パロディ時代劇「濡れ髪」シリーズ全五作の最終作にして最高傑作。
主演はいつもの市川雷蔵で、ヒロインはシリーズ初登場の京マチ子。共演は大辻伺郎、小林勝彦、安倍徹
監督はシリーズ初登板の田中徳三。脚本は二作目から続投の八尋不二

あらすじ

女親分おもんは大所帯の子分を抱える独身美人である。岩吉という弟があり、堅気にさせたいため婿養子を公募している。
口八丁手八丁であることから名付けて八八の瓢太郞と言う色男がおもん一家にわらじを脱ぐ。この男、どんな技術に付けても「○○は△△流免許皆伝の腕前じゃ、うむ」と言って、喧嘩、剣法、学問、算術、縫い物、料理、大工、書道、俳諧、催眠術に至るまで何でもできるチートキャラ。瓢太郞に対して子分の人望も厚く婿養子に入って組の跡目を継いでくれることをおもんの子分たちは願った。
跡目試験の一次試験はあっさりクリア。ところが翌日最終試験でおもん自身と手合わせするが、何故か瓢太郞は勝てず、修行の旅に出る。おもんは必ず一年後戻ってくるように子分のにょろ松に言い含めて路銀を渡す。一年後、再びおもんの前に現れた瓢太郞は即おもんと手合わせするが再び敗れてしまう。一体何故敗れるのか?
実は瓢太郞は夜中に勉強して本から技術を学んだのだ。しかし本を読んでも博打と女心だけは身につかない。

そんな時、悪名高い浪人組「流れ三つ星」がやって来た。元お門一家の軍師であった孔明伊三郎は、流れ三つ星と手を結んで、翌年またやって来た瓢太郞を掠いおもんを呼び出し、大勢で取り囲むが、あわやというところに町方が大勢寄せて御用となる。
ところがあっさり脱獄した流れ三つ星におもんは入浴中を襲われる。今度こそかと思ったそのとき、瓢太郞が飛んできて浪人組を片手でやっつけてしまった。おもんは、人目もははからず瓢太郎に抱きつき、晴れておもん一家の跡目を継いだ。
数年後、二人に子どもが生まれた。赤子をあやすのも瓢太郞の仕事である。瓢太郞は近所の女を集めて料理教室の最中だったが、赤子を押しつけられ、代講をおもんが勤めた。

雑感

中村錦之助がこのパロディ溢れる映画を見てやりたいと羨んだという。(のちに1963年加藤泰監督と「真田風雲録」を撮る)

「女親分おもんの婿探しに飛び込んで来た口八丁手八丁の風来坊との間に醸し出されるお色気と笑い、恋も剣も喧嘩も型破り濡れ髪シリーズの一篇。
恐れ入った悩ましさ!あきれかえた痛快さ!あんまり笑わせて失礼さんにござんす!」
これが角川大映の公式コピーになっている。
剣も喧嘩も型破り!恋も笑いも濡れ髪調!アッと驚く新趣向で爆笑の嵐を呼ぶ!
上映当時のコピーの一つがこれ。
市川雷蔵の器用な面が生きた傑作だ。
昨今の時代劇コメディがもの足りない御仁にもこの作品ならご満足いただける。

時代考証の全く無い映画だが、面白ければ良いのだ。
撮影的には、上空から撮った京マチ子の傘を使った殺陣が最高だ。さすがにダンサーだからこういう芝居に関しても彼女は筋が良い。少し京に惚れそうだったぜ。

スタッフ

製作 武田一義
企画 八尋大和
脚本 八尋不二
監督 田中徳三
撮影 相坂操一
音楽 塚原晢夫

キャスト

八八の瓢太郎 市川雷蔵
清見潟のおもん 京マチ子
おもんの弟岩吉 小林勝彦
孔明の伊三郎 安部徹
にょろ松  大辻伺郎
曲平十郎  須賀不二男
おたき 小桜純子
お勝  井上明子
おかん 山本弘子
筒井丈助 伊達三郎

濡れ髪牡丹 1961 大映京都製作 大映配給

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