ある日、宇宙線に被曝したことにより知能水準を高めたアリ集団が人間社会に対して牙を剥いた。
たぶん未公開作品だと思うが、東京12チャンネルや地方U局で何度も放映されていた。

その少し前に日本テレビ系列で1954年のパラマウント映画「黒い絨毯」(グンタイアリ)を何度か放送していたが、この映画を見るといつの間にかアリが演技をするほど進化していたかと思った。

低予算のB級映画ではあるが、アメリカの名グラフィック・デザイナーで映画のタイトルデザインも手掛けたソール・バスが監督しているので、撮影は見事の一言に尽きるし、美術は簡潔だが非常に素晴らしいセンスである。

 

Synopsis:

砂漠を開発したが、人があまり集まらずほぼゴーストタウン化した町をアリが襲っている。報告を受けて、昆虫学者のハッブス博士と暗号通信を研究する情報科学者レスコーが当地を訪れる。
アリは共闘してより体の大きな種を倒すまで進化していた。このままでは生態系のバランスが崩れることを恐れて、モノリスのような蟻塚の近くにハッブス博士はドーム状の研究施設を設置する。(フェイズ1)
レスコーは早くもアリのコミュニケーションに見られるパターンを見出す。これを使えばアリとコミュニケーションが取れるかもしれない。一方、成果を出せないハッブスは黄色い殺虫剤を噴霧して周囲のアリを根絶やしにするが、周辺にいた家族が数人犠牲になる。ただ一人頭の弱い娘ケンドラ(美しい)だけがシェルターに隠れていて生き残っていたので施設で保護する。レスコーは上層部に事態を報告した方が良いと言うが、ハッブス博士は報告すれば研究は中止になると言って、拒否する。
いつの間にか、アリは黄色い殺虫剤に対する耐性を身につけてしまい、さらに強力になった。それに対して蟻塚の固有周波数を発見したレスコーはサインウェーブを使って日光の反射板となっていた蟻塚を破壊する。(フェイズ2)
電源をアリに壊され室温が急上昇する。ハッブスは手を負傷するし、昼間は暑さで訳のわからないことを言っている。もはや夜しか活動できなくなった。ケンドラはアリに誘われるかのように姿を消す。レスコーは知能レベルでアリが人間を上回ったことを悟り、ハッブスに降伏を進めるが、ハッブスは聞こうとしない。
アリたちはハッブスに対して個人的恨みがあるかのように攻撃の手を緩めない。とうとう頭に来たハッブスは外に出て女王蟻との一騎打ちを求めるが、落とし穴に嵌められる。そこは蟻地獄だった。レスコーはハッブスの遺志を継いで女王蟻のいる塚へ潜り込むことに成功するが、砂の中から出て来たのはノーブラのケンドラだった。(フェイズ3)

 

Impression:

この後がフェイズ4だが、完成版では二人が朝日を拝むところで突然終わってしまい、フェイズ4は今後に起きることとして省略されている。
実はちゃんと続きのフィルムはソール・バス自身が残していた。ちゃんと未来の答えを用意していたのだ。
これはアメリカではディレクターズ・カットとして上映されたそうだ。その世界で人間はアリに管理されている。碁盤のようなマス目で生活させられて、生殖さえもコントロールされており、その代わりたぶんアリが作り出したのだろうが、カエル人間や鳥人間が現れる。

 

なかなか示唆的な結末だ。

実際にヒアリ騒動が起きたようにアリも、パイオニアを求めて世界中に進出している。
ただし、人間より怖いヒアリやグンタイアリにも天敵がいて、その中でアリも人間も生態系の平衡点を見いだして生きていかねばならないのだ。レスコーによるとアリは賢くてゲーム理論を理解するようだから、そんなことは知っているだろうが。

 

しかし真実は愚かな人類が生態系どころか気象系までも崩したのであり、アリの反逆は正当防衛に見えてしまう。

その内、北極の氷が溶けて陸地がなくなるが、その時に人間もエラ呼吸出来たり、空を飛べれば行き続けるだろう。フェイズ4というのはそこまで考えているのだろうか。

 

なお、過去の名画に対するオマージュが至るところで見られる。例えば、「アンダルシアの犬」「砂の女」「アンドロメダ・・・」などだ。やはりソール・バスは和田誠のような映画オタクだったのだな。

 

 

Staff/cast:

監督 ソール・バス
脚本 メイヨ・サイモン
製作 ポール・B・ラディン

音楽 ブライアン・ガスコーン
撮影 ディック・ブッシュ
編集 ウィリー・ケンプレン

 

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出演者
マイケル・マーフィー レスコー
ナイジェル・ダヴェンポート ハッブス
リン・フレデリック ケンドラ(美人)

 

フェイズIV/戦慄!昆虫パニック (Phase IV) 1974 パラマウント 「砂漠の殺人生物大襲来!」

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