東宝製作の1956年年末映画「サザエさん」、1957年4月映画「続サザエさん」につづく、長谷川町子が朝日新聞に連載した漫画の映画化作品。
笠原良三が脚本を書き、青柳信雄が監督した。
主演は江利チエミ、共演は小泉博、藤原釜足、清川虹子、松島トモ子
色彩はイーストマンカラー、スタンダード映像。

あらすじ

磯野家に山中老人がフグ田マスオとサザエさんの婚約の使者として訪ねてくる。しかしマスオによると、九州に一年間転勤が決まったので、結婚はそれからになりそうだ。
サザエはいよいよ妻になれると張り切り、一年間の花嫁修業を開始する。家族会議で多数決により、磯野家の主婦になり、家事を取り仕切ることを宣言する。その結果、皿が次々に割れて、出費の計算もできないため、磯野家の家計は大赤字になった。育児はミチ子の赤ん坊を練習台にしたが、枕と赤ん坊の区別がつかない始末。

赤字の穴埋めに、サザエは三越でパートタイムのアルバイトをしたが、大失敗をしでかし一日で辞めてしまう。さらに仕立て屋の札を出すと、早速税務署に入られる始末だ。
波平の会社の重役夫人を親切にしたサザエは、重役から見込まれ、息子の嫁に所望される。
サザエは父の顔を立て夫人のパーティに出席した。突然、その席にマスオが現れ、プンプンになって帰ってしまった。責任を感じた波平は、山中老人にお願いして事情を説明してもらった。
小学校の運動会が開かれた。サザエさんはマスオの前で一等賞をとった。賞品を一緒に開けると、夫婦茶碗のセットが入っていた。

雑感

シリーズ第三作のこの映画からカラー映画になる。併映は「地球防衛軍」。

実はこの作品で江利チエミの「サザエさん」シリーズ全十作をコンプリートした。この第三部だけ録画し損ねていたのだ。
前作「続サザエさん」でマスオととくっ付きサザエはすぐ結婚かと思わせたが、当時は結婚にもうるさい手順があって、実際に結婚するのは第五部「サザエさんの結婚」である。

このシリーズは、ノリ平一家の顔ぶれが原作と異なるのが特徴だ。仲代達也を第一話でノリスケに起用してしまったため、シリーズ化に伴いフリーの仲代を頻繁に起用できなくなり、第二部から従兄としてノリスケの代わりに弟ノリオを下宿させている。さらに以後のエピソードでは大阪在住の従弟妹ノリ吉、百合子、タマ子さらに叔父万蔵(花菱アチャコ)、叔母チニ(浪花千栄子)まで登場させている。ちなみに原作ではノリスケは父方の従弟だが、映画シリーズでは母方の従弟になっている。
話の内容としては、コメディアンや東宝の俳優を一人ずつ使い、細切れのエピソードをうまく繋いでいる。三木のり平なんて、サザエとワカメとほんの短い時間しか共演しておらず、まるでカメオ出演のようだった。
江利チエミが洋楽を歌うミュージカル要素は少なかったが、カラー映像に楽しさが溢れ出ている映画だった。サザエの相手に器用な二枚目俳優を使っていれば、もっと楽しかったのだが、小泉博は歌も歌えず不器用だった。

スタッフ

製作:杉原貞雄
原作:長谷川町子
脚本:笠原良三
監督:青柳信雄
撮影:遠藤精一
音楽:内藤法美

キャスト

江利チエミ:磯野サザエ
松島トモ子:磯野ワカメ
白田肇:  磯野カツオ
藤原釜足:サザエの父親
清川虹子:サザエの母親舟
藤木悠: ノリオ君
小泉博: フグ田君
仲代達矢:ノリスケ君
青山京子:ミチ子
柳家金語楼:山中老人
一の宮あつ子:多胡夫人(隣人)
大沢ゆきひろ:多胡 いね夫(子役)
江原達怡:海老名 鯉一
重役:益田キートン
重役夫人:藤間紫
三木のり平:元小使
有島一郎:税務署員
デパート客:岡村文子、塩沢登代路
空き巣A:沢村いき雄
魚屋:由利徹
三河屋三平:八波むと志
看護婦:若水ヤエ子
新妻:中田康子

 

 

 

 

 

 

 

 

サザエさんの青春 1957.12 東宝東京製作 東宝配給

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