第74回アカデミー賞で4部門(作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞)を制覇した感動実話映画。
冷戦下のアメリカを生きた実在の天才数学者でノーベル経済学賞受賞者ジョン・ナッシュの苦悩の人生を描く。
監督はロン・ハワード、原作はシルヴィア・ネイサー、脚色はアキヴァ・ゴールズマン

主演はラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー。共演はエド・ハリスポール・ペタニー

あらすじ

1947年ジョン・ナッシュは、プリンストン大学院数学科に奨学生として入学する。同じく奨学生として入学したマーティン・ハンセンは、奨学金を分け合った仲でライバル関係にあった。ジョンは子供の頃から天才児で周囲から孤立し、自分の研究に没頭していた。

そんなジョンの唯一の友人はチャールズだった。チャールズは文学部の色男であり、ジョンを外へ連れ出す。しかしコミュ障のジョンは女の子をうまく口説けない。
ある夜、ジョンはアダム・スミスの国富論に間違いがあることに気づく。非協力ゲームの均衡の存在だ。ジョンは論文にまとめ、教授に提出する。教授はこの論文を認めて、MITにあるウイーラー研究所に就職することができる。

5年後の1953年、ジョンはアメリカ国防総省に呼び出される。ジョンは、モスクワから傍受した数字の羅列を見せられ、この暗号を解読するよう頼まれ、ジョンはソ連の暗号を読み解く。
MITではジョンも講義する義務が課せられ、黒板に問題だけ書いて解きたい人に解かせる。学生の一人にアリシアという気丈な女性がいた。

ある日、ジョンにパーチャーという男が声をかける。パーチャーは諜報員で機密区域へ連れていく。そこには機器を揃えた戦略分析室があった。
ソ連は、ナチの小型原子爆弾を手に入れアメリカで爆破させる計画を進めていた。その組織の諜報員は、すでにアメリカに潜入していた。ジョンの任務は、暗号を解読し極秘で報告することだった。
ちょうど同じ頃、ジョンはアリシアと付き合っていた。アリシアも変わり者だったので気が合った。その頃から、ジョンは誰かに尾行されているような恐怖を感じ始める。
そんな時、久しぶりにチャールズと再会する。チャールズは姪を引き取っていた。
チャールズの応援でジョンはアリシアと結婚する。

アリシアの妊娠が発覚し、ジョンは暗号解読の仕事を辞したいと申し出る。しかしパーチャーは許してくれず、ロシアの監視も強まり、ジョンは死の恐怖に怯える。
ジョンが数学者の会議で講演することになったが、その会場に殺し屋が入ってきたのを知る。ジョンは男に捕まえられ、精神科医のローゼン博士に注射を打たれる。

ジョンはマッカーサー病院で拘束されていた。ジョンはそこにチャールズがいるのを見て、彼が裏切ったと騒ぎ出す。しかしローゼン博士にはチャールズが見えない。チャールズはジョンにしか見えない幻覚だったのだ。それどころかパーチャーも極秘任務も妄想だった。実はジョンは発狂(統合失調症)していた。症状は大学院時代から出ていたが、ジョンが変わり者なので気がつかなかった。

1年後ジョンはプリンストン大学の近くの小さな一軒家に引っ越していた。ジョンが無職になったので、アリシアは仕事をしながら家事や育児をこなしていた。薬のおかげでジョンの幻覚は消えていたが、性欲も感じなくなっていた。ジョンは薬を止める。そのせいで、ジョンは再び幻覚を見始める。
1956年4月、ジョンの症状が再発していることを知ったアリシアは、急いでローゼン博士に電話をかける。ジョンはパニック状態になっており、命の危険を感じたアリシアは、子供を連れて逃げようとする。ジョンは、時間をかけて自分で解決するので、入院はさせないで欲しいとアリシアに頼む。

2ヵ月後、ジョンはプリンストン大学のマーティンを訪ねる。マーティンは友人として、ジョンが図書館を利用する権利を回復してくれる。ジョンはそこで数学の研究を再開する。幻想は見えるのだが、彼は幻覚を無視する努力を続ける。
1978年10月、ジョンを尊敬する生徒に声をかけられたのがきっかけとなり、ジョンの特別講義が始まる。
1994年3月、ジョンは、「あなたがノーベル賞候補に選ばれた」と声をかけられる。その教授に誘われ、大学のティールームに入ったジョンの前に、他の教授が敬意を込めて次々と自分のペンを置いていく。ジョンは感極まって涙を流す。
1994年12月。ジョンはノーベル経済学賞授与式に出席するため、ストックホルムにいた。ジョンは舞台の上に立ち、客席にいるアリシアに感謝の言葉を述べる。ジョンは苦難を乗り越え、愛の方程式を解くことができたのだ。

 

雑感

彼は要するに懐かしい変人だらけのプリンストン大学に戻って、変人に囲まれながら生活するうちに、再び教鞭を取れるようになり、病状も回復した。

脚色しているために事実とは違う点がある。統合失調症の治療を受けている最中に奥さんアリシアとうまく行かなくなり、1963年(35歳)に一旦離婚して夫婦は別居する。彼はその間、精神科の治療を受けながらプリンストン大学の中を徘徊していたと言う。1970年にアリシアはジョンと、戸籍は入れないが、寄りを戻す。その結果、彼の病状は改善し、普通に講義を学生の前で行えるようになり、フォン・ノイマン賞を受賞する。アリシアとは映画上映の年に合わせて73歳で再婚した。
又チャールズという幻は存在しない。ジョンが発狂したのは、就職してからの話だ。彼の発病の原因は応用数学の分野だったので、彼の成果を当時は過小評価したためだ。

彼の経済学における貢献「ナッシュ均衡」(非協力ゲームでの均衡の存在定理)は幅広い分野で応用され、40年後のノーベル経済学賞に値したが、それは彼が就職先を見つけるために急いで書いた論文だ。数学での確実な業績は微分多様体の埋め込み定理や代数幾何学、偏微分方程式だ。

ジェニファー・コネリーは、この映画でアカデミー助演女優賞を受賞した。秀才でありながら、不能になった夫を持って悩む役で誰にでもできる役だ。アリシアは脳の問題も心の問題と信じて、夫の心の支えになって見捨てなかったのだ。ジェニファーは1985年「フェノミナ」で有名になったが、2000年のインディペンデント映画「レクイエム・フォー・ドリーム」で演技派として開花した。そして主演女優賞でなく、助演女優賞を取りに来たこと、さらにこの作品に恵まれたことが受賞の要因だろう。

スタッフ

監督 ロン・ハワード (アカデミー監督賞)
製作 ブライアン・グレイザー 、 ロン・ハワード
製作総指揮 カレン・ケーラ 、 トッド・ハロウェル
脚本 アキヴァ・ゴールズマン (アカデミー脚色賞)
原作 シルヴィア・ネイサー
撮影 ロジャー・ディーキンス
音楽 ジェームズ・ホーナー

キャスト

学者ジョン・ナッシュ   ラッセル・クロウ
秘密諜報員パーチャー   エド・ハリス
妻アリシア   ジェニファー・コネリー (アカデミー助演女優賞)
精神科ローゼン博士   クリストファー・プラマー
ルームメートのチャールズ   ポール・ベタニー
同僚ソル   アダム・ゴールドバーグ
ハンセン教授(旧友)  ジョシュ・ルーカス
マーディー    ヴィヴィアン・カードーン
同僚ベンダー   アンソニー・ラップ
エインスリー   ジェーソン・グレイ・スタンフォード(名探偵モンク)
ヘリンジャー   ジャド・ハーシュ

 

 

 

 

 

 

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