DVDのジャケット写真をパッと見て誰は分からないだろう。この映画の主演・船越英二だ。相当に減量して撮影に入ったらしい。役者根性を感じた。その点では2014年の塚本晋也監督のリメイクは、とても日本のひもじい思いをしていた兵士の姿とは思えなかった。
レイテ戦の悲惨な現実を描いた大岡昇平原作「野火」を市川崑監督、和田夏十脚本コンビで映画化した。
原作と違い、主人公は歯が抜けたため、「猿喰い」に参加できなかったことになっている。
キネマ旬報ベストテン第2位、脚本賞、主演男優賞受賞。
Synopsis:
太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。駐留軍は補給豊かな米軍の火力に圧倒されていた。田村一等兵は肺病を病み喀血するもので、分隊から病院へ行けと言われ、病院では歩けるものを病人と言わんと言われて追い出される。この繰り返しだった。病院から出てきた田村は近くの草むらでやはり病院から追い出されて行き場のなくなった兵士が屯した。その中に安田という足を腫らしている、しかし老獪な兵士と、永松という若い兵士がいて、話をした。
それからしばらくして、病院は米軍の爆撃を受けて全滅してしまった。草むらにたむろしていた連中は散り散りに逃げた。
教会が見えたので、村に物分かりの良い神父様でもいて、投稿させてもらえないかと思い覗いてみると、誰もいない。いやカップルが海から戻ってきた。食べ物を持っていそうなので、銃を向けると女が叫び声を上げ続ける。これにはたまらないと、お腹を撃つと倒れてまま動かなくなった。夫の方は再び海に逃げた。床下を探すと塩が大量に出てきた。
山中の芋畑で出会った兵士たちの仲間に入れてもらう。日本陸軍は今パロンポンという集結地を目指して撤退中だそうだ。田村も仲間に入れてもらう。
田村は狼煙のように見える煙がトウモロコシ畑で農民が収穫を終えてから草を集めて焼いている野火だと班長さんに教えてもらう。
次第にパロンポンを目指す集団は大きくなり、飢えにより倒れるものも出る。安田と永松を見かけるが、二人はパロンポンを目指しているのでなく、タバコの葉を売って食料に変えて、いずれ米軍に投降するつもりだ。
途中のオルモック街道に米軍が居座り突破するのは困難だった。それでも夜の闇に紛れて侵入すると、敵は戦車を数台出して機銃掃射で班長さん他の仲間たちを次々と殺していく。
田村は運良く生き残れたが、もはや行き先が無くなった。そこで再び安田と永松と出会う。二人も食料が欠乏したので猿を食べていると言う。田村も一口食べると硬くて吐き出すと途端に歯が抜ける。一体この猿肉はどこから手に入れているのだろうか。永松が猿を撃つのをつけると、何と日本人兵士を追っていた。あれは人肉だったのだ。永松は安田に顎で使われて頭に来たので、田村と組んでやっつけたいと申し出る。作戦通り、安田は二人を追って来たが、永松が狙い撃ちをする。永松は安田の肉を食い出した。あまりの永松の姿に、田村は永松を射殺する。
そして米軍の発砲音が響く中、銃を捨てて野火の方に向かって両手を挙げて近づいていく。野火の下には人間らしい農民の暮らしがあると彼は信じているのだ。
Impression:
どんなにひもじくても船越英二に人の良さを感じさせ、悲壮感は似合わない。前半は多少のユーモアを交えて、話は進んでいく。
しかし後半は腹と腹の探り合いで、一つ間違えると自分が食べられる。完全なサバイバル合戦である。田村は三人の中で最も「猿」に近いのだが、安田と永松の仲間割れに乗じて、漁夫の利を得た。
それでも彼のいく末はどこに繋がっているのだろうか。原作だとに帰朝することができるが、すでに狂っていた。
配役ではミッキー・カーチスが適役だった。トニー・カーチスより上手いのではないかw。
芥川也寸志の音楽も心に響いた。
市川崑監督は大映で水を得た鳥のように快進撃を続けた。愛人ともよろしくやっていたはずだが、和田夏十との夫婦コンビは絶好調であった。
Staff/Cast:
監督 市川崑
製作 永田雅一
原作 大岡昇平
脚色 和田夏十
企画 藤井浩明
撮影 小林節雄
音楽 芥川也寸志
美術 柴田篤二
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出演
船越英二 田村
ミッキー・カーチス 兵隊 永松
滝沢修 兵隊安田
山茶花究 無精髯の軍医
稲葉義男 兵隊(班長)
佐野浅夫 兵隊
浜村純 狂人の将校
潮万太郎 曹長