1928年に発行されたアン・パリッシュの小説「All Kneeling」の映画化作品。
生まれながらにして欲しいものを何でも手に入れる能力を持つ女性を描いたメロドラマ。
監督はニコラス・レイでエンディングを撮ったが、その後ハワード・ヒューズ社長による指示で助監督が改めてエンディングを撮った、マルチ・エンディング作品である。
主演はジョーン・フォンテイン、共演はロバート・ライアン、ジョアン・レスリー、ザカリー・スコット、メル:・ファーラー。
 

 

あらすじ

 
もうすぐ富豪カーティスと結婚する編集者ドナには新進画家ガビー、新進作家ニックらの友人がいる。彼女の部屋に出版社社長の姪クリスタルベルが寄宿する。美しいクリスタルベルは早速ニックを虜にする。
さてカーティスはドナへのプレゼントにサファイアの豪華なネックレスを贈るが、ドナはあまりに高価な財産を素直に受け取れない。
ところがクリスタルベルが、仲裁する振りをしてドナ、カーティスの仲に入り込み、引き裂いてしまう。そのためにドナはロンドンに去ってしまう。
その隙にクリスタルベルはニックをあっさり捨てて、カーティスと結婚する。見事な玉の輿である。
ところが、結婚一年後カーティスとの生活に飽き足らないクリスタルベルは、叔母を見舞うと言ってニックと密会する。悪いことは出来ないもので、叔母はその日亡くなってしまい、嘘が露見する。カーティスは、ガビーに離婚手続を代行してもらう代償に、ガビーから買ったクリスタルベルの肖像画を無償で返す。ガビーはクリスタルベルにさらにスキャンダルを起こしてくれたらこの絵の値段は跳ね上がるだろうと予言する。

 
(ハワード・ヒューズの指示によるエンディング)
カーティスに捨てられた後、クリスタルベルは交通事故を起こすが、入院先の病院で医師を落として医師の妻に訴えられる。そこでクリスタルベルの絵は二倍の値に跳ね上がる。弁護士を依頼するが、その弁護士も落とされる。さらに絵の値段が倍に上がる。
 

雑感

 
もう一方のエンディングは、監督が採用した脚本で単純で素っ気ない。ガビーがクリスタルベルと別れる下りの後で、絵の値札が付け替えられるシーンで終わる。
ハワード・ヒューズは説明を加えたので、観客には分かりやすくなったが、エンディングだけ見るとメロドラマと言うよりコメディになってしまった。

 

たまにマルチ・エンディングの良さが出ることがある。最近はディレスターズ・カットのDVDが発売されることがあるが、監督の信奉者には受けるが、一般受けすることは少ない。
 
クリスタルベルはファムファタールではない。陰謀を張り巡らせてライバルから奪い、男性を落とすのだ。でも陰謀は容易く露見してしまう。
どちらにしろジョーン・フォンテインには珍しい役柄だ。

スタッフ・キャスト

 
監督 ニコラス・レイ
助監督 フレッド・フレック
製作 ロバート・スパークス
脚本 チャールズ・シュニー、エディス・ソマー
原作 アン・パリッシュ
撮影 ニコラス・ムスラカ
 
キャスト
ジョーン・フォンテイン  クリスタルベル
ロバート・ライアン  作家ニック
ザカリー・スコット  富豪カーティス
ジョーン・レスリー 編集者ドナ
メル・ファーラー  画家ガビー
 

生まれながらの悪女 Born To Be Bad 1950 RKO製作・配給(日本未公開)

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