戦争映画でなく、地味な戦犯裁判映画、しかも東京裁判でなく、横浜で行われたBC級裁判を扱う。「私は貝になりたい」もBC級裁判で死刑を宣告された男の実話を元にしている。

しかしこの映画は被告の岡田資中将が名古屋を空爆した米兵を捕らえて斬首により処刑した事に関する裁判を描いている。太平洋戦争後の軍事裁判で珍しく弁護側の議論が尽くされた、興味深い判例だった。原作は大岡昇平の小説「ながい旅」である。

 

 

あらすじ

1948年3月、B級戦犯として巣鴨拘置所に勾留された東海軍司令官・岡田資(たすく)中将(藤田まこと)の裁判が開始された。

岡田中将とその部下は、墜落により脱出したアメリカの爆撃機搭乗員に対して裁判を行わずに斬首刑を執行したことにより起訴されていた。陸軍法務部の証言を盾に検察側はこれは殺人だと主張するが、弁護側は裁判が出来なかったのは「空襲下の非常事態のせいであり、名古屋空襲自体が一般人を殺戮した戦争犯罪である。従って搭乗員は国際法に違反た犯罪者である」と主張した。岡田は無罪を勝ち取るのでなく、責任者として部下を助け、自分は死刑になるつもりで戦っていたので、この裁判をあえて「法戦」と名付けた。

法戦には法律家であるフェザーストン弁護士(ロバート・レッサー)の並々ならぬ支援が必要だった。かつての敵国において、フェザーストンは部下の身を慮る岡田の気持ちを察して、強い調子で弁護をする。

一方、バーネット検事(フレッド・マックィーン)は岡田の心情を深く理解しながらも、立場として追及の手を緩めることは無かった。

やがて結審を迎え、判事から判決が岡田の絞首刑が申し渡される。部下は結局懲役刑にとどまった。

処刑の日、監視兵に連れられ岡田中将は、「御機嫌よう…」と呟いて、刑場の露と消えた。

雑感

何故、岡田資だけが有名なのか不思議だった。高級将校には海外派遣経験を持ち、コミュニケーション能力の高い人は大勢いただろうに。A級裁判が見せしめのショーだったのに対して、BC級裁判には法律を理解している、まともな検事、弁護士、判事が参加していたと言うことか。「私は貝になりたい」は、BC級裁判を描いた名作だが、それだけで連合軍が常に一方的な裁判を行ったというのは誤りのようだ。掘り下げたら、他にもこんな判例はあるのではないか。

冒頭からナレーターの竹野内豊が酷かった。ドキュメンタリー風の演出ならば、アナウンサーを使う方法もあった。

裁判映画は低予算で作られている。富司純子(主人公の妻役)とわずかしか出番の無いゲスト俳優を除いて、出演者は無名の新人俳優を多用している。そして何より主演の藤田まことの生き様を見せつけるような映画だった。

藤田まことはこの映画の出演後、映画「ラストゲーム最後の早慶戦」、ドラマ「必殺仕事人2009」に出演し、さらにTBSの大ヒットドラマ「JIN-仁」の出演を楽しみにしていたが、残念ながらガンで亡くなる。
田中好子も被告側の証人役でちょっとだけ出てきたが、彼女も闘病中の作品であり、遺作となった。

スタッフ

監督:小泉堯史
総合プロデュース:原正人
エグゼクティブスーパーバイザー:角川歴彦
脚本:小泉堯史、ロジャー・パルバース
撮影:上田正治、北澤弘之

 

キャスト

藤田まこと 岡田資
ロバート・レッサー フェザーストン主任弁護人
フレッド・マックィーン バーネット主任検察官
リチャード・ニール ラップ裁判委員長

富司純子 岡田温子
中山佳織 岡田達子
加藤隆之 岡田陽
町田秀実:西村雅彦
守部和子:蒼井優
水谷愛子:田中好子(本作が遺作映画)
相原伍長:頭師佳孝

竹野内豊 ナレーション

 

明日への遺言 2008 日本 アスミック・エース配給 東京裁判の陰に隠れた横浜BC級裁判

投稿ナビゲーション