ジャコモ・プッチーニの名作オペラ「ラ・ボエーム」を人気オペラ歌手たちの共演で映画化した。不治の病に引き裂かれる男女の悲しい恋物語が、イタリア語の歌と音楽にのせて繰り広げられる。
主演はアンナ・ネトレプコ、ローランド・ビリャンソン
「ラ・ボエーム」とはパリに集まったボヘミアン(貧乏な芸術家の集団生活)の意味。

あらすじ

(第一幕)1830年、ルイ・フィリップの時代のパリ。クリスマス・イブの日に、たまたまアパートの屋根裏部屋に住んでいた詩人ロドルフォは下に住んでいて火を借りに来たお針子ミミと恋に落ちる。
(第二幕)カフェでロドルフォはミミを、ルームシェアしている画家のマルチェロ、作曲家ショナール、哲学者コリーネに紹介する。その店にはムゼッタもパトロンのアルチンドーロに連れられて入ってくる。マルチェロの愛人だが、浮気っぽいのだ。マルチェロは怒ってしまい、ロドルフォ一行は店を出ることになる。ムゼッタが何もなかったような顔をして付いて来て、ロドルフォたちの代金も一緒に来た紳士に払わせてと言い、一行とその場を逃げ出す。
(第三幕)翌年2月、マルチェロの働き先にミミが青い顔をして現れる。ロドルフォが出て行ったと言う。マルチェロは、彼ならここで寝ていると答える。ミミはロドルフォが嫉妬深くて、もう一緒に暮らせないと零す。マルチェロも別れた方が良いと言って、ミミを帰す。ロドルフォが起きて来て、マルチェロに真実を伝える。ミミは結核を患っていた。貧しいためにミミを医者に見せてやれないロドルフォは、彼女との別れを決意したが、ミミが承知しないので一芝居打ったのだ。ところがミミは帰らっておらず、ロドルフォの言葉を聞いてしまった。ミミはロドルフォに自分は死ぬのかと訊ねる。一方マルチェロは、ムゼッタが男といちゃついているのを見て、また喧嘩を始めた。ロドルフォはミミに愛しているが、別れた方がお互いに幸せになれると言い、ミミもついに同意する。

(第四幕)春が来て、元の屋根裏部屋に四人は戻って来た。ムゼットは相変わらず、パトロンを捕まえて身振りの良い格好で街を闊歩して、ミミも子爵の囲われ物になったそうだ。
その部屋にムゼットが瀕死のミミを連れて飛び込んできた。ミミは道端に打ち捨てられたように倒れていたのだ。ロドルフォはミミをベッドに寝かせて、楽しかった思い出を語り合い、再び愛を確かめ合う。しかし彼が目を話した隙に、彼女は息を引き取る。ロドルフォのミミへの呼び掛けだけが谺していた。

雑感

ガチのオペラ映画。全てのセリフにメロディーがついている。歌劇場ではなく映画スタジオを使い、セットに凝っているし、撮影のアングルにも凝っている。この撮影は劇場版では出来ない。
重要なマルチェロ役とショナール役を俳優が演じて、歌声だけオペラ歌手の吹き替えになっている。全員がアフレコ(あるいはプレスコ)して収録していた。同録して欲しかったが、カメラアングルが変わるので、難しかったようだ。
ミミ役に音域の広いソプラノ歌手アンナ・ネトレプコを起用して、フレーニよりマリア・カラスっぽい「ラ・ボエーム」だった。ミュージカルっぽさは全くないけれど、悲壮感もあまり感じない。
ただ、ネトレプコのメイクに手が込んでいて、病弱さを表現するメイクや死が近くなると白くなるメイクなど、舞台メイクではできないものを見せてくれた。第三幕なんて、ネトレプコの隈取りメイクが怖くて、ロドルフォはネトレプコを捨てたとしか思えなかった。
「ラ・ボエーム」は二重唱、多重唱が多く、字幕がないと付いていけない。しかし上映時間は本物のオペラと変わらず、美しい映像と音楽が1時間45分ほどで収まっていて、オペラ入門には最適だと思う。

スタッフ

監督・脚本 ロバート・ドーンヘイム
原作 アンリ・ミュルジェール
音楽 ジャコモ・プッチーニ
脚色 ジュゼッペ・ジャコーザ 、 ルイジ・イリッカ
製作 アンドレアス・カム 、 オリヴァー・アウシュピッツ
撮影 ヴァルター・キンドラー
音響効果 トーマス・シュミット=ゲントナー
舞台装置 フローリアン・ライヒマン
衣装デザイン  ウリ・フェスラー
メイクアップ   ハネローレ・ウアマッハー 、 アドルフ・ウアマッハー
指揮 ベルトラン・ド・ビリー
演奏 バイエルン放送交響楽団
合唱 バイエルン放送合唱団 、 ゲルトナープラッツ州立劇場児童合唱団

キャスト

ミミ:ソプラノ、アンナ・ネトレプコ
ロドルフォ(詩人):テノール、ローランド・ビリャソン
愛人ムゼッタ:ソプラノ、ニコル・キャンベル
コッリーネ(哲学者):バス、ヴィタリ・コワリョフ
ブノア(家主):バス、ティツィアーノ・ブラッチ
アルチンドーロ(枢密顧問官):バス、イオアン・ホーレンダー

マルチェッロ(画家):ジョージ・フォン・ベルゲン(吹替バリトン、ボアーズ・ダニエル)
ショナール(音楽家):アドリアン・エレード(吹替バリトン、ステファン・デグー)
パルピニョール(おもちゃの行商人):エルンスト=ディーター・ズットゥハイマー(吹替テノール、ケヴィン・コナーズ)

 

 

 

ラ・ボエーム La Boheme 2008 MRフィルム製作(オーストリア・ドイツ) 東京テアトル=スターサンズ国内配給

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