バロネス・オルツィ(男爵夫人)原作のフランス革命期を描いた戯曲および同名小説に基きロバート・シャーウッドとアーサー・ウィンペリスが共同脚色し、ハロルド・ヤングが抜擢されて監督に当った。
主演はレスリー・ハワード、相手役はマール・オベロン。出演はレイモンド・マッセイ、ジョーン・ガードナー、メルヴィル・クーパー、アンソニー・ブッシェルら。
あらすじ
1792年、フランスではロベスピエールが公安委員会の実権を握り恐怖政治を行なっていた。フランスの都市では、毎日貴族や聖職者が断頭台の露と消えていくのを、平民たちがゲラゲラ笑って見学していた。
「紅はこべ」を名乗る一団が、貴族たちを救い出しては英国へ亡命させていた。トゥルネ伯爵夫人と娘スザンヌも断頭台へ送られる途中を救出されて英国に逃げることが出来た。フランスは英国に送った全権大使ショヴランに「紅はこべ」の正体を明らかにする事を命令した。
英国社交界のファッション・リーダーであるパーシー・プレイクニー卿が「紅はこべ」のリーダーである事は仲間しか知らなかった。妻マルグリットさえ教えてもらえなかった。彼女はフランスの女優出身だったが、かつてショヴランの奸策に乗せられサン・ジュスト侯爵一家を革命派に売って以来、夫婦の間が冷えきっていた。兄アルマンがドーバー海峡を渡ってパーシー家にやってきた。実はアルマンは「紅はこべ」の一団に加わって夫に連絡に来たのだった。
しかし兄の帰国後、ショヴランはアルマンを「紅はこべ」の仲間として捕えた。ショーヴランは兄を人質にして、再びマルグリットにスパイを引き受けさせる。マルグリットは探り出した「紅はこべ」の待ち合わせ場所に関する情報をショーヴランに伝えた。しかしショーヴランが待ち合わせ場所に行くが飲んだくれが酔い潰れているだけで、他には誰も現れなかった。その酔っ払いがパーシーだったのだが、ショヴランは知らなかったのだ。
翌日パーシイがアルマンを救いにフランスへ出発した後で、彼女は愛する夫が「紅はこべ」である事実を知り、自分もドーバー海峡を渡った。
しかし「紅はこべ」のアジトであるカレーの船宿でマルグリットはショーヴランたちに捕まり、その後現れたパーシイはマルグリットをイギリス行きの船に連れて行ったのを見届けてから、フランス兵士に捕まえられ、連行され銃殺される音がした。勝ち誇ったショヴランが凱旋しようとしたとき、ふらりとパーシーが酒場に戻ってきた。実は銃殺隊は紅はこべが牛耳っていたのだ。
ショヴランを地下室に押し込み、パーシイとマルグリットは仲良く英国に帰って行った。
雑感
昔は子供向け文学全集に「紅はこべ」は収載されていたものだが、百科事典や文学全集がなくなって、以来全く見なくなった。今は東京創元文庫で「紅はこべ」を読める。
第1巻の原作のあらすじを多少脚色しているが、大筋は変わらない。今回は知り合いの貴族を助けるだけで、「ラ・セーヌの星」や「ベルサイユのばら」のようにルイ16世とアントワネット一家を助け出そうとするわけではない。しかしこの話には続きがある。
「紅はこべ」第2巻「I Will Repay」ではマリー・アントワネットが出てくるので、1893年1月の処刑の頃の話題を含んでいるのだろう。
原作者バロネス・オルツィは他にも安楽椅子探偵推理小説「隅の老人探偵簿」の原作者としても有名である。
スタッフ
製作 アレクサンダー・コルダ
監督 ハロルド・ヤング
原作 オルツィ男爵婦人
脚色 ロバート・シャーウッド 、 アーサー・ウィンペリス
撮影 ハル・ロッスン
キャスト
サー・パーシー・ブレイクニー レスリー・ハワード
妻マルゲリート マール・オベロン
スザンヌ ジョーン・ガードナー
ショーヴラン全権大使 レイモンド・マッセイ
トゥルネ伯爵 O・B・クラレンス
妻の兄アルマン・サン・ジュスト ワルター・リラ
ロベスピエール アーネスト・ミルトン
友人サー・アンドリュー・フォークス アンソニー・ブッシェル
リージェント皇太子 ナイジェル・ブルース
ロムニー メルヴィル・クーパー
僧正 ブラムウェル・フレッチャー
トゥルネ伯爵夫人 マーベル・ルイス