東京近郊の有名な殺人事件現場の紀行文。
文章は少なめだ。最低限の事件の事情を説明し、今の現場の様子を描写している。現在の写真もモノクロ、カラー多数掲載している。
全部で18の事件を扱っている。中国人犯罪と考えられるもの、不良プータローが何も考えずにやったもの、ホームレスの強盗殺人、サブカル世代お宅のいたずら殺人、病的殺人狂の犯罪などいくつかに分かれる。迷宮入りした事件もある。身内が犯人だったのは、つくば妻子殺害事件だけ。
あとは、他人によるもの。関係性を全く問わない通り魔犯罪も多い。
印象的なものは、綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件、目黒不動バラバラ殺人事件、市川市一家四人殺害事件、新宿タバコ店経営者連続殺人事件。
写真を見ると日常の風景と何ら変わらないところで、人が殺されている。人が死んだ後に、他の家族が住んでいることもある。埼玉愛犬家事件以外は、殆ど住宅街の近所が現場である。
ついつい忘れがちだが、あなたの回りは危険が一杯なのである。新宿タバコ店経営者連続殺人事件は、良く覚えている。前に住んでいたマンションから狭い路地を通って、早稲田通りに出られる。バス停「西早稲田」前にローソンがあったが、その隣がパチンコ屋でそのまた隣が小さなタバコ屋だった。ここの主人は鳩に餌をやるので周囲から嫌われていたが、なんと放火された。おかげでここの親父は強盗からは助かった。
強盗犯人は、早稲田通りを挟んで、このタバコ屋の向かいの店をねらった。隣の散髪屋の娘さんが発見者である。ちなみに、この人のお母さんは洗髪が下手だった。
犯人は三万円しか盗めなかった。その後犯人の音沙汰はなくなるが、二年ほどして弁天町のタバコ屋が襲われる。前の現場から東へ1キロしか離れていない。
奇しくも被害者は、同じ77才の同級生だ。老婆の所持金は、僅かに二万円。さらに5日後、西新宿の不動産屋老夫婦が刺殺される。所持金は10万円だった。
犯人は戸山公園のホームレス(57才)だった。戸山公園は、ホームレスのたまり場になってしまったが、住民とトラブルを起こしたことはほとんど無かった。
誰が、彼の引き金を引いたのだろうか。
今も戸山公園には一層多くのテントが並んでいる。その間を子どもたちが何気なく歩いていく。
(ライブドアから再録)