傑作フィルム・ノワール。それまでに吹替版で何度か見ていたが、字幕で見たのは30年前に一度だけ。今回久々に見た。バーバラ・スタンウィックは覚えていたが、まだ準主役級のバート・ランカスターが出ていたのを忘れていたw。他にアン・リチャーズが共演している。監督は「追想」のロシア系ユダヤ人アナトール・リトバック。
あらすじ
レオナはコタレル製薬会社のご令嬢で、ニューヨーク支店長ヘンリーの妻である。最近心臓に障害が出たのか足が不自由になった。
貧民街育ちのヘンリーは逆玉の乗ったのだが、ここ数日帰りが遅い。会社に電話をすると殺人計画の話が混線した電話から聞こえてきた。レオナはすぐ警察に通報したが、相手にされない。夫の秘書を電話口に呼び出すと、ヘンリーはロード夫人と外出して、帰って来なかったという。ロード夫人に電話をかけると、彼女は友人のサリーで、今は検察庁に勤めるロード氏と結婚していた。サリーによると検察がヘンリーを調査しているという。
レオナは主治医のアレグザンダーに電話した。彼はレオナの病が心因性のものだから必ず治ると、ヘンリーに保証していた。
次にエヴァンスという男から電話が掛かってくる。話によるとヘンリーが薬品の横流しをしていたというのだ。それをギャングのモラノに知られて強請られて、ヘンリーは妻の生命保険契約に加入させられた。しかしモラノは逮捕されたので金を出す必要はないと言った。その時になってレオナは殺されるのは自分だと気付いた。
最後に電話をかけてきたのはヘンリーである。彼女はエヴァンスの話をして、夫を問い質す。ヘンリーは、慌てて窓際へ行って助けを呼べと言う。しかしショックで足が動かなかった。ヘンリーは掛け直すと、「すいません、番号違いです」と言われて切られた。
雑感
まだ見ていない人のためにネタバレしないが、脚が不自由なバーバラ・スタンウィックが何も知らない状態から電話をあちこちに掛けまくり情報を得れば得るほどに次第に夫に対する不審が募りパニックとなっていく様子の描写が素晴らしい。観客の側も電話によって夫婦の間の問題を知っていく。
本当だったらアカデミー主演女優賞は彼女のものだった。まさか同じ年にジェーン・ワイマンが「ジョニー・ベリンダ」を演じて悪名高いヘイズ・コードを緩和させるとは、相手が悪かった。スタンウィックは4回目にして最後のノミネートも結局、主演女優賞を取れずじまいである。(1982年アカデミー名誉賞受賞)
スタッフ・キャスト
監督 アナトール・リトヴァク
製作 ハル・B・ウォリス
脚色 ルシール・フレッチャー
撮影 ソル・ポリート
音楽 フランツ・ワックスマン
配役
レオナ バーバラ・スタンウィック
夫ヘンリー バート・ランカスター
友人サリー アン・リチャーズ
アレクサンダー医師 ウェンデル・コーリー
エバンス ハロルド・ヴァーミリア
父コトレル氏 エド・ベグリー
ギャング・モラノ ウィリアム・コンラッド