幸田露伴の娘・幸田文と弟の姉弟愛を描いた作品。
カメラマン宮川一夫ならではの映像美が施された巨匠市川崑の名作である。
キネマ旬報邦画第一位と監督賞、および第14回カンヌ国際映画祭フランス映画高等技術委員会賞を獲得した。
大正年間、げんは女子学院へ通う気の強い娘である。
リューマチを患う義母に代わり、家事を仕切っている。
その弟碧郎は義母とそりが合わず、不良少年になって、退学処分を受ける。
転校しても生活態度を改めなかったが、姉は時には厳しく時には優しく弟に接する。
そんな弟がある日、結核を発症する。
医者は手遅れだという。
げんは命がけで看病する。
しかし転地療養先で姉が見合いしている最中に弟はボート遊びに興じて、病状を悪化させる。
岸恵子が実年齢より10歳も若い役を熱演。
銀残しと言われる映像が少しセピアカラーっぽいので、年齢面でのアラは目立たない。
映画によって評価が分かれる女優だが、気合いが入ったときは凄い演技を見せてくれる。
この映画は文句なしに凄い。
ラストシーンは何度見ても泣ける。
また助演陣も素晴らしい。
いつもニヒルな森雅之が、ここまでコミカルな演技をするとは思わなかった。
文豪の役はやはり文豪(有島一郎)の息子にやらせるものだ。
逆に田中絹代は珍しくいじめ役。
でも本来こういう人なのではないかと思わせるほど、はまっている。
わずかしか出演シーンはなかったが、岸田今日子も妖しい魅力があった。
私の母がこの人は実物の方が美人だったと言った。
だとすると、宮川一夫は彼女の素顔に近い部分をカメラに映し出したのだろう。
川口浩の演技が若くて少し頼りないところがあったが、それを補うに十分な共演陣だった。
監督 市川崑
脚色 水木洋子
原作 幸田文
製作 永田雅一
撮影 宮川一夫
音楽 芥川也寸志
出演
岸惠子 (げん)
川口浩 (碧郎)
田中絹代 (母)
森雅之 (父)
仲谷昇
浜村純
岸田今日子

おとうと 1960 大映

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