(△)シネマスコープ撮影された初めての映画として大ヒットした。
フランク・ロスが製作し、ヘンリー・コスタが監督に当った。
キリスト教の受難書などに描かれた「聖衣剥奪」をモチーフにしたロイド・C・ダグラスの小説をフィリップ・ダンが脚色した。
主演は英国人リチャード・バートン。
共演は英国人ジーナ・シモンズ、肉体派俳優ヴィクター・マチュア、マイケル・レニー。
カラー映画。
あらすじ
ローマ帝国第二代皇帝ティベリアスの治世。その養子で次期皇帝と目されるカリギュラは、護民官マーセラス・ガリオの幼馴染ダイアナにご執心らしい。
マーセラスは、ダイアナの前で格好を付けようとするカリギュラに楯突いて、ギリシャ人奴隷デミトリアスを競り落とす。そのためカリギュラに疎まれて、エルサレムに左遷される。逃げようと思えばそう出来たデミトリアスだったが、マーセラスに同行した。
マーセラスは、ユダヤ属州領事ピラトにイエス・キリストを捕え、磔刑に処することを命じられる。イエスに何かを感じたデミトリオスは反対するが、マーセラスは粛々と刑を執行する。
その後マーセラスは、イエスが羽織っていた紅い聖衣を手に入れた。彼が聖衣をまとおうとすると、強い衝撃を受けて衣を捨てた。デミトリアスはその衣を拾い、逃げた。それ以来マーセラスは、重い心の病にかかってしまう。
マーセラスは、ピラトの報告書を携えてローマに戻る。ダイアナに再会するが、彼女にも心の病を治せない。ティベリアス皇帝は、マーセラスを治すにはその聖衣を見つけ燃やすことだと言った。さらにマーセラスに対して、イエスが真の救世主かの調査を命じる・・・。
雑感
これはフィクションを元にした映画だが、聖衣のことは伝導書に書いてある。裸だったイエスに対してローマ兵が、王に見立てて赤いローブを羽織らせたのだ。ローマ兵としては、馬鹿にするつもりであり、それがこのような伝説を生むとは思わなかっただろう。
17世紀のエル・ドラドの絵画にも「聖衣剥奪」というのがあり、赤い聖衣を人々に奪われる瞬間が描かれている。原作者ロイド・C・ダグラスは、その後の聖衣の行方を想像で描いたのである。
マーセラスが聖衣を纏ったときに受けた衝撃は、救世主かもしれない人を磔にしたことに関する罪の意識である。デメトリアスは、すでにイエスにメシア(救世主)を感じていたので、聖衣を持って逃げたのだ。
先ほどフィクションと書いたが、ローマとユダヤの時代背景については、ほぼキチンと描けている。ただマーセラス、ダイアナとデメトリウスだけが、新キャラクターである。
英国人のジーナ・シモンズは,この作品で存在をアメリカ人に広く知らしめたが、公開後一月してオードリー・ヘップバーン主演の「ローマの休日」が公開された。この二人は、ヴィヴィアン・リーと全くタイプが違う英国美人だったから、米国では男女問わず英国ブームになったと思う。
BDリストア版でなく、アマプラ配信で見たが、半分は色が薄くなってモノクロだった。美しい聖衣を見たい人は、最新BDを買った方が良い。
スタッフ
製作 フランク・ロス
監督 ヘンリー・コスター
脚色 フィリップ・ダン、ジナ・カウス
原作 ロイド・C・ダグラス
撮影 レオン・シャムロイ
音楽 アルフレッド・ニューマン
テクニカラー・カラー・コンサルタント レオナード・ドス
キャスト
マーセラス・ガリオ護民官 リチャード・バートン
ダイアナ ジーン・シモンズ
デメトリオス(奴隷) ヴィクター・マチュア
ペテロ(第一使徒) マイケル・レニー
カリギュラ(次期皇帝) ジェイ・ロビンソン
ユストゥス ディーン・ジャガー
ガリオ貴族院議員(父) トリン・サッチャー
ピラト(エルサレム領事) リチャード・ブーン
ミリアム B・S・ジョン
パウロ ジェフ・モロー
ティベリウス皇帝 アーネスト・セジガー
ユニア ドーン・アダムス
***
マーセラスは、旅回りの商人に化けてガラリアに赴き、キリスト教団に潜入捜査する。そしてイエスの教えを説くペテロと呼ばれる漁夫サイモンと議論し、デミトリアスとも再会した。激しい葛藤の後、マーセラスはキリスト教に入信した。
ローマでは、タイベリアス皇帝が亡くなり、カリギュラが第三代皇帝に即位していた。カリギュラは、キリスト教の弾圧を行った。マーセラスがローマに潜入したと聞き、まずデミトリアスを捕えて拷問にかけ、マーセラスの居場所を喋らそうとした。
宮廷の夜襲によりマーセラスはデミトリアスを救うが、身代わりに捕まってしまう。
マーセラスは裁判に掛けられた。カリギュラに信仰を捨てろと命じられたが、マーセラスは断り、ダイアナも夫となったマーセラスに従った。二人は、矢場へ引かれていったが、手を繋いで微笑んでいた。