ブロードウェイ・メロディ」(1929)が世界初のミュージカル・トーキーとして、また楽屋噺として大ヒットした。その後しばらく似たような作品が多く作られるようになり、ミュージカル映画は飽きられかけていた。
そんな停滞期である1933年に、新たな時代を感じさせるバックステージ・ミュージカル映画「四十二番街」が生まれた。

 

 

Synopsis:

ミュージカル「プリティーレディー」を演出するのは名演出家のジュリアン、厳しくて有名な人だ。資本は田舎のおもちゃ屋のアブナーが大女優ドロシーに魅せられて下心丸出しで貢いでくれた。しかしドロシーは昔馴染みのパットと隠れて付き合っていた。
ペギーが最後のオーディションで通った。彼女は気のいい娘で、コーラスガールロレーヌ、アン、さらに二枚目役のビリーにも可愛がられた。ある日、パットが知り合いのペギーを送って行くと、ギャングにパットが襲われる。ドロシーから手を引けという意味だ。パットはフィラデルフィアに職を得てドロシーの前から立ち去るのだった。
いよいよ初日をフィラデルフィアで迎えることが決まった。ドロシーはどこか渋い表情だ。初日前夜、フィラデルフィアのホテルでパーティーを開いていると、ドロシーが癇癪を起こし、転んで足を挫く。主役の突如降板にジュリアンは頭を抱えるが、アンが新しい主役にペギーを推薦する。ジュリアンはペギーに一晩かけて厳しいレッスンを課してなんとか初日に間に合わせる。

 

 

ここまでで1時間10分ほど経っている。ストレートプレイ中心で正直言って退屈だった。
それが「プリティ・レディ」本番のシーンを迎えるとものすごい盛り上がりを見せる。「大不況なんかどこかへ飛んでいけ」とばかりに横綱土俵入りを思わせる力強いタップダンスと、円を描くダンサーの群舞である。それを撮影するキャメラも時にローアングルで股間を抜いたり、時に天井からの万華鏡ショットと縦横無尽に動き回る。

 

 

 

振り付けは30年代にハリウッドで活躍したバスビー・バークリー。万華鏡シーンは映画キャメラの特性を利用した彼の発明だろう。彼の得意な群舞はスターシステムを採用したMGMでは難しかった。
撮影のソル・ポリートも40年代まで数多くの名作映画を手がけている。
主役は一応、ワーナー・バクスタービビ・ダニエルズジョージ・ブレントだが、実際はルビー・キーリー、ディック・パウエル、ジンジャー・ロジャースと言った若手の群像劇でもある。そして彼らは実際にその後スターダムにのし上がって行った。

 

 

 

 

ルビー・キーリーはセリフはダメ、歌もダメなのだが、唯一の取り柄がその華奢な美貌とタップダンスであり、30年代はセレブだった。実はアル・ジョルスンの妻だったため、大きな仕事を得ることができたのだ。
アル・ジョルスンは1927年に初めて長編トーキー映画「ジャズ・シンガー」をヒットさせた人で、黒人に模した黒塗りで歌うのが特徴、今だったら放送禁止になりかねない。次第にアル・ジョルスンが落ち目になり1940年に二人が離婚したらキーリーにも仕事が来なくなったのだ。
でも華奢な彼女の力強いタップダンスは、ジーン・ケリーに確実に影響を与えている。
ちなみに、若い頃に舞台のミュージカル”42nd Street” がロングランしていて、来日公演を行ったことがある。当時は一日中コマーシャルが流れていた。
この初演の演出家ガワー・チャンピオンが初日の朝、ガンで亡くなったため、映画のエピソードと合わせて弔い合戦的な雰囲気になって大ヒットした。彼は1951年版「ショウボート」に出演し、奥さんであったマージとチームを組んで40年代から50年代にかけて映画でも滑らかなダンスを見せてくれたダンサー兼俳優でもある。
またミュージカル”Cats” はロンドンで初演した後、これは売れると見た劇団四季の浅利慶太が権利を得て西新宿に専用劇場を作り公演を開いたりと、当時はミュージカルが再評価された時代だった。今から考えるとバブルだった。

 

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監督 ロイド・ベーコン
原作 ブラッドフォード・ロープス
脚色 ライアン・ジェームズ 、 ジェームズ・シーモア
撮影 ソル・ポリート
歌の吹替 アル・ダビン 、 ハリー・ウォーレン
振り付け バスビー・バークレー

 

 

出演:
ワーナー・バクスター (ジュリアン) 第2回アカデミー主演男優賞受賞。
ビービー・ダニエルス (ドロシー) サイレント時代からの大スター。
ジョージ・ブレント (パット) 「らせん階段」などに出演。
ルビー・キーラー (ペギー) アル・ジョルスンの当時の奥様
ジンジャー・ロジャース (アン)  フレッド・アステアと組んで一時代を作ったことは有名。
ディック・パウエル (ビリー) 20年間にわたり俳優として活躍、その後監督としても活動する。
ウナ・マーケル (ロレイヌ) 名脇役。
ガイ・キッビー (アブナー)
ネッド・スパークス (バリー)

四十二番街(42nd Street) 1933 ワーナー・ブラザーズ配給 ルビー・キーリーを覚えていますか?

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