学徒出陣の特攻隊員である夫に殉じて、自殺した妻山田照子の日記を基にして映画化した物語。沢村勉と鈴木英夫が脚色し、鈴木英夫が監督した。特撮以外の撮影は安本淳。
主演は鶴田浩二、八千草薫(宝塚歌劇団)の組合せ。共演は笠智衆、小林桂樹、加東大介、夏川静江、多々良純。
白黒映画。
雑感
実話ベースなんだけど、脚色が相当入っている。最期のシーンは、ロミオとジュリエットのパクリである。
実話では奥さんが特攻に出撃する前の晩に自殺したそうだ。ご主人は知らずに、出撃したと思う。
他にも特攻に関わる殉死事件はあった。
ある特攻隊長は部下だけでなく自分も特攻することを望んだが、妻子持ちだから断られる。夫の苦悩を知り妻は子を道連れに自害した。
そこでやっと隊長の特攻志願が受け入れられて、出撃して亡くなったそうだ。隊長は、自分が死なせた子供たちと親御さんに対する責任を果たしたのだ。
この映画は、形式上は反戦映画だが甘すぎて、そういう見方をしたくない。
それよりも八千草薫・25歳のアイドルとしての美しさ、可愛らしさを楽しむものである。
下ぶくれ気味の頬と言い、当時は154cmと小柄ながら抜群だったスレンダースタイルと言い、ため息が出ちゃう。
彼女のためなら、こんな映画でも何度でも見ることが出来る。
しかし、翌1957年に彼女は突然、谷口千吉監督と結婚してしまうのだ。
キャスト
鶴田浩二 伊東敏郎
小林桂樹 秋田博
佐原健二 三島正男
加東大介 安宅幹哉
田島義文 分隊長
清水一郎 飛行長
多々良純 従兵
八千草薫 山田照子
笠智衆 父栄三
夏川静江 母歌子
峰京子 妹英子
西島淳子 妹直子
スタッフ
製作 金子正且
原作 山田照子
脚色 沢村勉
監督・脚色 鈴木英夫
撮影 安本淳
音楽 高木東六
あらすじ
大平洋戦争末期。硫黄島陥落後、戦局は急迫して、海軍にも特攻命令が下されている。目黒にある照子の家では勤めのある父栄三を残し、本土決戦に備えて母歌子、妹英子とが疎開準備をしていた。
しかし照子は、いつ特攻命令が掛かるかわからない土浦航空隊所属の恋人伊東敏郎と離れたくなかった。
ある日、照子は疎開先から敏郎の隊を訪ね、二人は海岸で話し合う。死んで行くのに彼女を拘束したくない敏郎に対して、照子は妻になりたいと泣く。そこに米軍機が現れて機銃掃射が行われる。二人は奇跡的に助かった。このとき、敏郎の考えが変わり結婚を決意する。
簡素な結婚式が行われ、彼の外出日に疎開先で会う新婚生活が続いた。間もなく敏郎は三重県に転属され、連絡が取れぬようになる。照子は既に特攻隊として出撃したのではないかと疑心暗鬼に襲われる・・・。
ある夜、急病で倒れた戦友秋田に代り、代理で敏郎が出撃する。彼は被弾して敵艦まで達することができないと判断して、命からがら基地に戻る。敏郎が戦闘機を一機、ダメにしたことを怒った分隊長は、翌朝再び秋田とともに敏郎に出撃を命令する。
敏郎は最後の外出許可を得て、照子一家を訪れた。照子は彼の脱いだ制服から遺書をみつけ、彼に殉じて死ぬ決意を固める。
翌朝、敏郎と駅頭で別れた照子は、帰宅して薬をのんだ。電車で隊に帰る途中で敏郎は、米軍の空爆を受けて、あわてて照子の部屋に戻った。そのとき、既に照子は自殺していた。その場で、彼も拳銃を発射して自殺する。