CDの音が機器や環境によって違いが出てくるのは、フラットアンプ以外にジッター(時間軸のズレ)がある。では同じ音源から作ったCD音源とハイレゾ音源はどう違うか?
Nmode社のX-CD3というCDプレイヤーは、Soulnote、Fundamental の鈴木哲氏(エンジニア兼ギタリスト)が開発に参加している。このプレイヤーは、内蔵DACで通常CDのみでなく、MQA-CDも聴くことができる。これを使って比較してみよう。
そこで「X-CD3」をヘッドホンアンプとヘッドホンで聴いてみた。ユニバーサル社の音源だから、UHQーCDとMQA-CDの聴き比べである。そのレポートを記録しておく。
AURORA SOUND社の ヘッドホンアンプHEADAの目盛6に固定。ヘッドホンは一番ドンシャリな音を出す開放型のウニば(東北パイオニア製)を使う。かなりきつい音を出すHPだ。HPケーブルはパイオニアの純正バランスケーブル。
結論から言うと、一般にUHQ-CDは安価CDより優れているが、MQA-CDの音の方が遥かに良かったし、好みだった。ダイナミック・レンジが広く、低音がやや締まり、クレッシェンドでも音が次第に大きくなる様子がわかる。暗騒音も小さい。
簡単に言えば、UHQ-CDは派手だが薄い音。MQA-CDは真面目で正確な音。
さらに音を良くするためにはCDプレイヤーの電源、クロックの導入を図るのが良いだろう。それらは、Nmode 社から発売されている。
MQAとFLAC、DSDの違いも機会があればレポートしたい。
しかし元の録音が良くないものについては、UHQ-CD、 MQA-CDのどちらも音は良くならない。レコードで聞いた方が滑らかで良いかもしれない。
これはヘッドホンで聞いた立場の意見であり、スピーカーで鳴らせば、聴く人によってはあまり差異がわからないだろう。そういう人にはMP3で十分。
では、一曲ずつ聴く。
ジョン・コルトレーン「セイ・イット」
(ジャイアント・ステップス所収)
SHMーCDの音
1.ダイナミックレンジが狭い。すぐ飽和してしまう。
2.立ち上がりが実際よりも早すぎる、管楽器は吹き始めと最大音の間隔は相当あるはずなのに、すぐ大きくなる。
3.ダブルベースがブヨンブヨンと鳴る
4.メインの音(サックス)が大きく聞こえる
5.バックノイズ、暗騒音がうるさい
MQA-CDの音
1.ダイナミックレンジが広い。
2.立ち上がりに「間」がある。ゆっくりと大きくなるのがわかる。
3.ダブルベースがボンボンと鳴る。ブヨンブヨンよりマシ。
4.メインの音が小さく聞こえる。もう少し大きくしたい。
5.バックノイズ、暗騒音が小さい。
このうち、1、4、5は主観的な問題だが、2、3は客観的な音質の違いである。
ゲッツ・ジルベルト「イパネマの娘」
これも「セイ・イット」と同じ。
CDのジルベルト(夫)のボーカルがうるさく聞こえる。
マイルス・デイビス「ソー・ホワット」
CD、MQA共にミュート・トランペットがうるさい。ヘッドホン向きではない。音場はMQAの方が広い。
オスカー・ピーターソン・トリオ「酒とバラの日々」
(プリーズ・リクエスト)
MQAから先に聞いてみる。ともにピーターソンのピアノの音は優しい。CDとMQAであまり違わない。ドラムス特にシンバルの余韻はMQAの方が響いている。
アニタ・オデイ「オールド・デビル・ムーン」
(アニタ・シングス・モスト)
古い録音のため、ともにアニタ・オデイのボーカルでもうるさく聞こえるところあり。サ行はCDではサチっている。MQAでもサ行は目立つが、あまり苦にならない。それよりベースのブヨンブヨンという音に気持ち悪くなる。
バド・パウェル「クレオパトラの夢」
通常のCDプレイヤーで聞くこの曲のバド・パウエルは、うるさくなる限界、すなわちピアノの限界の音だ。ところが、CDもMQAはともに静かな感じ。ただし右手に力が入るところは、CDでもMQAでもキラキラしてる。
ジミー・スミス「ザ・キャット」
これはCDでもうるさかった。特にトランペットの合奏とオルガン。ヘッドホンには向かない。
MQAでもかなりうるさかった。