(○★)
1945年11月に亡くなったアメリカの作曲家ジェローム・カーンの半生を彼の作った名曲と共にふりかえる伝記ミュージカル映画
ガイ・ボルトンの原作をマイルズ・コノリージーン・ホロウェイが共同して脚色してリチャード・ウォーフが監督した。
音楽はジェローム・カーンの曲ばかり使っている。
(演出、脚本ともに協力者は多数)

 

主演はロバート・ウォーカー
共演はヴァン・ヘフリン、ジュディ・ガーランド、ドロシー・パトリック、ルシル・ブレマー
他に劇中ミュージカルの中でMGMを代表する俳優たちがジェローム・カーンの歌を歌っている。

雑感

本作はニューヨークの音楽出版社が集まった街ティン・パン・アレイに集った作曲家伝記映画の一つである。
彼らの実際の生涯にフィクションを加えて、より甘辛に仕立てているのがこの手の映画の特徴である。

ワーナー・ブラザース社が1946年7月公開したコール・ポーターの(存命中に作ったためフィクションだらけの)伝記ミュージカル映画「夜も昼も」(監督:マイケル・カーティズ)がヒットしたので、MGMも柳の下のドジョウを狙って1947年1月に公開した。
この映画の興行的成功の後、MGMは1948年からロレンツ・ハート&リチャード・ロジャースの伝記「ワーズ&ミュージック」(監督:ノーマン・タウログ)など数本を撮影する。

この映画は、ドラマとしては起伏の薄いものだが、1946年当時のMGM専属スターを集めたミュージカル・ガラ・コンサートとして十分に愉しめる。
1951年に「ショウ・ボート」の三度目の映画化が為されたとき、ここでも歌っていたキャサリン・グレイスンが再び歌声を聞かせてくれる。

なお、戦後すぐの上映なので国内未公開である。
邦題はテレビ公開やDVDになるたびに適当に変わっているが、鶴田浩二主演、家代巳代治監督の特攻隊映画「雲ながるる果てに」(1953)の文字を変えただけの名称を付けられることが一般的だ。
DVD鑑賞だが、MGMがすでに著作権を放棄しているため、豪華出演者なのに色が汚いのが残念。

 

キャスト

ロバート・ウォーカー ジェローム・カーン
ヴァン・へフリン ジェイムズ・へスラー
ルシル・ブレマー サリー・へスラー
ジョーン・ウェルズ  若き日のサリー
ジュディ・ガーランド マリリン・ミラー
ドロシー・パトリック エヴァ・カーン
ポール・ラングトン オスカー・ハマーシュタイン2世
メアリー・ナッシュ  家政婦ミュラー
ポール・マキシー ビクター・ハーバート医師
ハリー・ヘイドン  ルシタニア号事件で亡くなるプロデューサー、チャールズ・フローマン

(ミュージカル)
ジューン・アリスン 歌手
キャサリン・グレイスン  マグノリア・ホークス
リナ・ホーン  ジュリー・ラヴァーン
トニー・マーティン  ゲイロード・ラヴェナル
ヴァージニア・オブライエン エリー・メイ
ダイナ・ショア  歌手
アンジェラ・ランズベリー  ロンドンの歌手
レイ・マクドナルド  歌手兼ダンサー
ゴワー・チャンピオン ダンサー
シド・チャリシー  ダンサー
ヴァン・ジョンソン  踊る指揮者
フランク・シナトラ  本人
エスター・ウィリアムス  カメオ出演

スタッフ

監督、演出  リチャード・ウォーフ、(アンクレジット)バスビー・バークレイ、ヘンリー・コスタ、ヴィンセント・ミネリ(ジュディ・ガーランドのシーン)、ジョージ・シドニー(フランク・シナトラの「オール・マン・リバー」の演出)
脚本 マイルズ・コノリー、ジーン・ホロウェイ、ジョージ・ウェルズ、(アンクレジット)フレッド・フィンクルホッフ、ジョン・リー・マーイン、ルミエル・エイヤース、ハンス・ウィルハイム
原作  ガイ・ボルトン
製作 アーサー・フリード
撮影 ジョージ・J・フォルシー、ハリー・ストラドリン
音楽  ジェローム・カーン 

