原題の意味は「影の立役者」「縁の下の力持ち」といった意味。あと「隠された数字」という意味も含まれる。
当初の邦題は「ドリーム 私たちのアポロ計画」だったが、「アポロ計画」以前の「マーキュリー計画」に関する作品なので、「ドリーム」だけになってしまった。そんなタイトルより「三人のリケジョ」で良かったのではないか。

 

公民権運動が盛んに行われる中、NASAで働く黒人女性数学者三人が人種差別に立ち向かいながら、マーキュリー計画を成功させる話。並んで歩く写真はチャーリーズ・エンジェルより格好良いw。

 

あらすじ

コンピューターが計算機ではなく計算手つまり計算する人間を意味していた時代。つまりタイプライター大の卓上四則計算機と計算尺を使って人が計算をしていた時代は、物理理論計算を大卒が行い、数字を代入する計算は女性にやらせていた。
ケネディ政権下で公民権運動が激しさを増す1961年NASAで働く黒人女性キャサリン、ドロシー、メアリーはそれぞれに悩みを抱えていた。
ドロシーは計算手グループの主任を勤めながら、NASAは管理職として認めてくれない。計算手は臨時雇用扱いでなかったからだ。何度も直接の白人上司に掛け合うが、受け付けてくれない。
キャサリンは小学校で飛び級し、高校生の前で4次方程式を因数分解して解いていた。成人して結婚したが、子供3人を残して夫が夭折し、生活に苦しんでいる。
メアリーも二つの学位を持ち、機械いじりが大好きで大きな夢を持っていた。しかし夫は黒人活動家で、白人の下で働いている妻とは口論することが多い。

 

米ソの対立は、核開発競争から宇宙開発競争へと移りつつあった。ロケットを飛ばすことは多くの計算力を要する。NASAは計算部門の強化に乗り出していた。そんな中、キャサリンが衛星の軌道計算をするスペシャルタスクチームに専任計算手として派遣されるが、黒人にとって劣悪な職場環境に悩まされる。
ドロシーは、IBMの大型計算機が導入されるので計算手は大量解雇されると聞く。ドロシーは皆がIBMで使われるFortran言語を覚えることで救われると思い、時間外で即席教室を開催する。
メアリーは、技術主任のユダヤ人に見込まれて技術者への転身を望まれる。しかしNASAの規則によって白人の高校修了が技術者になるための要件になっていた。
ソ連のガガーリンが有人飛行を成功させる中、マーキュリー計画が本格的に動き出した。キャサリンはリーダーに計算手としての働きを認められて、国防省の会議に参加させてもらい、その場で着水位置を即席で手計算して割り出し、グレン飛行士にも存在を認めてもらえる。

 

一方、IBMの大型機は導入されたが、プログラマが不足していた。そこで手を挙げたのがドロシーが育てた黒人女性の計算手グループだった。彼女らは即戦力になる程、鍛えられていたのだ。

 

この動きにメアリーも黙ってられない。裁判所へ行って白人高校の受講許可を得たのだ。
ところがキャサリンが再婚が決まった直後に、IBMの大型機が動き出したので専任計算手はお役御免となり、ドロシーのチームに舞い戻ってくる。

 

そして、いよいよ衛星打ち上げの日に着水位置に関して白人上司のミスが見つかる。キャサリンは急遽スペシャルタスクチームに呼び戻されて、再計算するのだが…。

 

 

ケビン・コスナーの出演する映画にありがちだが、民主党にとって有利なように、かなり脚色されている。実際、彼女らはマーキュリー計画の実績によって出世したわけではなくて、それ以前から既に出世していたそうだ。すなわちケネディ政権の成果ではなく、軍や研究施設における黒人の地位向上はアイゼンハウアー大統領の時代から既に始まっていた。彼も対ソ連戦略では苦心しており、四の五の言っていられなかったわけだ。それを初めに知らされると、少しがっかりする。

 

 

しかしフィクションとして割り切って観る場合は、個人的にも非常に面白い。これが理科系映画だからだ。
21世紀は文系だ理系だという時代ではなくなったが、古き良き時代には理系人間がいたのだ。宇宙飛行士だって、理科系で出来ればマッチョが望ましい。そういう理科系向けの映画だ。でないと台詞を聞いていてもあまり面白くないだろう。

 

日本人について言えば、現代数学(とくに平和ボケした日本の数学)は応用を切り捨ててしまったから、あまり数学者と関係がない。実験物理系よりもFORTRAN全盛期に属する古い計算物理系人間にこそ、喜ばれるだろう。配給会社がそういうターゲットに絞って営業しているのは見たことがないが。

 

役者ではケヴィン・コスナーはいつもの感じだ。同じ民主党支持者であるキルスティン・ダンストを久しぶりに観た。カンヌ映画祭女優賞を獲得した女優にはかなり役不足の感はあるけど、彼女の元気な姿を視られただけでも良しとしよう。

 

 

監督 セオドア・メルフィ
脚本 アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
原作 マーゴット・リー・シェッタリー『Hidden Figures』

 

出演
タラジ・P・ヘンソン (メガネを掛けた計算手キャサリン)
オクタヴィア・スペンサー (計算手を束ねる管理職志望の女性ドロシー、過去にアカデミー助演女優賞受賞)
ジャネール・モネイ (中嶋朋子似のエンジニア志望メアリー、本職は有名歌手)

 

 

他に白人組は
ケヴィン・コスナー (計算チームの責任者)
キルスティン・ダンスト (チームの管理職)
ジム・パーソンズ (キャサリンの上司)

 

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ドリーム(Hidden Figures) 2016 20世紀フォックス配給 マーキュリー計画を成功させた黒人女性数学者たち

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