雑誌明星に連載された川内康範の同名小説を舟橋和郎織田清司が共同で脚色し、田中重雄が監督したメロドラマ。
原作小説をもとにして歌「誰よりも君を愛す」(松尾和子とマヒナスターズ)が作られてヒットしたので、主題歌になっている。
主演は叶順子、本郷功次郎。共演は川崎敬三、野添ひとみ。松尾和子は主題歌だけで出演していない。

 

あらすじ

テレビ・ディレクター半沢明人は、人気者の西光和尚が出演する番組「お色気問答」に出演する予定だった女優が倒れてしまったため、三度もフライトを共にして気に入ったスチュワーデス森砂江子を出演させた。自分が代役に立つつもりだった、番組のスポンサーの娘美加子は砂江子に対して反感を持った。

砂江子の伯母かねは不動産業を営んでいた。出物の土地があったので、進藤グループ会長のバカ息子恭次郎が砂江子に惚れたのを知り、砂江子を恭次郎と結婚させる約束で融資を願い出た。
恭次郎は秘書をしていたのり子と付き合っていたが、砂江子と一緒になれると知り、あっさりのり子を捨てる。のり子は会社勤めを辞めて、恭次郎に対して復讐を決意する。明人はナイトクラブで恭次郎に付き纏われている砂江子を救い、将来を誓い合った。

しかし美加子が明人にしつこく付き纏うところを恭次郎は砂江子に見せた。明人は思わず立ち去ったが、睡眠薬を飲まされた砂江子は恭次郎に抱かれてしまう。それを知った明人は砂江子に別れを告げる。明人は大株主でもある恭次郎の陰謀により北海道支局に飛ばされた。

砂江子は恭次郎に復讐するため、航空会社を辞めて進藤会長の秘書となる。砂江子も札幌に行くが、彼は出張中で会えず代わりに美加子と出会う。そこで美加子が、明人がまだ砂江子を愛していること、恭次郎こそが全てを企てたことと知らされた。
覚悟を決めた砂江子は恭次郎をナイトクラブに呼び出した。恭次郎と差し違える覚悟だったが、ホステスに身を窶していたのり子に背中を刺された。驚く砂江子に先輩プロデューサーの安藤は明人のもとへ行きなさいと言った。砂江子は再び千歳へ飛んだ。

 

雑感

ラジオドラマ、松竹映画「君の名は」をかなり薄味にしたメロドラマだ。最後はハッピーエンドになるが、翌年続編「誰よりも誰よりも君を愛す」が公開され、二人の間にもう一波乱起きる。

松竹メロドラマのドロドロ風味と比べると、かなり薄味に見える。この辺りが菊田一夫と川内康範の違いだ。
本郷功次郎の演ずる明人がすぐカット来る短気なタイプで、イライラさせる。女性陣の方がずっとしっかりしている。

叶順子は「痴人の愛」と同時期の主演作。売り出しを書けていた頃だ。本作品では年下の本郷功次郞より格上扱いになっている。

1959年12月に発売された主題歌の方は1960年のレコード大賞を受賞し、紅白歌合戦に出場する。

スタッフ

製作 中泉雄光
企画 藤井浩明
原作 川内康範
脚色 舟橋和郎 、 織田清司
監督 田中重雄
撮影 高橋通夫
音楽 北村和夫
主題歌 「誰よりも君を愛す」松尾和子とマヒナスターズ

 

キャスト

森砂江子(スチュワーデス) 叶順子
半沢明人(ディレクター)  本郷功次郎
志摩美加子    野添ひとみ
進藤恭次郎 (大学以来のライバル) 川崎敬三
木南優子(スチュワーデス) 江波杏子
片桐のり子(進藤の愛人)  左幸子
安藤雄三(先輩)   菅原謙二
叔母中島かね    沢村貞子
父進藤竜太   武田正憲
遠山局長   北原義郎
根本部長   星ひかる
池令子(宝石商) 角梨枝子
西光和尚   左卜全

 

 

誰よりも君を愛す 1960 大映製作・配給

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