パゾリーニの弟子、ベルトラン・ベルトリッチ監督の官能美を存分に楽しめる。
拙者はドミニク・サンダは子供の頃に観た映画で痛く感動して以来、弱いのよ(笑)
哲学講師マルチェロ(JLトランチニャン)は子供の頃に同性愛者を射殺したことがトラウマとなって、社会に対して償いをしなければいけない、という強迫観念にとらわれている。
時はムッソリーニ時代、彼はファシスト党に身を投じ、秘密警察の一員となる。
彼に与えられた任務は、パリへ亡命していた恩師クアドリの暗殺。
彼は大して好きでもない女(ステファニア・サンドレリ)と一緒になり、新婚旅行を兼ねてパリを訪れ、クアドリ夫妻を訪問する。
しかし彼が心を奪われたのは、クアドリの若き妻アンナ(Dサンダ、当時19歳)だった。
彼は途端に任務を忘れて、彼女に迫る。
彼の正体を知る、彼女は彼の前に身を投げ出す。
マルチェロは彼女から情報を聞き出し、クアドリ教授一人をおびき出し暗殺する計画を建てる。
しかし彼女は夫と行動を共にする。
雪の中をマルチェロは、クアドリ夫妻を乗せた車を追う。
そして森の中で追いつかれた夫妻は、秘密警察によってなぶり殺しにされるのだった。
命乞いをするアンナを、マルチェロは見殺しにするしかなかった。

体制が変われば、新しい体制にすぐ順応してしまう、インテリの空しさを描いた秀作。
絵コンテを画集にしただけでも、素晴らしい物になりそうなぐらい、映像美が素晴らしい。
その中でも女性を非常に美しく描いている。
台詞はそう多いわけではないが、脚本(ベルトリッチの脚色)もしっかりしたものだ。
そういう造りの中で、愛すべき相手を見殺しにした、優柔不断な男の空虚さを、冷たく描ききっている。
難を言えば、イタリア映画にありがちだが、音声だ。
声にリバーブを掛けすぎている。
したがって人の声がスクリーンから浮き上がってしまう。