(☆)1947年に発表された、シカゴのギャングであるアル・カポネを1931年に脱税で訴追に追い込んだ財務省捜査官フランク・J・ウィルソンの手記をベースにフィクションも交え映画化されたフィルム・ノワール

製作ロバート・ロッセンで、監督はジョゼフ・H・ルイス

主演グレン・フォード
共演はニナ・フォック、ジェームズ・ホイットモア
白黒映画。

ストーリー

財務省特別捜査官フランク・ウォーレンは、妻ジュディスを実家に避難させ、シカゴ・ギャングのボス「ビッグ・フェロー」の脱税事件に当たるため、シカゴに入り特別捜査官ジョージ・パパスとスタンリー・ワインバーグに合流する。ビッグ・フェローについては、地元警察と検事がギャング事件について起訴したが、なぜか無罪判決を受けていた。そこで代わりに財務省が、彼を脱税で何とかして有罪・実刑判決に持ち込もうとしている。
ウォーレンは、早速情報源に接触する。情報源はザンガーと言い、ビッグ・フェローの脱税を証明する裏帳簿を持つ男との連絡係だった。しかし、ザンガーも別れた途端すぐ暗殺されてしまう。街の人々は事件後、口々に犯人を見たと言っていたが、警察から証言を求められると、黙り込んでしまう。どうやら、ギャングから脅迫を受けているようだ。

ウォーレンらは捜査令状を取り、ビッグ・フェローの経営する店舗の帳簿を押収し、脱税の証拠を掴もうとするが何も出てこない。
ウォーレンは、帳簿にサインした人間が誰かを突き止めようとするが、ビッグ・フェローの顧問弁護士エドワード・J・オロークが圧力を掛ける。
そんなとき、シャノンという内勤警察官が声を掛ける。彼は一年前に会計係サルヴァトーレ・ロッコを逮捕するが、裁判で無罪放免となりシャノンは降格処分を受けていた。ウォーレンは、ロッコの筆跡が帳簿のサインと一致することを突き止める。
ウォーレンは、ロッコの家族や愛人と接触し、裏帳簿に関する情報をもらう約束をする。しかし、ロッコが娘ローザに別れを告げている最中、ギャングによって暗殺される。ウォーレンもギャングに痛めつけられ、オロークに妻ジュディスまでも手をかけると示唆される・・・。

雑感

ウォーレンのモデルであるフランク・J・ウィルソンは、禁酒法下での酒税特別調査官であったが、酒に関して証拠を掴めなかったので、アル・カポネを所得税脱税で有罪に持ち込もうと考えていた。

フィルム・ノワールとはいえ、普段表舞台に出ない財務省捜査官の話だけに、役人らしいデスクワークや家庭を守る苦悩も描かれ、貧しい市民に励まされる主人公など少しくさいところもあるが、ジョゼフ・H・ルイスの人間描写が見どころだ。ブライアン・デパルマの1987年作品「アンタッチャブル」は、史実よりかなり派手である。

地味なグレン・フォードの出演作でも特に地味な作品だ。セミ・ドキュメンタリー形式で今では誰もが知っているアル・カポネの史実のため、何のひねりもない。妻役のニナ・フォック(「重役室」「刑事コロンボ・殺人処方箋」)も華がない。
なお、会計士役レオ・ペンは、俳優ショーン・ペンの父だ。(50)

スタッフ

監督:ジョゼフ・H・ルイス
製作:ロバート・ロッセン
原作:フランク・J・ウィルソン
脚本:ジャック・ルービン、シドニー・ベーム
撮影:バーネット・ガフィ
編集:アル・クラーク
音楽:ジョージ・ダニング

キャスト

フランク・ウォーレン(財務省捜査官):グレン・フォード
ジュディス・ウォーレン(妻):ニナ・フォック
ジョージ・パパス(財務省捜査官):ジェームズ・ホイットモア
エドワード・J・オローク(ビッグ・フェローの顧問弁護士):バリー・ケリー
スタンリー・ワインバーグ(財務省捜査官):デヴィッド・ウルフ
“ビッグ・フェロー”:ケン・ハーヴェイ
サルヴァトーレ・ロッコ(会計係):アンソニー・カルーソ
ローザ・ロッコ(ロッコの娘):ジョーン・レイザー
マリア・ロッコ(ロッコの母):エスター・ミンチオッティ
シドニー・ゴードン(会計士):レオ・ペン


***

ウォーレンは、しばらく休暇を取りジュディスの実家に向かった。彼は、家族に危険が及ぶ以上、今すぐ辞職することを妻に告げる。
ウォーレンと妻がシカゴに戻り、身の回りの品物を梱包しているとき、ロッコの娘ローザと祖母マリアが現れ、ロッコが隠していた裏帳簿を受け取り、辞職を思いとどまる。
マリブ・ビーチにいた会計士シドニー・ゴードンを逮捕し、裏帳簿を突きつけ、政府からの保護という検察取引を餌に彼を裁判の証言台に立たせる。
ついにビッグ・フェローと幹部7人は脱税容疑で起訴され、あれだけ重かった関係者が証言し始める。
そこでビッグ・フェローは、脱税裁判の陪審員リストを入手して、そこに名前が載っている全員を買収する。オロークは、もはやこれまでとビッグ・フェローを見限り、この陪審員リストをウォーレンに渡して刑事責任を免れる。
しかし、その場を急襲したギャングはオロークを車で撥ね殺す。ウォーレンは、ギャングに拳銃で逆襲して倒し、判事に陪審員が買収されていることを報告する。そこで判事はビッグ・フェロー脱税事件の陪審員を他の事件の陪審員と入れ替える。
そして、ようやくビッグ・フェローに20年もの有期刑が言い渡される。

秘密調査員 The Undercover Man (1949) コロンビア製作・配給 グレン・フォード主演

投稿ナビゲーション