赤胴鈴之助シリーズの第七作。監督は森一生、撮影に宮川一夫。
主演は梅若正二、林成年、黒川弥太郎、中村玉緒、近藤美恵子、エンタツ。
色彩は大映カラー。
あらすじ
赤胴鈴之助は北町奉行土井安房守の息子鶴千代の剣術指南を務めていた。そんなとき江戸に戌年生まれの子供を攫って身代金を奪う怪人「三つ目の鳥人」が現れた。
鶴千代は浅草お化け屋敷の噂を聞き込み、鈴之助としのぶに連れて行ってとせがむ。仕方なく二人は連れて行くが、鶴千代は鳥人に攫われる。確かに鶴千代は、戌年生まれだった。千葉道場先輩の雷之進の助けで取り戻すのに成功する。
鈴之助はそのことで奉行宅を出禁になる。深夜しのびこんだ鳥人に、若殿がさらわれかけたとき、突然現れた鈴之助が再び救った。
彼女の母はお化屋敷の主お力の娘が、子守役の萩乃だ。そして鳥人が若君を拐いに来た時、懐から落した印篭は亡父のものだった。萩乃はお力に詰問するが、お力は何も知らぬと言う。
しのぶは田舎娘に扮して、お力の化物屋敷に住みこみ、敵の動静を探った。仇敵の物太夫と岳林坊がお力の手下になり、鈴之助をつけ狙っている。
さらに鳥人は鈴之助の真空斬りを真似して、罪を鈴之助になすりつけた。鈴之助がお力の魔力の前に眠らされた。鳥人は彼に千両箱を持たせて逃げ去った。
鶴千代の厄払いにきた祈祷師は邪悪な醜女だった。一同を眠らせ、鳥人が鶴千代を奪って逃げた。鈴之助は誘拐犯一味とみなされ、奉行所に捕縛された。彼は与力主水によって、翌日鈴ケ森で処刑にされることになった。
お力のお化屋敷では、鶴千代と交換するために身代金を持って来た安房守が一味に取り囲まれた。醜女に扮したお力には、夫がいたが十年前に強盗して逮捕され処刑された。そして息子が鳥人に扮した松太郎だった。お力は安房守を付け狙い、夫の仇を討つために鶴千代を誘拐して、松太郎は母親に従っているのだ。
萩乃が忍びこみ、お力を止めようとするが、松太郎らに囚われる。
刑場に連れて行かれる鈴之助は虚無僧姿の千葉周作によって助けられ、鈴之助は一足先に馬でお化け屋敷へ駈けつけた。鈴之助は再びお力の幻術にはまるが、しのぶが鈴之助を助け出し、鈴之助は千葉道場と共に、お力と松太郎を捕え、奉行親子を助け出した。その功を認められて、鈴之助は鶴千代の剣術指南に返り咲いた。
雑感
映画としては、「変身忍者嵐」のキャラデザに影響を与えたのでないかという怪人「三つ目の鳥人」が興味深い。特殊撮影は合成中心だ。
お女中の近藤美恵子は、ミス・ユニバース日本代表で活躍後、大映に入社した超美人女優。1963年「妖僧」で寿退社したそうだ。
梅若正二にとって「赤銅鈴之助」シリーズ最後の作品。大人の役を求めて、梅若がおりたいと言ったのだろう。でももう少し続けても良かったと思う。ゲストで名優が出てくるのだから、勉強しておけばいいのだ。
梅若は、東映の4歳上の中村錦之助を見習って、能楽の梅若流宗家の長男ということで大映が売り出した(その2年前に梅若流は観世流に吸収されていた)。錦之助は「笛吹童子」や「里見八犬伝」シリーズで人気を勝ち得たからだ。
梅若の弱みは市川雷蔵同様に殺陣だった。市川雷蔵は体力作りに相当気を使っていた。
赤胴鈴之助以後は京都撮影所で、B級映画の主演やA級映画の助演を演じていたが、態度が悪くて干されてしまう形で、59年早々にに大映を退社する。新東宝に移籍したが、交通事故を起こし、謹慎しているうちに会社が倒産し、大蔵映画に移籍するも役に恵まれず、引退。
この後は桃山太郞主演で二作品が1958年内に公開される。
スタッフ
製作 酒井箴
企画 土田正義
原作 武内つなよし (原案福井英一)
脚色 穂積純太郎、岡本繁男、松村正温
監督 森一生
撮影 宮川一夫
音楽 渡辺浦人
キャスト
赤銅鈴之助 梅若正二
兄弟子竜巻雷之進 林成年
師匠千葉周作 黒川弥太郎
しのぶ 中村玉緒
鈴之助の母お藤 朝雲照代
仇敵火京物太夫 尾上栄五郎
仇敵岳林坊 光岡龍三郎
奉行の若君鶴千代 太田博之
奉行の女中萩乃 近藤美恵子
萩乃のお力 村田知栄子
萩乃の弟松太郎 月田昌也
北町奉行土井安房守 志摩靖彦
阪東甚内 東良之助
与力市原主水 寺島貢
万吉 玉置一恵
植亀 横山エンタツ