デンマークとアメリカの低予算合作SF映画。B級ではなく、本物のC級映画だ。
国連宇宙軍の五人の宇宙飛行士を乗せた探査船エクスプローラ12号が天王星探検のために出発する。ようやく天王星(太陽系第七惑星)に着陸しようとするが一瞬気を失い・・・。
監督はシドニー・ピンク、脚本はイブ・メルキオール(デンマーク人)は「原始獣レプティリカス」のコンビ。
原案はシドニー・ピンクとクレジットされているが、少し読めばレイ・ブラッドベリの「第三探検隊」(連作短編集「火星年代記」所収第六短編)に似ているとわかる。また同様なテーマに関する小説「ソラリス」がポーランド人スタニスワフ・レムにより書かれたのは同じ1961年なので、1972年ソ連SF映画「惑星ソラリス」と直接、関係はない。
主演は艦長役カール・オットセンと副艦長役ジョン・エイガー、ヒロインはアン・スミルナー。ジョン・エイガー以外のキャストはデンマーク人だ。スタジオは全てデンマークで収録し、アメリカで特殊撮影の一部を撮り直している。

あらすじ

太陽系惑星調査を進めて土星まで組織的に探査して生物のいないことを確かめた国連宇宙軍は、2001年に探査船エクスプローラ12号で五人の宇宙飛行士を天王星へ派遣した。艦長はエリック、隊員は副長ダン、放射線担当の若手将校カール、通信長バリー、機関長のスヴェンドだ。
道中、女との惚気話で盛り上がった五人のクルーは天王星まで後10日となったところで地球からのミッションの封を開ける。天王星から謎の放射線が発射されているのでその解明して、それから生物不存在の確認をするのが当面の目的だ。

着陸の直前、乗組員全員が気を失う。すぐ気が付いたが、何やら怪しい。着陸して外の様子を見ると、何と植物が生えている。スヴェントは子供の頃遊んだ森だと気づく。一同はそんなバカなという顔をしている。森の向こうには何かのバリアがある。カールはそこに手を挟んで凍傷になり、バリーに治療してもらう。
夜、エリック艦長が子供の頃を思い出して、風車があってイングリッドという可愛い娘がいたと回想すると、風車が現れ、その中に突然憧れのイングリッドが成熟した女性となって現れる。どうやらここは誰かの回想を現実化しさせるらしい。エリックはロケットに一旦全員退避させる。

翌日も艦外活動をすると、森の向こうに壁があるのを発見する。壁の向こうを宇宙服を着込んだエリック、ダン、新人カールの将校トリオが探検する。壁を超えると、天王星本来の極寒の世界があった。洞窟の中に入ると、サイクロプスが現れる。それはカールが子供の頃怖かったものを思い出したために出現したようだ。レーザー光線を一つ目に当てると怪獣は苦しんでいる。その隙に彼らは無事逃げ出した。

翌日も三人は壁の向こうを探検するが、巨大タランチュラに襲われ、エリックが逃走中に負傷する。昏睡するエリックの看護をイングリッドに頼み、残るメンバーはそれぞれの思い出の世界に浸った。
三日後、エリックは復帰、召集したので、ダンら他のメンバーも渋々仕事に戻る。明日中に敵を倒して天王星から飛び立たねば地球に戻れなくなる。彼らは今晩、鍛冶屋に集まり、ロケット燃料を用いた強力なアセチレンバーナーを作る。完成後、彼らは順番に武器を見守ることにしてカールが最初の当番になるが、地球に残してきた美女アシュラの膝枕で寝てしまい、その間にリゼにバーナーを取り替えられる(何故武器をロケットの金庫に隠さないのか)。
翌日、機関長スヴェントを脱出用に一人ロケットに残して、残る四人は最後の敵を探しに洞窟に入る。そこに巨大な脳味噌に目玉が一つ付いた化け物がいた。カールはその怪獣に見つめられると、何故かバーナーを撃たず持ったまま敵に飲み込まれる。

バーナーを失ったためエリックは高温による攻撃を諦めたが、地下温度が外表よりはるかに高いことに気づき、怪獣が低温を嫌っているのではないかと思い、敵に向けて液体酸素を放射する。見る見る間に怪獣は凍ってしまう。塊になったところでレーザー銃を撃って破壊する。
ロケットに戻る途中、イングリッドが倒れていたので、ロケットに収容して離陸する。しかし飛び立つと同時にイングリッドは霞のように消えてしまった。

雑感

短い77分版で鑑賞した。いささかこれはカットしすぎだと思った。また最後の敵はもはやイボ痔に悩む汚い尻にしか見えない。
1948年に書かれたレイ・ブラッドベリ作品「第三探検隊」は火星を舞台にしていたが、1962年に今さら火星ネタは飽きていたのだろう。そこで木星、土星を通り越して、天王星まで話を大きくしてしまった。
でも音速有人飛行で天王星まで飛んでいくのに、天王星までの平均距離30億km÷音速1200km =2500000時間≒285年掛かる。

クルーは機関長スヴェントを除きみんな独身で、いい年で恋愛経験のないエリック艦長はどうも童貞らしいのが笑える。
デンマーク美人は何人か出て来たが、一番色っぽかったのはイングリッド役のアン・スミルナー
一番可愛いのは横山道代にも司葉子や白川由美にも似たリゼ(ウラ・モリッツ)だった。ダンが遊んだドイツの生物学専攻大学生でカールに紹介してやると言っていた娘だったが、悲しいかな、演技はド下手だった。

AIP(アメリカ・インターナショナル・ピクチャー)が買ってアメリカで配給するに当たり、怪獣サイクロプスの特殊効果に不満を感じて、アメリカの特撮プロに頼んでストップモーション・アニメを作り直してもらった。また咆哮は東宝映画+円谷英二がアメリカに輸出された「ラドン」のものを加工したのだそうだ。

スタッフ

製作・監督 シドニー W. ピンク
原案 シドニー W. ピンク (レイ・ブラッドベリ)
脚本 イブ・メルキオール、シドニー W. ピンク
音楽 ポール・ダンラップ
撮影 ジャック・グリーンハルフ
特殊撮影 ロニー・シェメル
特殊効果 ジム・ダンフォース、ワー・チャン
視覚効果 ボルグ・ハンベルグ、クロッホ
主題歌 「第七惑星の謎」オットー・ブランデンブルク

キャスト

ダン・グラハム大尉 ジョン・エイガー
エリック・ニルソン艦長 カール・オットセン
カール・ハインリッヒ中尉 ピーター・モンク
乗組員バリー・オサリバン オヴ・スプルージュ
乗組員スヴェント・ヴィルトオフト ルイス・メイヒ=レナード
イングリッド アン・スミルナー
グレタ グレタ・ティッセン
ウルスラ ミミ・ハインリッヒ
リゼ ウラ・モリッツ
脳怪獣 (声)ジュリアン・バートン

SF第7惑星の謎 Journey to the Seventh Planet 1961 デンマーク+米シネマジック製作 AIP配給

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