(○☆)カンヌ国際映画祭で話題を呼んだ、ロザンナ・アークエット初監督によるドキュメンタリー映画
ハリウッドで成功を収めた女優たち三十四人が、仕事と人生について本音を語る。

出演はロザンナ・アークエット、パトリシア・アークエット、ローラ・ダーン、ジェーン・フォンダ、ウーピー・ゴールドバーグ、メラニー・グリフィス、ホリー・ハンター、ダイアン・レイン、シャーロット・ランプリング、ヴァネッサ・レッドグレイブ、メグ・ライアン、シャロン・ストーン、デブラ・ウィンガー、ロビン・ライト・ペン他。

ストーリー

冒頭は、英国映画「赤い靴」で踊ることと愛することの板挟みに悩む主人公(モイラ・シアラー)が踊ったまま止まれなくて列車に飛び込むシーンが映される。ロザンナ・アークエットが子供の頃、母に見せられて印象に深く刻みつけられた映画だそうだ。彼女自身、子育てと女優業の両立で悩んでいる。

「何故、デブラ・ウィンガーは(二度目の結婚で)引退したのか」と言う疑問を持って、友人やその紹介で輪を広げていき、カンヌ国際映画祭にまで行って三十四人の女優に年齢、結婚、出産、美貌の衰えと仕事の関係について突っ込んで尋ねた記録映画である。

もちろん、人によって考え方は多様であり、子供をシッターに任せて長期ロケに行く人もいれば、シッター任せにはできず一年に一本にセーブして仕事を減らす人もいる。

デブラ・ウィンガーは、現役時代とあまり変わらなかった。彼女の場合は、子供を育てながら将来の活動のために充電しているという感じだった。そんな切羽詰まった思いがあるわけではなかった。

ベテランのうちロザンナのためを思って本音を語ったのはジェーン・フォンダだった。彼女の女優論は、腑に落ちた。彼女ほどの女優でも今までで八本の映画でしか満足できる見せ場を残せなかったのだ。そのプレッシャーに疲れて、二度目の夫テッド・ターナー(その後離婚)にプロポーズされたとき、映画界から去る決心がついたのだ。

最後にロザンナは母の墓を参り、子供たちを全員映画俳優に育てたが、母自身が芸術センスを生かす仕事を残して欲しかったと言って終わる。

雑感

監督の思い込みの激しいドキュメンタリーだ。
この作品は、確かに元は美人だったが今は悩める中年女優のための映画なのだ。もっと一般女性にとって普遍性の高い質問の仕方もあったと思うが、テーマを女優の老いに限定している。若い頃から美しくない一般女性は、女優の若い頃の自慢話を聞かされても面白くない。女性観客がターゲットのはずなのに、かえって引いてしまう。この作品が非常にニッチな女性映画だったと言うことだ。

チャプターを分けて、もっとアカデミックに取り上げることもできただろう。そういう編集をしないで直観的な編集にこだわったのは、周りに相談する相手がいなかったせいだろう。その辺で、ジェンダーにうるさい批評家連中は辛い評価を下している。

またロザンナ・アークエットは、整形否定派なので、映画の中でも整形したら50歳の時に50歳の仕事は回ってこないと主張している(それは正しい、今では女優が整形しなくてもCGが勝手に直してくれる)。しかし、女性でも整形が必要と考えている人は多かったので、女性ファンから叩かれた原因になったろう。しかし整形に失敗して仕事がなくなったのが、ロザンナの友人メグ・ライアンだ。

ただし、男性から見ると21世紀から見なくなったあの女優はどうなっているか知ることができる貴重な映画だった。個人的には、ハリウッド女優に興味があるのであって、顔も見たこともないアメリカ一般女性のことは関心がない。
ロザンナだってそんなに大したことはないじゃないと負け惜しみを言う女性もいようが、彼女はTOTOの「ロザーナ」に歌われたほどの女性である。その彼女が、おばさんになる恐怖に苦しんでいたのだ。

他に思ったことはアメリカ人女優は、ヨーロッパ女優に対して劣等感があること。特にシャーロット・ランプリングを神格視しているため、直接質問できない。ヨーロッパ文化から身に付けた演技に、新大陸の女優は決して敵わないと思っているのだろう。奇しくも女優の力量差に圧倒される苦しみをシャロン・ストーンは嘆いていた。

この映画が公開されてからすぐに、ジェーン・フォンダ(2001年にテッド・ターナーと離婚)とデブラ・ウィンガー(離婚していないまま復帰)は、ともに芸能界に復帰している。ただしどちらもお金は持っているので、仕事はできるだけセーブしているようだ。

 

スタッフ

監督・脚本・製作 ロザンナ・アークエット
製作 デビッド・コディコウ、ハッピー・ウォルター・マット・ウィーヴァー
撮影 ジャック・マーク・バー

キャスト

ロザンナ・アークエット
パトリシア・アークエット(妹)
エマニュエル・ベアール(仏)
カトリン・カートリッジ(製作後病死)
ローラ・ダーン
ジェーン・フォンダ
テリー・ガー
ウーピー・ゴールドバーグ
メラニー・グリフィス
ダリル・ハンナ
サルマ・ハエック
ホリー・ハンター
ダイアン・レイン
ケリー・リンチ
ジュリアナ・マルグリーズ
キアラ・マストロヤンニ(仏)
サマンサ・マシス
フランシス・マクドーマンド
キャサリン・オハラ
ジュリア・オーモンド
グウィネス・パルトロー
マーサ・プリンプトン
シャーロット・ランプリング
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
テレサ・ラッセル
メグ・ライアン
アリー・シーディ
エイドリアン・シェリー
ヒラリー・シェパード=ターナー
シャロン・ストーン
トレイシー・ウルマン
ジョベス・ウィリアムズ
デブラ・ウィンガー
アルフレ・ウッダード
ロビン・ライト・ペン
ロジャー・イーバート

 

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デブラ・ウィンガーを探して Searching for Debra Winger (2002) イモータル+フラワーチャイルド製作 ライオンズ・ゲート配給 トライ・エム+ポニー・キャニオン国内配給 中年女優向けドキュメンタリー映画

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