「ジョージア・オン・マイ・マインド」の作曲家であり早世したジャズ・コルネット奏者ビックス・バイダーベックにインスパイヤされて書かれた、ドロシー・ベーカーの同名小説を「チャンピオン」のカール・フォアマンエドモンド・H・ノースが脚色し、マイケル・カーティスが監督した音楽映画

主演は「三人の妻への手紙」のカーク・ダグラス
共演は実質ヒロインのドリス・デイ、ホギー・カーマイケル、妻役のローレン・バコール。
吹替のトランペットは、ハリー・ジェームズが演奏している。白黒映画。

 

あらすじ

リックは早くして両親を亡くし、姉に各地を転々としながら育てられた。彼には音楽の才能があり、教会のオルガンを聴いただけで弾きこなした。しかし彼にクラシック音楽は向いていなかった。

黒人トランペッターであるアート・ハザードは、彼の演奏に熱心に耳を傾けるリック少年に手ほどきを与えてやった。
数年後、少年はプロのトランペッターに成長して楽団に入り、ピアニストの「スモーク」・ウィロビーと知り合う。女性歌手ジョー・ジョーダンは、リックを悪からず思うようになる。

若いリックは、当時のダンス・ミュージックばかり演奏する楽団からスモークとともに飛び出して、全国のバンドを渡り歩いたが、スモークは巡業生活に疲れて田舎へ帰り、リックは単身ニューヨークに行く。
そこでリックは歌手として大成していたジョーに再会する。いまだに彼を愛していた彼女の紹介で有名なモリソン楽団にソリストとして迎えられる。
ジョーの愛情と裏腹に、リックは彼女の友人で裕福なエミー・ノースと恋に落ちてしまい、ジョーの反対をよそに二人は結婚する。
その頃リックは、楽団の仕事を済ませた後に自由なジャム・セッションをして夜明けまでトランペットを吹きまくっていた。一方、エミーは自分探しのため昼間、大学に通っていた。生活時間が全く重ならない二人の間にやがて隙間風が吹く。

傷付け合う生活に疲れたリックが、昼から酒を煽っていると、アート・ハザードが様子を見に来る。昨日スモークからアートが解雇されると聞かされていたリックはアートに対して思わず、もうあなたの面倒を見ていられないと噛み付いてしまう。悲しそうな顔をしてその場から立ち去るアートは、直後に交通事故にあって亡くなる。黒人ばかりになった、アートの葬儀でリックはトランペットで黒人霊歌を切々と吹く。
その後、エミーの主催するパーティーをすっぽかしたリックは、エミーと大喧嘩してついに破局を迎える・・・。

雑感

現役時代にルイ・アームストロングの好敵手であり、メロディを重んじたジャズ・バラードやクール・ジャズの創始者として知られるビックス・バイダーベックの人生を基に原作は描かれたと言うが、この映画にはフィクションが多くて伝記映画と言えない。
まず母親は早死にせず彼はアイオワで高校まで行っている。アル中になり肺炎で死んだのは合っているが、最後は自宅で急死した。
原作ではスモーク役と歌手のジョー役は、黒人だったそうだ。
また時代背景をビックスの現役時代(1924年から1931年まで)から現代(1949年当時)に移したため、演奏しているジャズのスタイルがビックスとそれと比べて、ディキシーランド、ニューオーリンズからスウィングへと大きく変わってしまった。楽器もコルネットからトランペットに変わった。

以上はこの映画を批判する側の意見である。実際マイケル・カーティス監督と主演カーク・ダグラスはサッドエンドを望んだが、製作総指揮であるワーナーの社長ジャック・ワーナーがハッピーエンドに拘ったそうだ。

しかしスモーク役のホーギー・カーマイケルは、実際にビックスと親友であったことから、製作中にカーク・ダグラスにビックスの人となりを教えたそうだ。監督はホーギー・カーマイケルに映画製作終了後に感謝状を送っている。ちなみにビング・クロスビーもビックスの印象は深く、共演して学ぶことが多かったと言っている。