演奏される音楽

“Cotton Blossom” – MGMオーケストラ演奏
“Where’s the Mate for Me” – トニー・マーティン
“Make Believe” – キャサリン・グレイスンとトニー・マーティン
“Life Upon the Wicked Stage” – ヴァージニア・オブライエン
“Can’t Help Lovin’ Dat Man” – リナ・ホーン
「オール・マン・リバー」 – キャレブ・パーソン
「カルーア」- MGMオーケストラ演奏
“How’d You Like to Spoon with Me” – アンジェラ・ランズベリー
“They Didn’t Believe Me” – ダイナ・ショア
「雲流るるはてに」- ジューン・アリスンとレイ・マクドナルド
“Leave It to Jane” – ジューン・アリスンとレイ・マクドナルド
“Cleopatterer” – ジューン・アリスンとレイ・マクドナルド
“Leave It to Jane” (Reprise) – ジューン・アリスンとレイ・マクドナルド
“Look for the Silver Lining” – ジュディ・ガーランド
“Sunny” – ジュディ・ガーランド
“Who?” – ジュディ・ガーランド
“One More Dance” – ルシル・ブレマー (吹替 トルーディ・アーウィン)
“I Won’t Dance” -ヴァン・ジョンソンとルシル・ブレマー (吹替 トルーディ・アーウィン)
“She Didn’t Say Yes” – ザ・ワイルド・トウィンズ
「煙が目にしみる」 – シド・チャリシーとゴワー・チャンピオン
「想い出のパリ」 – ダイナ・ショア
“The Land Where the Good Songs Go” – ルシル・ブレマー (吹替 トルーディ・アーウィン)
「イエスタデイズ」 – MGMオーケストラ演奏
“Long Ago (and Far Away)” – キャサリン・グレイスン
“A Fine Romance” – ヴァージニア・オブライエン
“All the Things You Are” – トニー・マーチン
“Why Was I Born?” – リナ・ホーン
「オール・マン・リヴァー」(フィナーレ) – フランク・シナトラ

ストーリー

1927年3月15日、歴史に残るミュージカル舞台「ショウ・ボート」が開幕した。帰りのタクシーに乗った作曲家ジェローム・カーンは、ふと音楽家を夢見ていた頃を思い出す。

若い頃、作曲家になりたかったジェローム・カーンは、有名なジェイムズ・ヘスラーに編曲を依頼しに訪ねる。娘のサリーが懐くので、ピアノを弾かせてみると、カーンはなかなか良い曲を書くとヘスラーは気付く。しかし、ヘスラーは、当時ブロードウェイで流行っていたロンドンの音楽を学ぶために渡英する。
カーンも、ブロードウェイの興行主が英国の都会的な音楽しか認めないので、ヘスラーの後を追ってをロンドンに移る。
カーンは、ロンドン滞在中、ヘスラーの紹介で作曲家としての仕事が増える。 そして恋人エヴァとも出会う・・・。

アメリカに帰国してからカーンは、英国帰りの作曲家としてブロードウェイでミュージカル・レビューを上演することになり、大成功を収める。そしてエヴァを再びロンドンにプロポーズに行き、ついに二人は結ばれる。
アメリカに再び帰ってきたカーンは、ヘスラーの娘サリーのために作った曲をミュージカルで歌ってもらうつもりだった。しかし、プロデューサーは、その曲を大女優マリリン・ミラーに歌わせる、サリーは、実力不足を思い知らされ、家を飛び出す。
カーンは、死の床にあるヘスラーを安心させようとサリーを探し続けたが、間に合わず、ヘスラーはなくなる。
サリーがメンフィスのクラブで歌手として働いているとの連絡が彼に入る。彼は、クラブに駆け付けると彼女はクラブ歌手として地道に働いていた。サリーは、自分の力でスターの座を勝ち取るつもりだった。
サリーと別れた後、ミシシッピ川で散歩するうちに大きな曲想が湧いてきたのを知る。

そうやって、「ショウ・ボート」を書き終えて、冒頭のタクシーに戻る。
晩年は、ハリウッドに招かれスタジオを見学していると、サリーがミュージカルの歌手として活躍していることを知る。

雲流るるはてに Till the Clouds Roll By 1946 MGM製作 ルーズ・インク配給 – ジェローム・カーンの伝記ミュージカル

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