メキシコの牧場を舞台にした子供向け闘牛映画だが、脚本がロバート・リッチ名義のダルトン・トランボ(「ローマの休日」原案)が担当している。
トランボは赤狩りで逮捕収監されて出獄後は、家族とともにメキシコに移り住んでいた。
監督はアーヴィング・ラバー。撮影は、「赤い靴」「黒百合」のジャック・カーディフ。
あらすじ
牛飼いの息子レオは母の葬式がすんだ晩に生まれた仔牛(生後すぐ母牛を亡くしている)を、ジプシーにちなみヒタノと名付けて、精魂を込めて育てる。
姉マリアにヒタノの所有者は牧場主ドン・アレハンドロだから烙印を押さねばならぬと聞かされ、学校の先生に頼んで牧場主に手紙を書いてもらう。ヒタノは烙印を押されてしまったが、アレハンドロはヒタノの勇敢さを気に入り、レオに与えると手紙を書いた。
ヒタノはレオの元で猛々しく育ち、闘牛検定試験でも勇敢さを見せる。だがカーレーサーでもある牧場主は事故で亡くなる。レオは彼からの手紙をなくしたため、ヒタノの烙印から所有者は牧場主と見なされ、メキシコシティーの闘牛場へ送られることになる。
その晩、少年はヒタノと山中に逃げ込む。襲いかかってきたピューマを、ヒタノは角で突き殺すが、翌朝父に見つかってヒタノは連れて行かれる。
レオは、ヒタノを救おうとメキシコシティーに向かう。先生から聞いていた大統領への直訴を彼は決行した。大統領は彼の言い分を聞いてくれて、手紙を書いて渡してくれる。
だが少年が闘牛場に着いたとき、ヒタノと闘牛士リヴェラの試合は既に始まっていた。
レオが悲嘆のくれる瞬間、13年ぶりの奇跡が起きる。
雑感
アメリカ共産党員だったおかげで刑務所に入れられたダルトン・トランボが脚本を書いているから少しビターな話だろうと思い、「仔鹿物語」の闘牛版だと早合点してしまう。しかし最後にはどんでん返しがあり、涙でグチョグチョになる作品だ。
ロバート・リッチ名義でトランボがアカデミー原案賞を取りながら、大赤字で配給会社RKOは製作会社キング・ブラザーズから配給方針の誤りを裁判所に訴えられたそうだ。翌年早々RKOは倒産する。
大人向けの「血と砂」と違って、当時の米国人はあまり闘牛を子供に見せたくなかったのだろう。
これを現代にリバイバルさせたら、ヒスパニックが見てくれるかも知れない。
ちなみに町山説だと、決して敗れないヒタノ=トランボだそうだ。
個人的には、トランボの脚本より、ジャック・カーディフの撮影技術の美しさに惹かれる。
スタッフ・キャスト
監督 アーヴィング・ラパー
製作 モーリス・キング 、 フランク・キング
原案 ロバート・リッチ(ダルトン・トランボ) アカデミー原案賞受賞(二度目) 1975年にオスカーのレプリカを送られる。
脚本 ハリー・フランクリン 、 メリル・G・ホワイト 、 ダルトン・トランボ
撮影 ジャック・カーディフ
音楽 ヴィクター・ヤング
配役
少年レオナルド マイケル・レイ
父ラファエル・ロシージョ ロドルフォ・ホジョス
姉マリア エルザ・カルデナス
牧場主ドン・アレハンドロ カルロス・ナヴァロ
マリオン・ランドール ジョイ・ランシング
闘牛士リヴェラ フェルミン・リヴェラ