ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠エリック・ロメールの「喜劇と箴言」シリーズ第2作。
撮影は「飛行士の妻」のベルナール・リュティックで、フランス映画だがフジカラー・フィルムを採用している。撮影はルマン中心に行われた。
主演は「クレールの膝」でクレールの妹役を演じたベアトリス・ロマン
共演はアンドレ・デュソリエ、アリエル・ドンバール
フランス・シネマ大賞受賞。

あらすじ

サビーヌはパリの大学で美術史の研究をしている。彼女は妻帯者の画家シモンと付き合っていたが、セックスの最中に彼の家族から電話が掛かるとあっさり中断するのに嫌気が差す。
サビーヌが親友クラリスに相談すると、クラリスは従兄弟で人気の弁護士エドモンを紹介する。サビーヌは骨董屋でバイトをしていると言うと、エドモンは欲しい器があると話す。電話が掛かってきて、エドモンは先に帰ってしまうが、クラリスに言わせるとサビーヌは好みのタイプらしい。
週末にサビーヌは、骨董屋の主人が狙いを付けていた器を横取りしてエドモンに譲り渡す。その後二人は食事をしたが、クラリスはそれだけで彼と結婚する気になってしまう。
サビーヌは店主から、勝手に取引をしたことを注意されると、結婚するので辞めますと言って、お店を退職する。
そんなときサビーヌは昔の恋人クロードに会い、弁護士と結婚して主婦になると自慢する。クロードは彼女の暴走を知っているだけに心配するが、彼女だけは自信満々である。
サビーヌが電話を事務所に掛けても、人気弁護士のエドモンは忙しくてなかなかいない。何としても会いたいサビーヌは誕生日パーティーにエドモンを招待するが、妹が集めた客ばかりでエドモンはなかなか来ない。ついにサビーヌはブチ切れるが、部屋に篭って泣いているところへ、やっとエドモンはやって来る。しかし彼は親族の顔ぶれを見回し、ケーキを一口食べて、自室に捨てられていたコップを誕生日プレゼントに渡すと、すぐに帰ってしまう・・・。

雑感

「夢想にふけらない人がいようか、空想を描かない者があろうか」。このラ・フォンテーヌの言葉から生まれた映画である。
痛々しいほど短気で自己中心的な女が見せるコメディだ。
画家と別れるのはわかるが、突然バージンロードを歩きたい空想に取り憑かれ、しかも玉の輿に乗るという夢想を抱き始める。周りの人には、主婦なんて時代遅れだと笑われるが、本人は相手が敏腕弁護士なのだからマジなのだ。
初めは煽っていたクラリスも抑えようとするが、彼女の手綱は効かない。
クラリスの親戚であるエドモンがお友達から少しずつと思っていたとしても、これでは引くわ。それにエドモンはパリのエスタブリッシュメントだが、サビーヌはインド人の血が流れている移民の娘だ。身分社会を捨てたフランスと言えども、1980年代当時名門出身の身分の高い人間は肌の色をそう簡単に混ぜるわけにはいかなかった。君子であるエドモンとしても、田舎者同士のべったりした付き合いは苦手だったのだ。
いつ二人の関係が破綻するか内心楽しみにしていたが、最後に想像以上の爆弾を破裂させてくれて、素晴らしい出来だった。

サビーヌは、骨董屋で一から出直して、大人にならなければ結婚は無理だろう。
クラリスに相談したのが間違いだった。

時代なのか主題歌はテクノポップ調だった。

スタッフ

監督・脚本: エリック・ロメール
製作: マルガレット・メネゴズ
撮影: ベルナール・リュティック
音楽: ロマン・ジール、シモン・デジノサン
編集: セシル・ドキュジス、リサ・エレディア
録音: ジョルジュ・プラ、ドミニク・エヌカン

キャスト

大学院生サビーヌ  ベアトリス・ロマン
弁護士エドモン  アンドレ・デュソリエ
親友クラリス  アリエル・ドンバール
画家シモン  フェオドール・アトキン
骨董店主  ユゲット・ファジェ
サビーヌの母  タミラ・メツバ
妹リゼ  ソフィー・ルノワール
フレデリック  エルヴ・デュアメル
ニコラ  パスカル・グレゴリー
昔の恋人クロード  ヴァンサン・ゴーティエ

***

パリに戻ると、サビーヌは彼の事務所に押しかける。エドモンは正直に、結婚の意思がなくサビーヌを愛していないと告げる。サビーヌなら受け入れてくれると思ったからこそ、事実を言ったのだ。ところがサビーヌは切れてしまい、「私があなたと結婚したがってるなんて勝手に思わないで」と大声でわめきたてて事務所から飛び出し、そこへやって来た老婆にぶつかって叱られると、今度は老婆に逆ギレする。
そして実家へ帰る電車の窓から風景を見ていると、先程のことが馬鹿馬鹿しく思えて笑い出す。
その後サビーヌは、クラリスにエドモンに対する愚痴を聞いてもらう。
翌日パリ行きの列車で、彼女はいつも斜め横に座っている長髪の男性に突然興味が湧く。そして彼の前に座り、顔と反応を確かめてみようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しい結婚 Le Beau Marriage 1982 仏ロザンジュ映画製作 シネセゾン国内配給(1996年)「喜劇と格言」シリーズ第二弾

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