てを悟ったレイモンドは母に会うが、母こそが共産主義者のスパイであり、夫を大統領に繰り上げるために大統領候補を暗殺しなさいとレイモンドに命令を下す。
党大会当日、大統領候補の演説中にレイモンドはライフルを構えていた。マルコはレイモンドの居場所に気付くが間に合わず、レイモンドは射殺してしまった、副大統領候補として壇上に上がっていた義父と母を。さらにマルコを見ながら、自らに向け引き金を引く。

 

 

雑感

 
確信犯だったオウム真理教と違って、催眠術で条件付けして長期間、暗殺者にしておくのは、非常に困難だと思う。それでも条件付けを母(アンジェラ・ランズベリー)を表すダイヤのクイーンにしているため、実は母親に愛されたいという潜在意識が働いたのかもと思わせる。
中国共産党が朝鮮戦争から洗脳を施していたことは周知の事実だったが、タカ派の政治家が実は中国のスパイだったという超設定のため、上映当時は批判されていた。しかしケネディ大統領暗殺事件が翌年発生して状況が変わる。オズワルドが暗殺犯だとすると、この映画を真似て彼が洗脳されたからではないかと話題になった。逆にこの映画が世論誘導に利用されたという考え方も成り立つ。ケネディ自身がハニートラップに掛かっていた疑惑はかなり真実味が有り、後には次期大統領選挙におけるケネディとイタリア・マフィア(フランク・シナトラを含む)の対立も明らかになった。結局、ケネディ暗殺事件が謎であり続ける限り、この映画はアメリカ人に忘れられることはない。

 
初めて見たときは、てっきりジャネット・リーが黒幕と思ってしまったw。
フランク・シナトラヘンリー・シルバのカンフーファイトのシーンだが、打ち合わせ通りにいかなくて、お互いに本気になってしまい、シナトラは空手チョップで机を叩き割って骨折した。
 
ラスト近くの息子役ローレンス・ハーヴェイと母役アンジェラ・ランズベリーの重要かつ禁断のキスシーンがある。(見ていると母子らしい年の差を感じさせる映像だが、実際に二人は三才しか違わない) 原作では祖父の代から親子間の性的虐待を行っていた家系で、母子も近親相姦に至っていたようだ。さすがにそんなことを描いたら、アメリカでも日本でも上映できなくなってしまう。

スタッフ・キャスト

 
監督 ジョン・フランケンハイマー
製作 ジョージ・アクセルロッド
原作 リチャード・コンドン
脚色 ジョージ・アクセルロッド 、 ジョン・フランケンハイマー
撮影 ライオネル・リンドン
音楽 デイヴィッド・アムラム
 
配役
マルコ   フランク・シナトラ
レイモンド ローレンス・ハーヴェイ
ロージー  ジャネット・リー
レイモンドの母 アンジェラ・ランズベリー
チュンジン ヘンリー・シルヴァ
アイスリン上院議員 ジェームズ・グレゴリー
ジョジー  レスリー・パリッシュ
 

影なき狙撃者 The Manchuria Candidate 1962 UA映画

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