当初ハンフリー・ボガードにオファーがあって乗り気だったがワーナーがこの脚本を買わず、RKOが買ってロバート・ミッチャムに主演をオファーした作品。ここではまだカーク・ダグラスはファム・ファタール役のジェーン・グリアに殺されるマフィア役である。端役でロンダ・フレミングも出演している。後にカーク・ダグラスとは「OK牧場の決闘」でも共演していた。
小説原作はジェフリー・ホームズで自ら脚本を書いて売り込んだ。監督はフランス人ジャック・トゥルヌール(ターナー)である。白黒映画。
リメイクは1984年映画「カリブの熱い夜」(主演ジェフ・ブリッジス、レイチェル・ウォード)で、ジェーン・グリアが母役で出演した。

あらすじ

ガソリンスタンドをカリフォルニアの山奥ブリッジポートで経営するジェフはある日突然ジョーの訪問を受ける。ジョーはボスのウィットがタホ湖に持つ別荘に招待される。
ジェフは道中恋人のアンに自分の過去を打ち明ける。NYで探偵をしていたが、ウィットに雇われ彼の愛人で4万ドルを持ち逃げしたキャシーを追った。メキシコのアカプルコで見つけたが、難なくキャシーに籠絡されて共に逃亡生活を続けることになる。サンフランシスコで探偵事務所を開業したがある日同僚のフィッシャーに発見されて恐喝される。揉み合いになるうちにキャシーがフィッシャーを射殺してしまい、車に乗って何処かへ消える。
それでジェフはブリッジポートにやって来てガソリンスタンドを開業した。
ウィットの別荘に着き、アンを1人で返してジェフはウィットと会う。何とウィットの隣にはキャシーがいた。寄りを戻したのだ。
ウィットは脱税コンサルタントのイールズに脅されているので申告書を奪ってほしいと依頼した。ウィットはミータというイールズの秘書を買収したので彼女と組めという。
ミータに会いにいくと、たやすく申告書は盗めたが、イールズの家に戻ってみると彼は死体になっていた。罠にはめられたと気づいたジェフは申告書を奪い、ブリッジポートに逃げ出す。
キャシーの命令でブリッジポートに追って来た殺し屋ジョーを唖の少年キッドの機転で倒したジェフは、タホ湖へ舞い戻り、ウィットにキャシーの悪事をバラすが、悪運の強いキャシーはウィットまでも射殺してしまい、ジェフと一緒に逃げようと言う。ジェフはわかったフリをして警察に連絡する。かくして彼らの乗った車は警察に包囲され、ジェフはキャシーに撃たれて、警察はキャシーを射殺する。
アンは事件の後、キッドに彼は本気でキャシーと逃げたのかと尋ねる。キッドは首を縦に振るとアンは他の男の車に乗り込んで去る。キッドはジェフの経営していたガソリンスタンドを見上げて、これで良かったんだねと、心の中で微笑む。

雑感

やや筋書きは複雑だが、なかなか良く出来たフィルム・ノワールだ。
ファム・ファタールに二人の主役級(ロバート・ミッチャム、カーク・ダグラス)が振り回されて二人とも彼女に殺されてしまう。
しかも驚いたことに当時カーク・ダグラスがまだ大衆にあまり知られておらず、ユダヤ人のため悪役扱いだった。

ファム・ファタール役ジェーン・グリアは目は大きいが野暮ったくて、それほどの格がある女優とは思えない。秘書役で雇い主を裏切るロンダ・フレミングの方がずっと品がある。

これほどの映画が日本未公開(テレビでは放映された)とは、映画会社がRKOだったからだろうが、非常に残念だ。アメリカでも評価は非常に高い。出られなかったハンフリー・ボガードはガッカリしただろう。

スタッフ

監督 ジャック・ターナー
脚本 ジェフリー・ホームズ
原作 ジェフリー・ホームズ「Build My Gallows High」
製作 ウォーレン・ダフ
製作総指揮 ロバート・スパークス
音楽 ロイ・ウェッブ
撮影 ニコラス・ムスラカ

キャスト

探偵ジェフ – ロバート・ミッチャム
キャシー – ジェーン・グリア
NYのマフィア、ウィット – カーク・ダグラス
イールズの秘書メタ – ロンダ・フレミング
タホの住人ジム – リチャード・ウェッブ
同僚フィッシャー – スティーヴ・ブロディ
恋人アン – ヴァージニア・ヒューストン
ウィットの手下ジョー – ポール・ヴァレンタイン
キッド – ディッキー・ムーア
脱税コンサルタント、イールズ – ケン・ナイルズ

過去を逃れて Out of the Past 1947 RKO製作・配給 日本未公開 ロバート・ミッチャムとカーク・ダグラスが共演した傑作フィルム・ノワール

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