アルフレッド・ヒッチコックが1951年に監督した、交換殺人をテーマにしたサスペンス映画

原作は女流作家パトリシア・ハイスミスの犯罪小説で、探偵作家レイモンド・チャンドラーと、ツェンツィ・オルモンドが共同で脚本を書き、ウィットフィールド・クックが脚色した。

主演はファーリー・グレンジャー、ロバート・ウォーカー
共演はルース・ローマン、ヒッチコックの娘パトリシア・ヒッチコック。白黒スタンダード映画。

 

あらすじ

有名なアマチュアのテニス選手であるガイ・ヘインズは、ワシントンから故郷メトカーフへ列車で帰る途中、青年ブルーノ・アンソニーと知り合う。ブルーノはゴシップ好きで、ガイが妻ミリアムと不和になり、モートン上院議員の娘アンと結婚したいことを知っていた。その上でミリアムを殺すから代わりにブルーノの父を殺してくれと交換殺人を依頼する。ガイは全く相手にしなかった。その時ガイはライターを忘れてしまう。
ところがブルーノは、ミリアムを尾行して遊園地で絞殺した。そしてガイに殺人を告白して、父を殺すように迫る。もし警察に喋れば、ガイは共同正犯になるとも言う。そのためにガイは誰にも話せず一人で悩む。

ガイは警察に疑われて刑事の尾行を受ける。ストーキングするブルーノも執拗に父を殺すようにガイに迫る。ガイは意を決して、ブルーノの父に真実を告げようと部屋に忍び込むが、ベッドからむっくり起き上がったのはブルーノだった。
パーティーでブルーノがアンの妹バーバラを見て異常に興奮して失神する姿を見て、アンは怪しむ。バーバラと被害者ミリアムは共に眼鏡をかけていたのだ。アンに追及されて、ついにガイは真実を告白する。
事実を知ったアンは、ブルーノの母に全てを告げるが、聞く耳を持たなかった。母も子も異常だったのだ。

フォレスト・ヒルの試合当日、ブルーノはガイの忘れたライターをメトカーフの犯行現場に置きにいったことを知った。ガイは素早く敵に勝利して、尾行していた刑事をまいて、遊園地に入ったブルーノの跡を追った。
事件をおかげで遊園地は大繁盛していた。ブルーノは犯行現場に行きつかず揉み合いとなる。二人はメリーゴーランドに飛び乗って対決する。あわてた刑事が係員を誤射してしまい、ブレーキが外れたため、猛スピードで回り始めたメリーゴーランドの格闘でもなお、二人は殴り合いを続けていた。メリーゴーランドの下から潜り込み、急ブレーキをかけたため、倒れた心棒が折れてしまい、ガイは外へ放り出されたが、ブルーノは木馬の下敷きとなって息絶えた。その手の中に握られてべったりブルーノの指紋が付いた、ガイの記念ライターが見つかり、ガイの容疑が晴れた。

雑感

ブルーノは母由来のサイコだ。その狂人に交換殺人を迫られるのはガイも災難だ。でも妻ミリアムとの離婚交渉前に愛人アンとのスクープを握られてはいけない。ガイという男もアホである。
そんなバカに地盤をゆくゆくは譲ろうとする上院議員もアホである。恋人アンも余計なことをアンソニー家にご忠臣に行くとは、さらにアホである。
誰もが巻き込まれる必要のない事件に巻き込まれるが、いずれもアホだからである。護身本能が全く働いていない。おかげでメリーゴーランドの悲劇が発生するまでは、全く面白くなかった。
最後はガイは無罪放免になりそうだが、ブルーノが生きていたら必ず共同正犯を主張しただろう。
それぐらいこの脚本は穴だらけだ。大作家が二人も揃っていて誤魔化し方を分からなかったのか。船頭多くして船が山を登ったのか。レイモンド・チャンドラーアルフレッド・ヒッチコックと上手く行かず大部分はツェンツィ・オルモンドが書いたらしい。
それでもメリーゴーランドのアクションは興奮する。あのシーンは目が離せない。あれがあるから、この映画は成立する。

ロバート・バークスはアカデミー白黒撮影賞にノミネートされた。

二枚目俳優からサイコへと華麗なる転身を図ったロバート・ウォーカーは次回作でもサイコ役しか無かったのか興味がなかったのか、8ヶ月後に麻薬のオーバードーズで亡くなった。

スタッフ

監督 アルフレッド・ヒッチコック
脚本 レイモンド・チャンドラー、ツェンツィ・オルモンド
脚色 ウィットフィールド・クック
原作 パトリシア・ハイスミス
撮影 ロバート・バークス
音楽 ディミトリ・ティオムキン
音楽監督 レイ・ハインドーフ

キャスト

ガイ・ヘインズ  ファーリー・グレンジャー
恋人アン・モートン  ルース・ローマン
ブルーノ・アンソニー  ロバート ・ウォーカー
モートン上院議員  レオ・G・キャロル
アンの妹バーバラ  パトリシア・ヒッチコック
妻ミリアム  ローラ・エリオット(後にケイシー・ロジャーズ)
ブルーノの母アンソニー夫人  マリオン・ローン (奥さまは魔女:サマンサのクララ叔母さん)
ブルーノの父アンソニー氏  ジョナサン・ヘイル
ターリー警部  ハワード・セント・ジョン
コリンズ教授  ジョン・ブラウン
カニンガム夫人  ノーマ・ヴァーデン
ヘネシー刑事  ロバート・ギスト
ハモンド刑事  ジョン・ドゥーセット

 

 

 

 

見知らぬ乗客 Strangers on a Train 1951 ワーナー・ブラザーズ製作・配給 (1953年日本公開)ヒッチコック映画

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