今回は「砂の器」的社会派推理小説だ。僅か二時間でまとめるのは困難だったろう。
監督はクリストファー・ボーに交替、レギュラー俳優は不変。
あらすじ
アサドの異動が迫るある日、湖畔のアパートで3体のミイラ化遺体が発見され事件となる。部屋の借主はスプロー島女子収容所の元看護師ギデで、家賃は支払われていたが現在失踪中。遺留品から遺体は女子収容所の収容者ニーデとリタ、収容所への訴訟を担当したナアヴィー弁護士で、ヒヨスで酩酊させ生きたまま惨殺され、局部を切り取られていた。ギデはマラガ在住と判明するが再び逃亡、容疑者として指名手配される。
かつてスプロー島女子収容所では、選民主義的優生思想に基づき強制不妊手術が行われていたが、担当医クアト・ヴァズは、現在不妊治療で名高い大病院の医院長として君臨する一方で、同志を得て「寒い冬」を組織し強制不妊手術を継続していた。
標的は”劣等”な欧州女性から移民女性へと変わり、アサドの知人のアラブ人女性ヌールも被害者となった。特捜部は事件のカギを握るギデを追うが、クアトの組織「寒い冬」に尾け狙われ、運んでいるときに襲われ、ローセは内通者を保護に行ったところを内通者は殺されており自らも襲われる。
ついにフェリーでカールは犯人を会う。ギデだと思われていたが、囚人で不妊手術を受けさせられた原告のニーデの方だった。彼女は敗訴後、かつての恋人と出会い、幸せな人生を送った。その夫も亡くし骨壺を抱いて海の藻屑に消えた。一方、アサドは単独で病院に潜入するが、同僚から撃たれ倒れる。同僚も「寒い冬」の一員だった。
あわやというところでカールが到着し、ヌールと協力して組織を一網打尽にする。
雑感
各国の優生法は優生思想によるものだ。決して断種はナチス固有のものではない。我々だってやっていたのだ。
ところが優生思想は根が深く、しばらくするとまた芽が出てくる。
例によって回想シーンと現代シーンを交互に流している。別に叙述トリックがあるわけでもなく、ちょっと飽きた。
しかし事件のスケールと、現代も優生思想が生きていることに驚きを隠せない。
スタッフ・キャスト
監督 ：クリストファー・ボー
脚本 ：ニコライ・アーセル 『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
原作 ：ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部Q ―カルテ番号64―』（ハヤカワ文庫刊）
製作 ：ヨナス・バガー
製作総指揮： マリー・ゲード・デネッセン
編集 ：ヤヌス・ビレスコフ＝ヤンセン
配役
カール…ニコライ・リー・コス
アサド…ファレス・ファレス
ローセ…ヨハンネ・ルイズ・シュミット
マークス…ソーレン・ピルマーク
ニート（若） ファニー・ボルネダル
リタ クララ・ロサガー
ギーテ ルイーゼ・スコフ
ヌーア アマンダ・ランデリアク
クルト･ワズ（老） アンダース・ホーヴェ
ブラント ニコラス・ブロ
クルト･ワズ）（若） エリオット･クローセット･ホーヴェ
ネーテ（老） ビルテ･ノイマン