ダリル・F・ザナック製作による1955年スローン・ウィルス原作ベストセラー小説を映画化したもの。
戦争によって、あるサラリーマンの背負ったトラウマ出世競争を描いている。
監督・脚色はナナリー・ジョンソン。撮影はチャールズ・G・クラーク、音楽はバーナード・ハーマン
主演はグレゴリー・ペック
共演はジェニファー・ジョーンズ、フレドリック・マーチ、マリサ・パヴァン、リー・J・コップ、キーナン・ウィン

 

あらすじ

トム・ラースはニューヨークの貧乏財団に勤務していた。1男2女を儲けた妻ベッツイは、夫にもっと稼げといつも発破を掛けている。
ラースは友人ホーソーンから朝の列車の中でユナイテッド放送への転職を勧められる。その夜ラースに弁護士から電話があり、祖母の遺産が邸だけだったことを知らされる。遺産の預金を当てにしていたベッツイは、がっかりするが、今の家を売って祖母の邸に引っ越そうと言う。それをラースが嫌がると、ベッツィは彼が覇気をなくしていると日頃の不満をぶつける。翌朝、ホーソーンにラースは放送局の採用試験を受ける意思を表明する。

ふとラースは戦時中のことを思い出す。ナチスドイツ軍が抵抗活動を続けるイタリアに大尉として派遣されたラースは、ドイツ軍の残党を駆逐した後、ガーデラ軍曹の紹介でマリアという娘と一時期深い仲になった。しかし日本との戦争に派遣されることになって以来、マリアとはそれっきり会っていない。

ラースはユナイテッド放送社長のホプキンスに会い、無事採用された。ラースはホプキンス会長の懐刀として演説のサポートをするようになった。ラース一家は邸に移ることになった。しかし執事をしていたシュルツが遺言書を持っていると言って邸の所有権を主張した。ラースはバーンスティン治安判事にこの調査を頼んだ。

またラースは社長の演説の草稿を何度書いてもオグデン重役につっ返された。逆に社長から、オグデンの草稿を見せられる。家に帰ってそれをベッツィに見せると、彼女は自分の考えと同様に酷評する。しかしそのまま社長に伝えるとオグデンの顔に泥を塗ることになる。サラリーマンとしては、理想通りに行かないこともある。ベッツィはそれを聞いて、不満げである。

バーンスティンの調査の結果、シュルツが目の悪い祖母の代わりに小切手を切ることによって生前から財産を横領していたことがわかり、それを公にしないことを条件にシュルツは遺言書を引っ込めた。

その後、ラースは社長宅を訪れる。そこに社長の娘が駆け落ちしたという知らせが入るが、社長は動揺するが、仕事のことを忘れてなかった。ラースは、ベッツィのいう通りに酷評する。社長は納得する・・・。

雑感

アメリカ作品だから最後は無理やりハッピーエンドにしているが、戦場へ行ったサラリーマンの悲哀を描いた作品だ。2時間で結論を出すために、終盤に無理にまとめている。

サラリーマンのドラマというと、ひと昔前の日本のテレビドラマ例えば「不毛地帯」だとかを思い出させる。親しみの持てるコンテンツなので、この映画も期待していなかったが、非常に楽しく見ることができた。グレゴリー・ペックジェニファー・ジョーンズの顔合わせと、グレゴリー・ペックとフレデリック・マーチの組合せは、いずれも新鮮に感じられた。
しかしアメリカの評価は、それより厳しく、平均より少し上という程度だろう。

戦後、妻ベッツィは夫にきついことを言ったのは、財産目当てのがめつい女だったのではなく、戦前は冒険心を持っていた夫に覇気を取り戻して欲しかっただけらしい。

一方、夫は戦争に行って、寒さでオーバー欲しさに強盗のようにドイツ少年兵を刺し殺し、戦友ハンクのいる場所に誤って手榴弾を投げて死なせてしまう。イタリア娘と浮気もしたが、戦場でのトラウマを抱えていて、人が変わってしまった。(公開当時はPTSDという概念はなかった)

彼が変わるきっかけは、社長との出会いだった。
彼、ホプキンスも家庭に大きな問題を抱える、大企業の経営者だ。周りにイエスマンの重役しかいない彼は、歯に衣を着せぬラースに戦争で死んだ息子を重ねていた。

社内の出世競争で重役に嫌われ、解雇の窮地に追い込まれた彼に救いの手を差し伸べたのも社長だ。彼はラースと直接のパイプを持って、事あるごとに彼にアドバイスを求めた。

社長の家庭も崩壊の一途を辿っていた。娘は進学を取りやめ、夜の街で有名人(セレブ)になり、馬の骨と結婚してしまう。そんな苦しい時も彼は、会社の力で慈善事業を行うプロジェクトを企画していた。

珍しいのはカラー映画なのに、オープニング・タイトルが男の絵が描かれたモノクロ画面なのだ。「灰色の服を着た男」という題名のせいだが、一瞬モノクロ映画と騙されたw。

スタッフ

監督、脚本  ナナリー・ジョンソン
製作  ダリル・F・ザナック
原作  スローン・ウィルソン
撮影  チャールズ・G・クラーク
音楽  バーナード・ハーマン

キャスト

トム・ラース  グレゴリー・ペック
妻ベッツィ  ジェニファー・ジョーンズ
ホプキンス社長  フレドリック・マーチ
マリア  マリサ・パバン
バーンスティン判事  リー・J・コッブ
ホプキンス夫人  アン・ハーディング
ガーデラ軍曹  キーナン・ウィン
友人ホーソーン  ジーン・ロックハート
スージー(社長令嬢)  ジジ・ペロー
ウォーカー(宣伝部長)  アーサー・オコネル
オグデン(重役)  ヘンリー・ダニエル

 

ネタばれ

軍隊時代の部下ガーデラは偶然にも放送局に勤めていた。彼は、戦後の混乱が続くローマで、マリアとラースの息子が貧困生活を送っていると伝えた。そこでラースは、一切をベッツイに告白したが、ベッツイは車で猛スピードを出して、翌朝警察に保護された。
家族を大切にしなければならないと悟ったラースは、ホプキンスの講演に同伴することを断って出世街道を歩むことを断念する。ベッツイも冷静になり、夫とじっくり話し合う。
そして夫妻は揃ってバーンスティン判事を訪れ、夫が二度と連絡を取らない代わりにマリアへ仕送りすることを誓い、判事に送金を代行してもらうことになった。

 

 

 

 

灰色の服を着た男 The Man in the Gray Flannel Suit 1956 20世紀フォックス製作・配給

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