藤原審爾の原作を佐治乾が脚色し、元新東宝の石井輝男が東映入社第一作として監督したギャング映画。撮影は星島一郎。
主演は高倉健、共演は鶴田浩二、小宮光江。
あらすじ
悪党ファミリーの母親まさは大阪で宿屋を経営しているが、いまだに裏社会に大きな力を持っている。まさの長男は香港ジョーと呼ばれる国際的なギャング。長女佐和は横浜でバーを開いている。その婿スマイリー健は刑務所帰りで河北組幹部である。次男正夫は少し頭が足りない。
健の兄弟分であるツンパの山藤は健がいない間に河北グループの子会社社長にまで出世していた。武闘派の健が刑務所から戻ってきたことから、再び健を蹴落そうと考えている。
山藤と健は銀行ギャングを計画する。健は佐和と正夫姉弟と、楽隊とウィスパーで計画を実行する。楽隊はウィスパーに彼女を4人も取られて、犬猿の仲だった。山藤は、部下張本を客の中に紛れ込ませ、銀行ギャングを失敗させようとした。しかし張本が楽隊と争って相撃ちしてしまう。慌てて金を強奪した健たちは佐和の車で逃げ出す。その途中で何と正夫が金を持ち逃げしてしまう。
楽隊は一命をとりとめるが、ウィスパーに復讐を誓って警察病院を脱走した。いつの間にか計画の共同責任を取る形になった山藤と健は、正夫を血眼になって探す。
正夫は恋人の圭子と母親のところに現れる。しかし母に叱られて、横浜のジョーの元に舞い戻る。そこを山藤に急襲されるが、ジョーが機転を利かせて逃げ出す。河北組組長は、正夫がもどってくるまで佐和を人質としたが、嫉妬した愛人が佐和に一服盛ろうとする。ところが誤って組長が薬を飲んでしまい、死んでしまう。
正夫は圭子と浅間の朝日牧場に隠れていた。それを知った健とウィスパーは牧場に乗りこんだ。牧場にはジョーが潜入していたが、佐和が自由になったことを知らない健は義兄ジョーに拳銃を向けた。好機にウイスパーが、ジョーと健をまとめて殺して漁夫の利を得ようとしたとき、楽隊が突然登場しウイスパーを撃つ。さらに山藤達が現れ、楽隊もジョーも倒される。しかし健は山藤の手下を次々と倒し、最後は山藤を火口に追いつめ、ジョーから取り戻した金を手にしたままに落下していった。
雑感
イタリア人のようなゴッドマザー・ファミリーの話。キャラクター・デザインが完全に日本離れしている。
藤原審爾の原作があり、佐治乾の脚本も撮影前にできていたと考えられるが、監督に新たに石井輝男が入って新東宝テイストが加えられ、ますますハチャメチャな作品になったと思われる。
1961年のニュー東映作品で、かなり低予算だが演技力のある人間だけを使い、東映に移ったばかりの石井輝男は楽しい群像劇に仕上げている。
東映は時代劇しか見ないと言っていた人間の目は節穴だ。正直言って、この面子では主演高倉健の演技力がかなり低く見えた。
曽根晴美が江原真二郎の彼女を四人も寝とったと言うのは、真実味が薄い設定だ。二人の役を逆にした方が良いと思うが、監督は敢えて今までの東映の予定調和を嫌い、不協和音を持ち込んだ。
小宮光江は唯一の中堅女優としてなかなか光っていた。石井輝男監督なら彼女をもっと活かしてくれただろう。翌年彼女が亡くなって本当に惜しいことをした。
若手では18歳の新井茂子が次男正男の恋人役で出演。少し頭の緩い役だったが、本間千代子の映画ではライバル的存在で登場していたので、好きな女優だ。「ウルトラセブン」の「セブン暗殺計画・後編」ではフルハシ隊員のGF役夏彩子役で出演し、ガッツ星人に襲われながらウルトラ警備隊にマグネリウム・エネルギーの基になる鉱石を提供する。
スタッフ
企画 斎藤安代 、 吉田達
原作 藤原審爾
脚色 佐治乾
監督 石井輝男
撮影 星島一郎
音楽 三保敬太郎
キャスト
長女の婿スマイリー健 高倉健
長男香港ジョー 鶴田浩二
長女佐和 小宮光江
次男正夫 小川守
次男の恋人圭子 新井茂子
母親まさ 清川虹子
楽隊 江原真二郎
ウイスパー 曽根晴美
権爺 打越正八
親分河北 佐々木孝丸
山藤(ツンパ) 沖竜次
用心棒 関山耕司
カポネ 山本麟一
張本 八名信夫