東映系列の制作プロである「新映画」最後のメジャー作品。江戸川乱歩の原作長編「蜘蛛男」を陶山鉄が脚色して山本弘之監督が撮った。主演は藤田進(明智小五郎)、岡譲司

 

あらすじ

 
美人姉妹が次々と誘拐され殺される。そこで警視庁は畔柳博士という有名な学者に助力を求める。姉妹とよく似た女優富士洋子が次に狙われる。洋行していた明智小五郎は帰国早々にこの事件を推理し、畔柳博士の部屋にあった夫人の写真から博士こそ真犯人だと語る。以来、畔柳博士は姿を消した。博士の助手だった野崎は、自責の念から洋子のボディーガードを引き受ける。たびたび博士は洋子を襲うが、その度に明智に阻まれる。しかし博士は夫人が裏切って他の男と心中したことから、夫人に似ている洋子殺害に強い執念を燃やしていた。ついに彼は整形手術を受け、洋子と明智の妹さらにバレエ団を攫い、パノラマ館開館の日に関係者の前で彼女らが躍っているところに毒ガスを撒いて全滅を狙う。ところが前日博士が寝入ったところを明智が潜入し、毒ガスを抜いておいた。逃げ場を失った博士は警察に囲まれて、洋子が見る前で投身自殺するのだった。

 

雑感

 
ミステリーというには通俗成分が強い。エログロ成分は多少弱めだ。江戸川乱歩の作品の中では推理に重きをおくのでなく、通俗小説を描いたのだと思う。
藤田進は新東宝の「一寸法師」以来の明智小五郎だが、この方がまだ昭和の混沌期であり、暗い夜道が怖かった時代だった。「蜘蛛男」はどの画面も明るいのだ。
中でも洋子役の宮城千賀子は根っからの明るく派手な人だから、映画の雰囲気づくりに監督が失敗した感がある。
岡譲司は基本がしっかりしてるから、なんでも出来る。それゆえに明智小五郎、金田一耕助から獣人まで何でもやった。最後は端役までやっていた。芝居が好きだったのか。

 
宮城千賀子が美女役で登場。黙っていたら、美人に見えるから不思議。
また冴えない浪人役でしか見たことがない舟橋元が持てる役とは弱小製作会社だからこそできた大抜擢か。
 

スタッフ・キャスト

 
監督 山本弘之
製作 篠勝三
原作 江戸川乱歩
脚本 陶山鉄
撮影 古泉勝男

 
配役
明智小五郎 藤田進
畔柳博士 岡譲司
野崎三郎 舟橋元
波越警部 松下猛夫

富士洋子 宮城千賀子
明智淳子 河上敬子
里見絹枝・芳枝 八島恵子

 

蜘蛛男 1958 新映画社製作 大映配給

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