ウイル・C・ブラウンの原作をレジナルド・ローズが脚色し、アーネスト・ホーラーが撮影を担当した、アンソニー・マン監督のリアリズム西部劇。カリフォルニアのレッド・ロック・キャニオンにロケが行なわれた。
ジャン・リュック・ゴダールが評価したため、リアリズム西部劇の古典になっている。
主演ゲイリー・クーパー。共演ジュリー・ロンドン、リー・J・コッブ、アーサー・オコンネル、ジャック・ロード(ハワイ5-0。カラーのシネスコ映画。

あらすじ

1874年リンク・ジョーンズが馬で乗りつけて西部クロスカット駅から汽車にのって、町の代表として学校教師を探しに行った。詐欺師のサム・ビースリーが、汽車に乗っていた歌手ビリー・エリスを紹介する。
突然3人の男が停車中の汽車を襲撃した。汽車は急いで発車し、リンク、サムとビリーがとり残された。リンクはこのままでは凍え死ぬため廃屋に連れて行く。そこは彼が叔父に育てられた家だった。先程汽車を襲った悪党どもがそこにはいた。奥から叔父で首領ドック・トビンが現れた。リンクはドックの片腕だったが、20年前に堅気になりたくて叔父の元を去っていた。ところが学校教師を雇うための金をリンクは彼らに奪われていた。それを取り返すまでは、彼らの言いなりにならなければならない。若いコーリーは美しいビリーにちょっかいを出した。リンクは我慢しなければならなかった。

 

翌朝、一味は三人を連れ、ドックの夢だったラ・スーの銀行を襲撃するため、出発した。リンクはコーリーに喧嘩を売られたが、リンクの方が一枚上だった。コーリーはリンクに向けて発砲したが、咄嗟にサムが庇って流れ弾に当たって死ぬ。コーリーはドックに撃たれて死んだ。
ラ・スーにリンクと下っ端のポンチが先行して乗り込む。時間がければ、リンクの弟分クロードと間抜けなトラウトが合流して銀行を襲う手筈が整った。しかしラ・スーは鉱山が閉鎖されたため、ゴースト・タウンとなっていた。
その時リンクはポンチに狙撃される。それはクロードの秘密命令だった。リンクはあっさりポンチを返り討ちにした。クロードとトラウトはリンクを挟み撃ちにしたが、二人ともリンクによって倒された。
そしてリンクは、ドックとビリーの待つキャンプにひき返した。そこで彼が発見したのは、レイプされたビリーだった。ドックは歳を取ってまともではなかったのだ。リンクはドックに保安官に突き出すと宣告すると、ドックは銃をめくら撃ちしてきた。仕方なくリンクはドックを射殺した。リンクの金は叔父が持っていた。住んでいた町に新しい教師を連れ帰るために、リンクは馬車で出発した。隣の席には、女教師ビリーの姿があった。

雑感

ゲイリー・クーパーは「昼下りの情事」の撮影終了後に「西部の人」の撮影に入った。同年の映画「大いなる西部」とセット監督が同じなので、重複するセットが使われている。
クーパーは以前遭った交通事故のおかげで体がボロボロだったが、スタントを使わないアクション・シーンもいっぱい撮っている。リー・J・コッブジョン・デナーも十歳ぐらい下で、ジャック・ロードに至っては二十歳ぐらい下だった。メイクで誤魔化しても誤魔化しきれない部分はある。
しかしアンソニー・マン監督のリアリズムは、俳優の年齢差に影響されるものでなかった。クーパーとジョン・デナーの決闘シーンは軒上で音を立てず這いつくばったクーパーと、軒下で足を撃たれて身動きが取れないジョン・デナーの対決であり、お世辞にも格好良いものではなかった。その辺りをゴダールが気に入ったのだろう。この映画の撮影後、クーパーは整形外科の手術を受ける。その後も活躍していたが、1961年に前立腺癌で亡くなる。
ジュリー・ロンドンの演技は可もなく不可もなし。大歌手が演技だけでストレート・プレイで魅了するのは難しい。彼女の曲を入れて欲しかった。翌年夫になるボビー・トゥループの曲は採用された。ジュリーが演じたビリーは最後リンクを愛して彼の町へついて行くのだが、リンクには町に妻子がいる。これからどうなるのか、全く投げっぱなしで終わった。そこもゴダールの気に入った点か。
彼女はワーナーに女優としてスカウトされてデビューしていた。最初の夫との間に二人の娘を作ったが、離婚する。そこで出会った作曲家兼ピアニストのボビー・トゥループに誘われて歌手になる。1955年にアルバム「彼女の名はジュリー」がヒットして有名になり、映画公開の翌年ボビー・トゥループと再婚して、音楽活動に主軸を移す。
リー・J・コッブはメイクで老けた役作りをしていたが、流石名優だけあって様になっていた。ただしゲイリー・クーパーとの歳の差は如何ともしがたかった。コッブの演じたドックはラ・スーが廃墟だと知っていたのだろうか。それとも幻を見ていたのか。どちらにせよボケていることは確かだ。

アーサー・オコンネルの見せ場は最後に敵前に身を投げ出すところだけ。勿体ない使い方だ。

 

スタッフ

製作 ウォルター・ミリッシュ
監督 アンソニー・マン
脚色 レジナルド・ローズ
原作 ウィル・C・ブラウン
撮影 アーネスト・ホーラー
音楽 リー・ハーライン
主題曲  ボビー・トゥループ

キャスト

リンク・ジョーンズ  ゲイリー・クーパー
歌手ビリー・エリス  ジュリー・ロンドン
強盗団首領ドック・トービン  リー・J・コッブ
いかさま師サム・ビースリー  アーサー・オコンネル
手下コーリー  ジャック・ロード
リンクの弟分クロード  ジョン・デナー
トラウト  ロイヤル・ダノ
ポンチ   ロバート・J・ウィルク

 

 

 

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