製作は兒井英生で、NHKラジオ大阪第一放送の同名連続放送劇から山崎謙太が脚本を書き、野村浩将が監督に当っている。
主演は花菱アチャコ、共演は浪花千栄子大泉滉、木匠久美子、清川玉枝。白黒スタンダード映画。

あらすじ

W大生のアチャコは三回目の落第をする。下宿代をためてしまい大家に対する借金が何万円も残っているので、下宿の娘愛子と結婚できない。
アチャコの母親が上京してくる。落第したとは言えず、卒業して就職したと言ってしまう。早く東京へ自分を呼んでくれと言って、母親は帰っていった。
同級生北村も落第したが、会社社長の親がまだ社会に出るのは早いから落第して良かったと言って、喜んでいる。北村は、バスガール愛子の搭乗する、はとバスに毎日乗込んでは彼女に色目を使う。
ついに北村は、愛子を自分の誕生日に屋敷に招待した。あらゆるもてなしを受けたが、昔バスガールだった北村の母親はあまり良い顔をしない。

アチャコは発憤して、色々アルバイトをしたが、最後に下着会社の社長秘書という職を見つけた。この会社は女ばかりなので、女社長は男性秘書を欲していたのだ。それ以来アチャコは、社長の父になったり、夫になったりして社長の貞操を守った。
しかし社長はゴルフ場で会った取引客と意気投合して結婚することになりアチャコは御役御免となる。退職一時金を5万円もらうが、帰りの電車で掏り取られる。

そこへ母親が再び上京して落第したことを大家にバラされてしまう。息子と一緒に暮らせると思った母はがっかりして、帰りの列車に乗り込む。アチャコは北村の車に乗り込んで、その列車に追い付き、「来年こそは卒業してみせる」と誓うのであった。

 

雑感

NHKラジオ大阪放送局の同名ラジオドラマから映画化した新東宝作品。東京編は第一部で、全部で第四部(めでたく結婚の巻)まである。毎回ヒロインは交代する。
筋書きは他愛のないものだった。浪花千栄子の見せ場がほとんどなくて残念だった。
ただしNHKが原作に名を連ねている作品ながら下着商社を題材にしており、清川玉枝の下着シーンや下着姿の若い女性五人が並ぶシーンもあって驚いた。原作にこのようなシーンが挿入されていたのか?オリジナルだとすれば流石新東宝作品である。

アチャコは明治30年(1897年)生まれで、公開時に55歳だった。母役の浪花千栄子は年下であり、明治40年生まれだから45歳だった。

また1954年から1965年まで花菱アチャコ、浪花千栄子が夫婦に扮するラジオドラマ「お父さんはお人好し」がNHK大阪から放送されて、1955年から1956年にかけて五部に分けて大映映画「お父さんはお人好し」シリーズが公開され、1958年には東宝宝塚映画でに作品が公開された。

大泉滉が、友人役で登場する。彼は晩年は怪優だったが、戦前は子役として活躍して、戦後すぐは文学座に所属する二枚目俳優だった。1950年代に入ってから喜劇俳優に転じている。祖父はロシア皇帝ニコライ2世の侍従であり、祖父と日本人の祖母の間に生まれた父は無政府主義作家の大泉黒石だ。

 

スタッフ

製作 兒井英生
原作 長沖 一(NHK大阪局放送局文芸部)
脚本 山崎謙太
監督 野村浩将
撮影 平野好美
音楽 服部正

キャスト

柳アチャコ  花菱アチャコ
母みどり  浪花千栄子
下宿の大家  小倉繁
大家の娘愛子  木匠まゆり(久美子)
大学生北村俊夫(社長の息子)  大泉滉
北村俊夫の母  丹下キヨ子
執事  堺駿二
下着メーカー社長  清川玉枝
秘書  大谷伶子
客石川  古川緑波
客川村  益田喜頓
ゴルフの上手い客 小川虎之助
写生をする夫人 朝雲照代
写生をする娘  久保菜穂子

 

 

 

アチャコの青春手帖 東京篇 1952 児井プロ+新東宝製作 新東宝配給 アチャコ・浪花千栄子の人気ラジオドラマの映画化

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