慶応大学医局に勤めていた北杜夫が、船医として水産庁の調査船に乗り込み、世界一周の旅に出かけ、旅先でハチャメチャな目に遭う、楽しいエッセイ集である。
若い頃は、このエッセイを文庫で読んでいた。
病を得て、目で読むのは疲れるので、毎日少しずつ分けて、オーディオブックを聴いてみた。
北杜夫が持つ多面性を感じさせるように読むか、単なる娯楽作品として読むか?
相原麻理衣は後者の戦略をとっている。
北杜夫のクラ〜イ作品をいくつか読むと、その複雑さが残像として残り、この作品の読み方も変わるものだ。
しかし彼女は、そういうしがらみをばっさり切り捨てて、読んでいる。
相原麻理衣はご存知むっつり右門が活躍する、オーディオブック「右門捕物帖」シリーズで有名な声優だ。
講談調の読み方が、ファンに受けている。
podcast時代の落とし子のような女性である。
さすがに現代文では、露骨な講談調子は抑えられている。
それでも、ときどきひょっこり「むっつり右門」が顔を出す。
それも一興である。
朗読者を男優に変えたからといって、面白く読めるとは限らない。
相原麻理衣の起用は、コストパフォーマンスの点でも成功している。
男優で彼女以上の効果を上げようとすれば、ある程度の声優を用意しなければならず、コストアップは避けられない。
単に面白い読み物として彼女の朗読を楽しむ分には、この価格で文句の付けようがない。
どくとるマンボウ航海記 オーディオブック 全話セット

どくとるマンボウ航海記 相原麻理衣朗読

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