「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」など、実話映画の名作を手掛けてきた巨匠クリント・イーストウッドの監督第40作。
1996年アトランタ五輪で起きた爆破テロの後のFBIとマスコミの迷走の真実を描く。
主演をポール・ウォルター・ハウザーが務め、サム・ロックウェルキャシー・ベイツオリヴィア・ワイルドが共演した。

あらすじ

1986年、中小企業庁アトランタ事務所に勤めるワトソン・ブライアント弁護士は、太った備品係リチャード・ジュエルと親しくなった。リチャードは、保安官になることにあこがれ、刑法を勉強して、また射撃を得意としていた。しかし正義感が時には行きすぎて失敗する癖があった。
やがて転職すると言ってリチャードは去って行く。ワトソンは支度金に百ドルを貸し与え、下衆な役人になるなと助言する。

1996年、郡副保安官として勤めていたリチャードはトラブルを起こし退職し、母ボビの家に寄寓して、今はピードモント大学で警備員として勤めていた。しかし、寮での飲酒取り締まりで学生に乱暴してしまい、学長からクビを宣告される。
リチャードは、アトランタ・オリンピックの間ずっとコンサートの行われる公園の警備員に採用される。7月27日の真夜中、公園のベンチの下でリチャードはバックパックを発見して、警官たちは不審物として報告する。そのころ、「爆弾が公園で30分後に爆発する」と言う予告電話が掛かった。爆発物処理班がバックパックに爆弾が入っていることを確認し、公園のコンサートに集まった人々の避難を開始した。しかし直後に爆発が起きて死亡者が二名出る大惨事となった。
翌朝、第一発見者のリチャードは、犠牲者を最小限に抑えた英雄としてテレビに取材され、本の出版まで打診される。そこで今は個人で弁護士事務所を開いているワトソンに電話して、出版の契約についてお願いする。

ところが、ピードモント大学学長が、かつて警備員をしていたリチャードが怪しいとFBIに通報する。事件当時現場にいながら未然に防げなかった、ショウ捜査官はその報告に飛び付き、リチャードの前科を調べ上げる。
プロファイリングによってFBIは、犯人像を白人貧困層と見ていた。リチャードはそれに偶然一致するために疑われる。ショウ捜査官は女性記者キャシーにリチャードの情報をリークする。キャシーの勤める新聞アトランタ・ジャーナルの一面にリチャードの疑惑が実名で挙げられる。CNN等のメディアも後追いして、英雄の自作自演かと全米で報じた。
FBIは、偽の理由でリチャードをアトランタ支局に連れていき尋問を始める。リチャードは騙されているのに気付き、ワトソンに弁護を求める。ワトソンは引き受けたものの、後からリチャードの犯罪歴が出てきて頭を抱える。
FBIは母ボビの家を家宅捜索する。リチャードはライフルを母の自宅に隠していた。しかもワトソンは法執行官としての仲間意識があるから、FBIに協力的なのだ。
するとワトソンの助手ナディアが訪れ小声で、ワトソンの事務所にもボビの家にも盗聴器が仕掛けられたと告げる。またリチャードの親友とリチャードが同性愛関係にあるとFBIは見なした。母親の涙を見たリチャードは遂にFBIと戦う覚悟を決める・・・。

雑感

実話である冤罪映画として、まずまずの出来だ。
FBIが、太った三十代白人独身男性を見れば真っ先に爆弾魔だと疑うのは、南部ジョージア州ならではの幼稚なミスだ。そのおかげで新聞社も大学までリチャードに訴えられて毟り取られた。

この映画はクリント・イーストウッド作品として興業成績も評価も低かった。それはオリビア・ワイルドが演じた新聞記者キャシー・スラッグス(実名)が枕営業でFBIから情報を取ってスクープを出したかのような描写があるからだ。

そのことについて新聞社が怒っただけで、裁判になっていないようだ。実際のところは誰もわからない。キャシー・スラッグスは、世紀の大誤報の数年後に亡くなっている。
しかも女性を性的に扱うと今時、女性から総スカンを喰らい、進歩的な男性もそんな映画を見なくなる。エンターテイメントとしては致命傷だった。大体内実をばらすFBIがバカだろう。世の批判を受けるべきはFBIであり、制作陣は女性に対する表現にもう少し注意すべきだった。

スタッフ

監督、製作  クリント・イーストウッド
脚本  ビリー・レイ
製作  ティム・ムーア、ジェシカ・マイヤー、ケビン・ミッシャー、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・デイビソン、ジョナ・ヒル
原案  マリー・ブレナー
音楽  アルトゥロ・サンドバル
撮影  イヴ・ベランジェ

キャスト

リチャード・ジュエル  ポール・ウォルター・ハウザー
弁護士ワトソン・ブライアント  サム・ロックウェル
母ボビ・ジュエル  キャシー・ベイツ
トム・ショウ捜査官  ジョン・ハム
新聞記者キャシー・スクラッグス  オリビア・ワイルド

ネタばれ

リチャードは自ら嘘発見器を受け、証言に嘘がないことを証言する。一方、ボビは会見して、ビル・クリントン大統領に息子の無実を訴える。キャシーも、実際に現場を歩き、リチャードが犯人でないことに気付く。
リチャードとワトソン同席の元でFBIの尋問を受ける。リチャードはショウ捜査官を逆に「自分が犯人だと言う証拠は何か」と問い詰め、「今後警備員は爆弾を見つけても通報しないだろう」と言い放つ。
6年後、別の男がアトランタの爆破事件の犯行を自白した。
2007年、リチャード・ジュエルは持病の心臓病で44歳の若さで亡くなる。

 

リチャード・ジュエル Richard Jewell 2019 マルパソ・プロ製作 ワーナー・ブラザーズ配給 イーストウッド監督の冤罪映画

投稿ナビゲーション