フランク・B・ギルブレス・ジュニアアーネスティン・ギルブレス・ケーリイの共作になる、ベスト・セラー伝記小説を監督ウォルター・ラングが映画化し、ラマー・トロッティが製作・脚色に当たったテクニカラーの心温まるホームコメディ。2003年に「12人のパパ」(主演スティーブ・マーチン)としてリメイクされている。

主演はクリフトン・ウェッブ、ジーン・クレイン、マーナ・ロイ
共演はエドガー・ブキャナン、バーバラ・ベイツ、ベテイ・リンら。テクニカラー・シネスコ映像。

あらすじ

プロヴィデンス(ロード・アイランド州)に住むフランク・ギルブレスは、妻リリアンとの間に長女アンを頭に11人の子供がいた。

父フランクは経営工学者であり、母リリアンは心理学者で、子供たちに合理主義を日夜教え込んできた。父は一家の支柱であったが、つねづね「一ダースなら安くなる」と口癖にしていた。

1921年、夫の職場に近いモンクレイア(ニュージャージー州)に一家は引越した。フランクは、教育熱心で入浴中に外国語の勉強ができるように浴室に蓄音器を取り付けるほどで、子供たちは皆二桁のかけ算が出来た。新しく行く学校には、子供を飛び級させてくれと願い出た。
子供たちが次々と百日咳に罹ったときは、自宅で扁桃腺除去の手術を行う様子を映画撮影したいと医師に申し出た。その代わり、自分も扁桃腺除去手術を受けると言った。いざ、実行すると父フランクだけが目を回す。

やがて子供は一人生まれて合計一ダースになり、ますます賑やかになった。家族で海水浴に行くとき、年頃のアンやアーネスティンは、ライフガードを勤めるトムに見せるためにお洒落な水着を欲しがったが、ケチなフランクはクラシック・スタイルな水着で我慢しろと怒る。応援団のジョーがアンをパーティーにエスコートしたとき、頑固な父も付いてきた。パーティーの最中、父フランクはプラハとロンドンの学会に招待されたことを知って父は娘の同級生たちと踊り始める。

ところが1924年、父は楽しみにしていたプラハの国際会議への出発の日に心臓麻痺のため駅で倒れてそのまま亡くなってしまう。葬儀を終えたリリアン未亡人は、今後収入が激減するため、生活方針を子供たちに相談した。ここに残って暮らすためには、リリアンが夫の跡を引き継いで仕事に出なければならないが、代わりに家事をする人間が必要だ。兄弟たちは母が何を自分たちに求めているか分かった。同時に父の言う「一ダースなら安くなる」という言葉の意味を理解した。彼らは家事を分担し、リリアンは夫に代ってプラハ国際会議に出席した。
見事に夫の研究を引き継いだリリアンは、1948年アメリカの「今年の女性」に選ばれることになる。

雑感

男性版「ママの思い出」とも言える、アメリカの大家族コメディー。初期の経営工学者フランク・ギルブレスに関する伝記に基づく映画だ。
経営学ではその初期に、工場を効率的に動かす方法が研究された。特にフォードなどの大工場で工員が効率的に働ける環境について詳しい研究がなされた。この「時間と動作、疲労の研究」というジャンルでリリアン・ギルブレスは顕著な結果を残して、亡くなった夫フランクと共に学会から表彰されている。
フランクは、科学的経営を目指す経営コンサルタントであり、経営工学者だった。映画だけを見ているとリリアンは家庭の主婦だったのに突然亡夫の後を引き継ぐと受け取られがちだが、さにあらず。キュリー夫人のように元々共同研究者(博士)だったので、後を引き継ぐことができたのだ。ただ、十二人も子供を産んでいる(うち一人は子供のうちに亡くなる)のだからブランクはあったはずで、単純な共働きではない。

「ローラ殺人事件」やトレビの泉を一躍有名にした「愛の泉」に出演したクリフトン・ウェブ(上映当時61歳)が主演だ。確かに実物の写真と似ているところがある。しかし12人の子供の父親にしては線が細い。実はウェブはゲイだった。目の周りのメイクで何となくわかるだろう。
上映当時25歳のジーン・クレインが長女役だが、高校生の設定だ。前年に「三人の妻への手紙」で妻役を演じていたので、かなりこれも違和感があった。
上映当時45歳のマーナ・ロイは、1920年代からの映画スターだ。1930年代の「影なき男」シリーズで名探偵ニック・チャールズの妻を演じた。

 

スタッフ

製作、脚色  ラマー・トロッティ
監督  ウォルター・ラング
原作  フランク・B・ギルブレス・ジュニア、アーネスティン・ギルブレス・ケイリー
色彩  レオナード・ドス
音楽  シリル・モックリッジ
撮影  レオン・シャムロイ
音楽監督  ライオネル・ニューマン

キャスト

夫フランク・ギルブレス  クリフトン・ウェッブ
長女アン・ギルブレス  ジーン・クレイン
妻リリアン・ギルブレス  マーナ・ロイ (「影なき男」シリーズ)
アンの友人リビー・ランカスター  ベティ・リン
バートン医師  エドガー・ブキャナン
次女アーネスティン  バーバラ・ベイツ
メベイン夫人  ミルドレッド・ナットウィック
モナハン夫人  サラ・オールグッド
フレッド・ギルブレス  アンソニー・サイズ
ジャック・ギルブレス  ロディ・マッカスキル
長男フランク・ギルブレス・ジュニア  ノーマン・オレスタッド
リリー・ギルブレス  キャロル・ニュージェント
ウィリアム・ギルブレス  ジミー・ハント
ダン・ギルブレス  テディ・ドライヴァ
メアリー・ギルブレス  ベティー・バーカー  
校長  イヴリン・ヴァーデン
ヒギンズ氏  フランク・オース
トム・ブラック(アンの同級生)  クレイグ・ホール 

 

 

 

 

 

 

一ダースいれば安くなる Cheaper by the Dozen 1950 20世紀フォックス製作・配給 セントラル映画社国内配給

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