ラスト・シーンは印象的だった。ジョーが歌っていて間奏を迎えた瞬間、ジョーとリックに見守られてリックは朗々とトランペットを吹くのだ。
実はリックは既に亡くなっていてジョーとスモークがリックの幻を見ていると考えると、スッキリする。

細々とした問題よりもこの映画は、ドリス・デイの歌とハリー・ジェームスのトランペットを楽しむ映画だろう。

ドリス・デイは人気歌手から、映画界入りして第四作目だった。マイケル・カーティス監督との組み合わせは三作目。監督は彼女の変化を見ていて、ただの歌手でなくどんどん演技も上手くなると気づいた。
しかしカーク・ダグラスドリス・デイの未来の夫マーティン・メルチャー(後にドリス・デイ映画のプロデューサ二なり、死後ドリスの資金を使い込んでいたことがわかると金銭トラブルがあって、カーク・ダグラスローレン・バコールが浮気していた頃だったので二人は仲が良かったが、ドリス・デイだけ二人に疎外されて淋しく大物俳優たちの洗礼を受けた。
しかし映画ファンにとっては三人が同じフレームに入ることだけで幸せなのだ。ジョーがリックの部屋に浮気を怒鳴り込みに行くと、彼の後ろからシャツ姿のエミーが現れる修羅場のシーンは、後から考えたら奇蹟のスリーショットだった。

ハリー・ジェームスは、ドリス・デイに気があったから誠心誠意で演奏していた。そのおかげで二人が中心になって作ったサウンドトラック盤は、当時の売上一位を獲得したそうだ。

なお、夫がいるのに女性画家にエイミーをパリに連れて行かれるのは、二人がレズビアンであることの隠喩である。リックが酒に溺れる理由の一つにその問題もあったと思われる。

スタッフ

監督  マイケル・カーティズ
製作  ジェリー・ウォルド
脚色  カール・フォアマン、エドモンド・H・ノース
原作  ドロシー・ベーカー
撮影  テッド・マッコード
音楽監督  レイ・ハインドーフハリー・ジェームス

キャスト

リック・マーティン  カーク・ダグラス
エイミー・ノース(富裕な女)  ローレン・バコール
ジョー・ジョーダン(歌手)  ドリス・デイ
語り手、スモーク・ウィラビー(ピアニスト)  ホギー・カーマイケル
アート・ハザード(黒人トランペッター)  ファノ・ヘルナンデス
フィル・モリソン(バンド・リーダー)  ジェローム・コウアン
マージ・マーティン(姉)  メアリー・ベス・ヒューズ
ガルバ(クラブ・オーナー)  ネスター・ペイヴァ
少年期のリック  オーリイ・リンドグレン
ジャック・チャンドラー  ウォルター・リード
ウィーヴァー医師  アレックス・ゲリー

ネタばれ

離婚後のリックは、ついにアルコール中毒に陥り、楽団でも精彩を欠き解雇を申し渡される。ジョーとの収録でもハイトーンが出ずに録音を止めてしまう。彼は、自分自身に怒ってしまいトランペットを叩き壊す。
彼はふと楽器屋を覗き込み、壊れたトランペットを見つけ、75セントで買う。しかし直後にタクシーと接触事故を起こしかけて昏睡する。
リックはアルコール中毒回復施設に収容されたが、スモークが見舞いに来た時には肺炎を起こしていた。早速、救急車によって病院に担ぎ込まれる。

それからリックは危機を脱して、ジョーの支えにより回復したのだと「語り手」のスモークは結ぶ。

 

 

 

 

 

 

情熱の狂想曲(ラプソディー) Young Man with a Horn 1949 ワーナーブラザーズ製作・配給 セントラル映画社国内配給(1951)ドリス・デイ本邦初公開

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