テレビの開発競争に絡んで起きた殺人事件を描いた、邦光史郎の企業小説「社外極秘」を白坂依志夫江戸川弦が共同で脚色し、弓削太郎が監督したサラリーマン・スリラー第四弾。
主演は田宮二郎。ヒロインは滝暎子、共演は伊藤雄之助。白黒スコープ映画。

あらすじ

熊谷の人気のない道で産業調査所長磯村はトラックに撥ねられて死んだ。所員の日沼は、遺品に混ざっていた木の葉に眼をつけた。枯れかたが塩素系薬品だったからだ。これは単なる事故死じゃなく、他に理由がある!

家電メーカー中外電機とサンエス電機は、テレビ開発で競っている。産業調査研究所は中外電機からリサーチ業務を請け負っていた。所員半田のGFは、サンエスの交換手として勤めている。彼女は、サンエスが革命的なテレビを開発したらしいと情報をもたらした。熊谷付近で行われた市場調査情報の内容を知った所長がサンエス電機の何者かに殺されたと、日沼は推理する。

日沼は上司遠藤と共にサンエス電機に乗り込み、町田調査室長に会った。だが、町田は新テレビ開発について聞かされても、はぐらかした。翌日、産業調査研究所にやくざが殴り込みを掛けた。日沼の情報は、町田の痛いところをついたようだ。
磯村の娘暁子はテレビのアナウンサーで、彼女の番組のスポンサーが内外電機だった。父の死後も変わらず元気づけてくれる日沼に愛情を抱いていた。

日沼と半田は、小型ブラウン管の特許を調べて、特許取得者と大学で同窓だった者がサンエスで研究開発に従事していることを知る。研究者の妻の跡を尾けて、熊谷に工場があることを確かめた。そこは所長の遺品にあった、枯れた楓が立っていた。
暁子は内外電気の橋爪から誘いを受けて、食事をともにする。その際に、日沼のことを橋爪に話してしまう。実は橋爪こそサンエスが内外電機に送り込んだ産業スパイだったのだ。内外電機はその後、橋爪をスパイとして懲戒解雇する。
日沼と半田は消防署員にばけて抜き打ち監査と称して工場に忍び込み、工場内部をカメラにおさめた。警備員は、消防署に問い合わせて偽物だと気づくが、半田にフィルムを渡して脱出させ、日沼は工場長室に行き、町田室長を呼び出せと一喝する。町田は日沼に強請られると考えて、善後策を役員会に諮る。
翌日、サンエス電機は、日沼の先手を打って記者会見で、4インチの超小型テレビ開発成功を発表した。もう日沼の持っているフィルムは無価値になってしまった・・・。

雑感

田宮二郎らしからぬ、お色気要素が全くなくて、社会派ミステリー色が強い作品だ。彼がライダーキックのような飛び蹴りを見せるアクション・シーンも珍しい。
「黒の試走車」から、「真昼の罠」「黒の報告書」「背広の忍者」まで、一連の企業犯罪小説の映画化作品は、サラリーマン・スリラー・シリーズ第何弾と呼ばれて宣伝されていた。「黒のシリーズ」と呼ばれるようになったのは、次に公開された川崎敬三主演「黒の札束」以降である。
一方「『女の子箱』より 夫が見た」は黒岩重吾原作のサラリーマン推理小説を原作として1964年に公開されるが、サラリーマン・スリラー・シリーズとしてナンバーリングはされなかった。
滝瑛子は、ハリウッド映画にも出演したが大映女優としては迫力や思い切りに欠けた。表情も固く、お色気シーンもなく、見せ場はなかった。

スタッフ

企画 中島源太郎
原作 邦光史郎
脚色 白坂依志夫、江戸川弦
監督 弓削太郎
撮影 石田博
音楽 池野成

キャスト

日沼隆司  田宮二郎
上司遠藤宏治  高松英郎
部下半田  竹村洋介
調査会社社長磯村尚平  南方伸夫
娘暁子  滝瑛子
調査室長町田英俊  伊藤雄之助
橋爪静夫  杉田波
小見山  伊東光一
有田  花布辰男
白井  谷謙一
津村  早川雄三
久米孝子  大西恭子
曽我春生  北城寿太郎
雪村  大山健二
平沢  原田玄
金子  夏木章
中岡  長田健二
古川起代子  響令子
植原健策  高村栄一

 

 

ネタばれ

しかし日沼は、内通者に依頼して町田の部屋に隠しマイクを仕込んでいた。そしてヤクザが磯村を殺した経緯を町田に報告し、代償として町田が月40万円の手当を与えると約束した様子を無線マイクからテープレコーダーに受信して録音した。
ことが明るみに出て、町田はサンエス電機を辞めさせられ、ヤクザは警察に捕まった。
日沼は、東京を離れ大阪へ行き、仲間と消費者意識調査会社を立ち上げるつもりだ。いつか暁子を迎えに行きたいと言い、暁子もそれを喜ぶのだった。

 

 

背広の忍者 1963 大映東京製作 大映配給 サラリーマン・スリラー第四弾

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