石垣りんは詩人だ。そのエッセイを読む。
独り身の生活から、にじみ出てくるような言葉。それでいて軽くない言葉。
何とも言えない大正女性らしい文章がイイ。
1920年生まれで日本興業銀行を定年まで勤め上げた。
在職中から分かりやすい現代詩を発表し続け、ファンも多い。
随筆集もこれで三冊目。
当然、詩人だからレトリックの使い方は気にした。

 

この人は平易な日本語を使う名人だ。軽い直喩しかなさそうだったが、たまに派手な隠喩が出てきて度肝をぬかれる。
詩人根性は抜けないもの。文章は、童話作家のそれと似ている。そして童話を書く人が、ちらりと見せる。この人の詩を読んでいても、優しさだけじゃない毒を感じる。

 

そんな毒のある書き手になりたいが、とても無理。毒はお腹の中に隠してなきゃ毒にならない。四六時中吐きっぱなしと言うんじゃ、ダメだ。
性格的に自分は詩人タイプでも童話タイプじゃない。

 

最近、彼女は亡くなった。ほんとうに残念である。
日本興業銀行(現みずほ銀行)でも、知ってる人は少なくなったようだ。

夜の太鼓 石垣りん 筑摩文庫

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