ヤン・デ・ハルトゥグの原作「ステラ」を名匠キャロル・リードが映画化。主演ウィリアム・ホールデン、ソフィア・ローレンのビッグ・コンビでお送りする戦下のラブロマンス映画。音楽はクラシックの巨匠になるマルコム・アーノルドが自作自演。
 
まず映画を観る前にタグボート(曳航船)について知ってほしい。民間のタグボートは主に、港湾や運河など交通量が多く場所によって浅瀬がある海面で大型船を曳航し誘導する小型船(水先案内人)である。これに対して第二次大戦中の英国の軍用タグボートは、ドーバー海峡などで被弾して自力で運航できなくなった輸送船を曳航したり救助する業務についていた。軍用タグボート船員は自らの命も顧みず日夜呼び出され、必死の救助活動を行っていた。

あらすじ

 
1941年9月、イングランドのとある海軍基地に、米国人デイビッド(ウィリアム・ホールデン)がタグボート船長として派遣された。彼は同僚で旧友のクリス(トレヴァー・ハワード)に再会した。最初はクリスの仕事を見て覚えろと言うことで同行するが、荒波と命を削る激務にすっかり酔って、部下のケーンに笑われてしまう。
クリスの部屋にはステラ(ソフィア・ローレン)という謎めいた雰囲気を持つ女がいた。クリスはステラの過去について語った。ステラはスイス人だが、タグボート船長と結婚するためにウエストポートにきた。しかし彼は戦死した。友人の船長ハルがその部屋を借りてステラと同棲した。ハルは、部屋の合鍵を作ってそれをクリスに渡し、自分が戦死したらステラと暮らしてくれといった。そしてハルが戦死したあとに、クリスは彼女と同棲し、部屋を使っている。死を予想するクリスは合鍵を、親友のデイビッドに託した。
デイビッドはネーデルランド号を指揮することになった。クリスは、ステラと結婚しようと考えていた。しかし緊急出航したクリスは砲撃で上半身を吹っ飛ばされてしまう。
デイビッドがクリスの部屋に住み着いた。米軍が参戦して軍備も増強されることになった。タグボートの武装も現代的なものになろう。デイビッドはステラと結婚する決心をし、合鍵をステラ自身に渡しクリスマスに愛を打ち明けた。
ところがその夜、港は空爆に会う。海上でも戦っていて、デイビッドは出航を命じられる。死を覚悟したデイビッドは出航前にケーンに自分の鍵を託した。
デイビッドのタグボートは被弾し、彼は夜の海に落水してしまう。緊急無電をうけデイビッドが死んだものと思い込んだケーンは、デイビッドの鍵でステラを訪れる。
ところが援助船に救出されたデイビッドも部屋に帰ってくる。ステラの口から出たのは「出ていけ!」という言葉だった。彼女はその足でロンドン行きの列車に乗る。デイビッドは駅にかけつけたが、間にあわなかった。デイビッドは、彼女を迎えにロンドンへ向かう決心をする。

 

 

雑感

 
タグボートに焦点を当てた珍しい戦争映画と思っていたが、最後のシーンを見て、うまいラブストーリーだと知った。
戦争に翻弄されるソフィア・ローレンはいつもの威勢の良さが消えて、おとなしい女を演じている。
 
デビッドがその部屋の主になってから、結婚しようと言い、さらに合鍵をステラに渡す。これでデビッドはもう私を置いて行かないと思い、ステラは明るさを取り戻す。ところがデビッドはクリスマスの戦闘で死ぬと覚悟してケインに鍵を渡してしまう。ケインが訪れた時のステラの絶望は、明るさを取り戻した後だっただけに、大きかった。ケインもステラの表情を見て戸惑ったと思う。そこへ死んだはずのデビッドが生きて帰ってきた。ケインはまずいところへ来ちゃったと思っただろう。ステラは初めて本音を出し、もうこんな生活は嫌だとロンドンへ去ってしまう。
これから先の二人がどうなるのかは、視聴者に任されている。

スタッフ・キャスト

 
監督 キャロル・リード
製作 カール・フォアマン
原作 ヤン・デ・ハルトグ
脚本 カール・フォアマン
撮影 オズワルド・モリス
音楽 マルコム・アーノルド (「戦場にかける橋」)
 
配役
デビッド・ロス ウィリアム・ホールデン
ステラ ソフィア・ローレン
クリス トレヴァー・ハワード
ファン・ダム オスカー・ホモルカ
ケイン キーロン・ムーア
ワドロウ バーナード・リー

 

鍵 The Key 1958 イギリス製作 コロンビア配給

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